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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1604.04195
Hellier et al. (2016)
WASP-South transiting exoplanets: WASP-130b, WASP-131b, WASP-132b, WASP-139b, WASP-140b, WASP-141b & WASP-142b
(WASP-South によるトランジット惑星:WASP-130b, WASP-131b, WASP-132b, WASP-139b, WASP-140b, WASP-141b, WASP-142b)

概要

等級が 10.1 - 12.4 の恒星の周りに 7 つのトランジット惑星を発見した.

発見された惑星系

WASP-130系

WASP-130
スペクトル型:G6
金属量:[Fe/H] = +0.26
距離:180 pc
質量:1.04太陽質量
半径:0.96太陽半径
平均密度:太陽の平均密度の 0.96 倍
有効温度:5625 K
等級:11.1等
WASP-130b
軌道周期:11.55098日
軌道長半径:0.1012 AU
質量:1.23木星質量
半径:0.89木星半径
平均密度:木星の平均密度の 1.76 倍
平衡温度:833 K
WASP-130系の特徴
視線速度観測では,恒星の磁気的活動に由来すると思われる分散が検出された.しかし WASP での測光観測では,恒星の自転に起因する光度の変動は検出されなかった.

惑星の WASP-130b は,WASP-South プロジェクトで発見された惑星の中で最も長い軌道周期を持つ惑星である.いわゆる "warm Jupiter" の一種である.
同様の系外惑星検出プロジェクトである HATNet や HAT-South はもう少し長い軌道周期の惑星にも感度があり,周期 16.3日の HATS-17b が最長である (Brahm et al. 2016).ホットジュピターとは異なり,またその他の長めの軌道周期を持つ惑星と同様に,半径は大きく膨らんでいはいない.この点で HATS-17b と類似している (1.34木星質量,0.78木星半径, Brahm et al. 2016).ただし HATS-17b ほど小さくはない.

また,HATS-17b は重い金属のコアを持っている可能性がある.中心星の HATS-17 は金属量が [Fe/H] = +0.3 と大きい値を示しており,この点でも WASP-130系は類似している.

WASP-131系

WASP-131
スペクトル型:G0
金属量:[Fe/H] = -0.18
距離:250 pc
質量:1.06太陽質量
半径:1.53太陽半径
平均密度:太陽の平均密度の 0.292 倍
有効温度:6030 K
等級:10.1等
WASP-131b
軌道周期:5.322023日
軌道長半径:0.0607 AU
質量:0.27木星質量
半径:1.22木星半径
平均密度:木星の平均密度の 0.15 倍
平衡温度:1460 K
WASP-131系の特徴
WASP-131b は土星質量の天体であり,大きく膨張した半径を持つ惑星である.同様の例として,WASP-21b (0.28木星質量,1.2木星半径,軌道周期 4.3日,,Bouch et al. 2010) や,WASP-39b (0.28木星半径,1.3木星半径,軌道周期 4.1日,Faedi et al. 2011),ケプラー427b (0.29木星質量,1.2木星半径,軌道周期 10.3日,Hebrard et al. 2014) がある.興味深いことに,これらは皆金属量の小さい恒星の周囲を公転している (それぞれ,[Fe/H] = -0.22, -0.12, -0.19).

中心星の WASP-131 は比較的明るく,また惑星の大気のスケールハイトは大きいため,今後の大気の特徴付けのターゲットとして適している.

WASP-132系

WASP-132
スペクトル型:K4
金属量:[Fe/H] = +0.22
距離:120 pc
質量:0.80太陽質量
半径:0.74太陽半径
平均密度:太陽の平均密度の 2.00 倍
有効温度:4775 K
等級:12.4等
WASP-132b
軌道周期:7.133521日
軌道長半径:0.067 AU
質量:0.41木星質量
半径:0.87木星半径
平均密度:木星の平均密度の 0.63 倍
平衡温度:763 K
WASP-132系の特徴
視線速度観測では,WASP-132 の磁気的活動に起因すると思われる分散が検出された.また,恒星の自転によると思われる 33日周期の変動を検出した

Gyrochronology (自転周期を元に恒星の年齢を求める手法) から推定した年齢は 2.2 Gyr である (Barnes 2007).

WASP-132b は WASP プロジェクトで発見された惑星の中では最も日射量が小さい惑星のうちの一つである.

WASP-139系

WASP-139
スペクトル型:K0
金属量:[Fe/H] = +0.20
距離:230 pc
質量:0.92太陽質量
半径:0.80太陽半径
平均密度:太陽の平均密度の 1.8 倍
有効温度:5310 K
等級:12.4等
WASP-139b
軌道周期:5.924262日
軌道長半径:0.062 AU
質量:0.117木星質量
半径:0.80木星半径
平均密度:木星の平均密度の 0.23 倍
平衡温度:910 K
WASP-139系の特徴
WASP-139 は,リチウムの存在度と gyrochronology から,年齢は ~ 0.5 Gyr と推定される.また恒星の密度的に,主系列星を下回ると考えられる.このような特徴を持つ恒星はヘリウムが豊富である可能性がある (Maxted 2015).

WASP-139b は,WASP プロジェクトで発見された中で最も軽い惑星である.大気のスケールハイトが大きく,大気の特徴付けのターゲットとして適している.

この惑星に似たタイプの惑星として,HATS-7b, 8b がある (Bakos et al. 2015, Bayliss et al. 2015).これらの惑星を,HATS プロジェクトでは "super-Neptune" と呼称している.

WASP-140系

WASP-140
スペクトル型:K0
金属量:[Fe/H] = +0.12
距離:180 pc
質量:0.90太陽質量
半径:0.87太陽半径
平均密度:太陽の平均密度の 1.38 倍
有効温度:5260 K
等級:11.1等
WASP-140b
軌道周期:2.2359835日
軌道長半径:0.0323 AU
質量:2.44木星質量
半径:1.44木星半径
平均密度:木星の平均密度の 0.8 倍
平衡温度:1320 K
軌道離心率:0.0470
WASP-140系の特徴
この系には,伴星 WASP-140B を持ち,こちらは主星 (WASP-140, あるいは WASP-140A) より 2 等級暗い.7 arcsec 離れた場所に位置している.

主星の WASP-140明確な自転由来の光度変化があり,周期は 10.4 日である.Gyrochronology による推定年齢は 0.42 Gyr と若く,進化モデルから推定した ~ 8 Gyr とは非整合的である.これは,主星の自転が重い近接惑星である WASP-140b によって加速された可能性がある.

WASP-140b の軌道はやや軌道離心率が大きい.またトランジットは恒星をかすめるような位置関係で起きている (トランジットのインパクトパラメータは 0.93).

WASP-141系

WASP-141
スペクトル型:F9
金属量:[Fe/H] = +0.29
距離:570 pc
質量:1.25太陽質量
半径:1.37太陽半径
平均密度:太陽の平均密度の 0.49 倍
有効温度:5900 K
等級:12.4等
WASP-141b
軌道周期:3.310651日
軌道長半径:0.0469 AU
質量:2.69木星質量
半径:1.21木星半径
平均密度:木星の平均密度の 1.49 倍
平衡温度:1540 K
WASP-141系の特徴
WASP-141b は典型的なホットジュピターである.

WASP-142系

WASP-142
スペクトル型:F8
金属量:[Fe/H] = +0.26
距離:840 pc
質量:1.33太陽質量
半径:1.64太陽半径
平均密度:太陽の平均密度の 0.30 倍
有効温度:6010 K
等級:12.3等
WASP-142b
軌道周期:2.052868日
軌道長半径:0.0347 AU
質量:0.84木星質量
半径:1.53木星半径
平均密度:木星の平均密度の 0.23 倍
平衡温度:2000 K
WASP-142系の特徴
この系には,5 arcsec 離れた位置に,1.9等暗い伴星が存在する.

WASP-142b は,典型的な膨張半径を持つホットジュピターである.

ホットジュピターの軌道周期分布

ホットジュピターを,軌道周期を基準にして分布を見た場合の特徴について考察した.

惑星質量が 0.15 - 12木星質量のもので,軌道周期が 22 日までのものの累積分布を見ると,2 つの "break" が存在することが指摘されている (Hellier et al. 2012).その傾向は,今回発見された惑星を加えても見ることが出来る.

"Break" の位置は,軌道周期が 1.2日と 2.7日である.

軌道周期が 1.2日を下回る惑星は,軌道傾斜角が大きい場合でもトランジットを起こせるため存在した場合は検出されやすいにも関わらず,非常に稀である.これは,潮汐による落下によって比較的短時間で失われることが原因と考えられる.

軌道周期 2.7日以上では,ホットジュピターの "pile up" と呼ばれる多数の個数が分布しているのが分かる.

この傾向は,金属量 [Fe/H] が太陽より大きいか小さいかで大きな差は見られない.そのため,ホットジュピターの軌道周期の分布は,主星の金属量への依存性を示さないと言える.

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