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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1604.02310
Evans et al. (2016)
Detection of H2O and evidence for TiO/VO in an ultra hot exoplanet atmosphere
(極端に高温な系外惑星の大気中における水の検出と TiO/VO の証拠)
その結果,1.4 µm の水分子の吸収線を高い確度 (5.4 σ) で大気から検出した.
さらに,地上観測での B, r', z' フィルタでの測光観測の光度曲線の再解析を行った.近赤外領域に比べると,これらの可視光でのトランジット深さが特に深いことが判明した.
このトランジット深さの違いは,高高度にあるヘイズによる散乱だけでは説明が出来ない.この特徴は,大気中に存在する酸化チタン (TiO) と 酸化バナジウム (VO) による吸収の証拠であると考えられる.
1.12 - 1.3 µm の範囲内での不透明度 (opacity) の増加も見られ,これはおそらく鉄水素化物 (iron hydrite) の吸収に起因すると考えられる.
これらの結果が確認されれば,WASP-121b は透過スペクトル中から酸化チタン,酸化バナジウム,鉄水素化物が検出された初めての例となる.これらの化学種は M型星や L型星 (褐色矮星) で重要であり,これらの存在は,大気中での強い温度逆転層の形成を含む大気化学と全体の物理に大きな影響を与えうる.
2000 K を超える温度領域では,理論モデルによると気相の酸化チタンや酸化バナジウムが重要な吸収源になることが予測されている.これは特に可視光で顕著であると考えられている (Burrows & Sharp 1999など).
もし酸化チタン・酸化バナジウムが輻射を受けているガス惑星の高層大気に存在すれば,低圧領域で恒星からの輻射を吸収し,温度逆転層を形成する (Hubeny et al. 2003, Fortney et al. 2008).この温度逆転層は多くの系外惑星で報告があるが,最近ではその検出には疑問が投げかけられている (Diamond-Lowe et al. 2014).
また,非常に高温なガス惑星大気中の酸化チタン・酸化バナジウムの検出を目指した観測では,現在までに検出報告は存在しなかった (Huitson et al. 2013, Sing et al. 2013).
酸化チタン・酸化バナジウムは,cold trap により高層大気から取り除かれる (下層へ沈殿する) とする説が存在する (Hubeny et al. 2003, Spiegel et al. 2009).しかし最も高温な部類のガス惑星では,cold trap によって高層大気から失われない可能性がある.
Haynes et al. (2015) では,平衡温度 ~ 2700 K の惑星 (WASP-33b) において,~ 1.2 µm での放射が強い事を報告している.この特徴は,酸化チタンの存在と整合的であり,また温度逆転層の存在を示唆する.しかし確認するためにはさらなる観測が必要である.
ここでは,WASP-121b (Delrez et al. 2016) を観測した.
この惑星は軌道周期が ~ 1.3 日の極軌道を公転し,主星のスペクトル型は F6V である.軌道長半径は 0.025 AU であり,これはロッシュ限界のすぐ外側である.
惑星の平衡温度は ~ 2400 K であり,気相の酸化チタン・酸化バナジウムが存在するには十分高温である.
arXiv:1604.02310
Evans et al. (2016)
Detection of H2O and evidence for TiO/VO in an ultra hot exoplanet atmosphere
(極端に高温な系外惑星の大気中における水の検出と TiO/VO の証拠)
概要
ハッブル宇宙望遠鏡の Wide Field Camera 3 の 1.12 - 1.64 µm 分光モードを用いて,非常に高温 (平衡温度 ~ 2400 K) なガス惑星 WASP-121b のトランジットを観測した.その結果,1.4 µm の水分子の吸収線を高い確度 (5.4 σ) で大気から検出した.
さらに,地上観測での B, r', z' フィルタでの測光観測の光度曲線の再解析を行った.近赤外領域に比べると,これらの可視光でのトランジット深さが特に深いことが判明した.
このトランジット深さの違いは,高高度にあるヘイズによる散乱だけでは説明が出来ない.この特徴は,大気中に存在する酸化チタン (TiO) と 酸化バナジウム (VO) による吸収の証拠であると考えられる.
1.12 - 1.3 µm の範囲内での不透明度 (opacity) の増加も見られ,これはおそらく鉄水素化物 (iron hydrite) の吸収に起因すると考えられる.
これらの結果が確認されれば,WASP-121b は透過スペクトル中から酸化チタン,酸化バナジウム,鉄水素化物が検出された初めての例となる.これらの化学種は M型星や L型星 (褐色矮星) で重要であり,これらの存在は,大気中での強い温度逆転層の形成を含む大気化学と全体の物理に大きな影響を与えうる.
背景
ガス惑星のトランジット観測から,大気の多様性が明らかになっている.可視光での大気の透過スペクトルからは,水素分子と高高度エアロゾルによるレイリー散乱の存在が検出されている (Charbonneau et al. 2002など).また,近赤外線での観測からは,水分子による吸収が,透過スペクトルと放射スペクトルの両方で高い確度で検出されている (Deming et al. 2013など).2000 K を超える温度領域では,理論モデルによると気相の酸化チタンや酸化バナジウムが重要な吸収源になることが予測されている.これは特に可視光で顕著であると考えられている (Burrows & Sharp 1999など).
もし酸化チタン・酸化バナジウムが輻射を受けているガス惑星の高層大気に存在すれば,低圧領域で恒星からの輻射を吸収し,温度逆転層を形成する (Hubeny et al. 2003, Fortney et al. 2008).この温度逆転層は多くの系外惑星で報告があるが,最近ではその検出には疑問が投げかけられている (Diamond-Lowe et al. 2014).
また,非常に高温なガス惑星大気中の酸化チタン・酸化バナジウムの検出を目指した観測では,現在までに検出報告は存在しなかった (Huitson et al. 2013, Sing et al. 2013).
酸化チタン・酸化バナジウムは,cold trap により高層大気から取り除かれる (下層へ沈殿する) とする説が存在する (Hubeny et al. 2003, Spiegel et al. 2009).しかし最も高温な部類のガス惑星では,cold trap によって高層大気から失われない可能性がある.
Haynes et al. (2015) では,平衡温度 ~ 2700 K の惑星 (WASP-33b) において,~ 1.2 µm での放射が強い事を報告している.この特徴は,酸化チタンの存在と整合的であり,また温度逆転層の存在を示唆する.しかし確認するためにはさらなる観測が必要である.
ここでは,WASP-121b (Delrez et al. 2016) を観測した.
この惑星は軌道周期が ~ 1.3 日の極軌道を公転し,主星のスペクトル型は F6V である.軌道長半径は 0.025 AU であり,これはロッシュ限界のすぐ外側である.
惑星の平衡温度は ~ 2400 K であり,気相の酸化チタン・酸化バナジウムが存在するには十分高温である.
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