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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1604.07424
Fortney et al. (2016)
The Hunt for Planet Nine: Atmosphere, Spectra, Evolution, and Detectability
(第九惑星の捜索:大気,スペクトル,進化と検出可能性)
Planet Nine に対してもっともらしいと考えられる範囲の質量と内部構造に対して,モデルから得られた有効温度の上限値は,質量が 5 - 20 地球質量の場合,~ 35 - 50 K であり,取りうる半径は 3 - 6 地球半径であった.ただし半径に関しては水素・ヘリウムエンベロープの質量割合に依存する.
また,大気の温度構造とスペクトルのモデリングも行った.大気は低温であるため,大気は顕著なメタンの凝縮を伴うと考えられる.そのため,単純な海王星的な大気とは異なる特徴を示すだろうと考えられる.スペクトルの計算からは,可視光の範囲内では分子の吸収は大きく欠乏しており,高い幾何学的アルベドを持つ,レイリー散乱が卓越した大気を持つと予想される.
大気の温度構造の判別法に関しては,メタン雲よりも上空におけるメタンの混合比と.雲頂での圧力が分かるような雲による散乱が見られる波長が有効であると考えられる.また,仮に大気が薄い場合は表面反射も観測されるだろう.
大気中のメタンが凝縮により欠乏していた場合,赤外線における水素分子の衝突励起吸収による不透明度 (collision-induced opacity) により,惑星は WISE で観測した際のカラーは,赤ではなくむしろ非常に青っぽく見えるだろうと予想される.また,場合によっては WISE の検出限界の境界あたりの光度を持つ可能性がある.また,3 - 5 µm での熱フラックスは,単純な黒体よりも 20 桁程度大きくなる.
さらに,これらの結果を元にして全ての WISE Source Catalog から該当する天体が存在しないか調べたが,Planet Nine に相当する天体は検出されなかった.
内部構造は,氷と岩石の混合比が 2 : 1 であるコアの上に,水素・ヘリウムのエンベロープが存在するという 2 層構造を考えている.
惑星全体の質量に対するコア質量の割合は,
また,惑星の位置は,太陽から 1000 AU の場所 (アルベドがゼロの時に平衡温度が 9 K) となる状態を想定して熱進化の計算を行った.なお,太陽からの入射光への依存性も調べたが,影響は非常に小さかった.
初期条件として,惑星は hot start (Marley et al. 2007) で形成されたと仮定し,その後断熱冷却をすると考えた.
表面の温度は,質量が 12 地球質量以下の場合は,天王星の上限値である ~ 40 K,50 地球質量の sub-Saturn の場合は ~ 60 K であった.
注意点としては,このモデルは海王星の内部熱流束の観測値はよく再現できているが,天王星については過大評価してしまう (観測値より大きな値になってしまう) という事が分かっている (Hubbard et al. 1995).そのため,ここで出てきた温度はあくまで上限値である.
太陽系内に "第九惑星" (しばしば Planet Nine というニックネームで呼ばれる) が存在する可能性がある,という研究 (Batygin & Brown 2016) が発表されて話題になりましたが,その後に多数の後追い論文が出されました.これもそのうちの一つで,もし Planet Nine が存在した場合に,どのような大気の特徴を持つか,どのように観測されうるかという点について,天王星と海王星のモデルをベースにして調べたというものです.
またモデル計算より,パラメータ次第では WISE の観測にかかっている可能性があるという事で WISE のデータも調べていますが,該当する天体は検出されなかったとのことです.
arXiv:1604.07424
Fortney et al. (2016)
The Hunt for Planet Nine: Atmosphere, Spectra, Evolution, and Detectability
(第九惑星の捜索:大気,スペクトル,進化と検出可能性)
概要
太陽系内に存在する可能性が指摘されている "第九惑星" (Planet Nine) の特性を,天王星や海王星のモデリングに使われている手法を用いて研究した.Planet Nine に対してもっともらしいと考えられる範囲の質量と内部構造に対して,モデルから得られた有効温度の上限値は,質量が 5 - 20 地球質量の場合,~ 35 - 50 K であり,取りうる半径は 3 - 6 地球半径であった.ただし半径に関しては水素・ヘリウムエンベロープの質量割合に依存する.
また,大気の温度構造とスペクトルのモデリングも行った.大気は低温であるため,大気は顕著なメタンの凝縮を伴うと考えられる.そのため,単純な海王星的な大気とは異なる特徴を示すだろうと考えられる.スペクトルの計算からは,可視光の範囲内では分子の吸収は大きく欠乏しており,高い幾何学的アルベドを持つ,レイリー散乱が卓越した大気を持つと予想される.
大気の温度構造の判別法に関しては,メタン雲よりも上空におけるメタンの混合比と.雲頂での圧力が分かるような雲による散乱が見られる波長が有効であると考えられる.また,仮に大気が薄い場合は表面反射も観測されるだろう.
大気中のメタンが凝縮により欠乏していた場合,赤外線における水素分子の衝突励起吸収による不透明度 (collision-induced opacity) により,惑星は WISE で観測した際のカラーは,赤ではなくむしろ非常に青っぽく見えるだろうと予想される.また,場合によっては WISE の検出限界の境界あたりの光度を持つ可能性がある.また,3 - 5 µm での熱フラックスは,単純な黒体よりも 20 桁程度大きくなる.
さらに,これらの結果を元にして全ての WISE Source Catalog から該当する天体が存在しないか調べたが,Planet Nine に相当する天体は検出されなかった.
熱進化のモデル
モデルの設定と初期条件
Planet Nine について,質量が 5 - 50 地球質量の範囲でモデル計算を行った.(参考として,海王星質量は 17.15 地球質量)内部構造は,氷と岩石の混合比が 2 : 1 であるコアの上に,水素・ヘリウムのエンベロープが存在するという 2 層構造を考えている.
惑星全体の質量に対するコア質量の割合は,
- Sub-Saturn
- コア質量比が 0.1 - 0.3 (全惑星質量に占めるコア質量の割合が 10 - 30%).想定している中で最も重い惑星のモデル.
- 15 地球質量程度
- コア質量比は 0.30 - 0.84.
- Sub-Neptune (5 - 8 地球質量)
- コア質量比は 0.6 - 0.9.
また,惑星の位置は,太陽から 1000 AU の場所 (アルベドがゼロの時に平衡温度が 9 K) となる状態を想定して熱進化の計算を行った.なお,太陽からの入射光への依存性も調べたが,影響は非常に小さかった.
初期条件として,惑星は hot start (Marley et al. 2007) で形成されたと仮定し,その後断熱冷却をすると考えた.
主な結果と注意点
惑星質量が 5 - 8 地球質量の sub-Neptune モデルの場合,半径は 2.9 - 4.4 地球半径となった.また,15 - 20 地球質量の場合は 3.9 - 6.7 地球半径であった (※参考:海王星半径は 3.9 地球半径).35 - 50 地球質量の場合は 7.5 - 8.3 地球半径であった.表面の温度は,質量が 12 地球質量以下の場合は,天王星の上限値である ~ 40 K,50 地球質量の sub-Saturn の場合は ~ 60 K であった.
注意点としては,このモデルは海王星の内部熱流束の観測値はよく再現できているが,天王星については過大評価してしまう (観測値より大きな値になってしまう) という事が分かっている (Hubbard et al. 1995).そのため,ここで出てきた温度はあくまで上限値である.
太陽系内に "第九惑星" (しばしば Planet Nine というニックネームで呼ばれる) が存在する可能性がある,という研究 (Batygin & Brown 2016) が発表されて話題になりましたが,その後に多数の後追い論文が出されました.これもそのうちの一つで,もし Planet Nine が存在した場合に,どのような大気の特徴を持つか,どのように観測されうるかという点について,天王星と海王星のモデルをベースにして調べたというものです.
またモデル計算より,パラメータ次第では WISE の観測にかかっている可能性があるという事で WISE のデータも調べていますが,該当する天体は検出されなかったとのことです.
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天文・宇宙物理関連メモ vol.192 Batygin & Brown (2016) 太陽系内の "第9惑星" の証拠について