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arXiv:1604.07406
Hodosán et al. (2016)
Lightning as a possible source of the radio emission on HAT-P-11b
(HAT-P-11b の電波放射の考えうる起源としての雷)

概要

太陽系内の惑星では,雷に誘起された電波放射の観測が報告されている.系外惑星における雷に伴う電波放射の検出の試みもあるが,現在までに明確な検出の報告は存在しない.

Lecavelier des Etangs et al. (2013) では,系外惑星 HAT-P-11b の電波でのトランジット観測を行い,検出された電波放射の一部は惑星に由来することを示唆した.ここではそのシグナルが本当であるとし,この電波放射が惑星大気中での雷現象によって発生しうるかどうかについて調べた.

その結果.HAT-P-11b で検出されたシグナルを説明するためには,地球における最大級の雷雲活動の 530 倍の雷密度を持つ雷雲が必要であるということが判明した.しかし,現在の検出技術では可視光領域ではその雷は検出不可能である.

また,このような雷活動に伴う化学反応によって HCN が生成され,条件次第では嵐の発生後 2 - 3 年の間観測可能になる場合がある.この特徴は,L バンド (3.0 - 4.0 µm) と N バンド (7.5 - 14.5 µm) の赤外線領域に現れる.従って,将来的な赤外線と電波観測の組み合わせによって,太陽系外における雷の検出が可能となるだろう.

研究背景

HAT-P-11b の電波トランジット観測

Lecavelier des Etangs et al. (2013) では,HAT-P-11b の電波トランジット観測の結果が報告された.この惑星は,4.7 地球半径,26 地球質量,軌道長半径が 0.053 AU の短周期惑星である.

この観測によると,150 MHz で平均 3.87 mJy の電波が検出された.惑星が中心星の背後を通過している間 (secondary eclipse,二次食) は電波は検出されなかった.この観測が行われたのは 2009 年のことである.しかし,続く 2010 年での観測では,電波は検出されなかった.

この 150 MHz の電波シグナルが本当であり,なおかつ惑星起源であった場合,電波を発生させている現象は一時的なものであると考えられる.Lecavelier des Etangs et al. (2013) では,この一時的な電波検出の原因として,惑星の磁場と恒星からのコロナ質量放出,あるいは恒星の磁場との相互作用を提案している.

この電波シグナルが本当である場合,サイクロトロンメーザー放出が電波源である事は考えにくい.それは,この場合は通常電波が偏光するためである (Weibel 1959, Vorgul & Helling 2016).しかし Lecavelier des Etangs et al. (2013) では偏光は検出されなかった.また,もし検出された mJy オーダーの電波がサイクロトロン放射である場合,惑星の磁場強度として 50 G という大きな値が必要となる.

電波源としての雷

サイクロトロンメーザー以外の電波源としては,大気中での雷が考えられる.

雷に起因する電波放射は地球では観測されており,金星でもその徴候が捉えられている (Russel et al. 2008など).ガス惑星では,木星 (Gurnett et al. 1979など),土星 (Fischer et al. 2006など),天王星 (Zarka & Pederson 1986),海王星 (Aplin 2013) で検出報告がある.さらに褐色矮星大からの雷由来の電波を示唆する観測もある (Bailey et al. 2014).

また,雷によって放出される電波は偏光を起こさない (Shao & Jacobson 2002).従って,惑星からの偏光していない電波放射は,大気中での雷が原因である可能性がある.

モデル

雷雲のモデル

惑星における雷雲のエネルギー的特徴については,土星で発生した嵐を参考した.この嵐は,土星探査機カッシーニによって観測されたものである.Fischer et al. (2011) による土星の静電放電 (Saturnian Electrostatic Discharges, SED) 発生の分析を行った.これによると,SED の発生頻度は 10 s-1であった.

2010 - 2011 年に土星で発生した嵐では,雷の発生密度は 1.4 × 10-7 flashes km-2 h-1 であった (1 平方 km,1 時間あたりの雷の発生回数).HAT-P-11b からの電波を説明するためには,この発生密度の ~ 3.8 × 108 倍が必要である.

しかし雷雲は同時に発生することが可能であり,嵐のサイズが 2000 km とした場合,雷の発生密度は 1.5 × 10-3 flashes km-2 h-1 となる.これは HAT-P-11b からの電波を説明するために必要な値である 53 flashes km-2 h-1 よりも 3.5 × 104 倍小さい値である.

雷による化学反応と生成物の観測可能性

Lewis (1980) では,雷によって 2 × 10-10 kg J-1 の割合で HCN が生成されると推定している.

観測可能性について議論するため,生成された HCN の各圧力における化学的な寿命と,その高度における力学的タイムスケールの比較を行った.化学的寿命が力学的タイムスケールよりも短い場合,HCN は上空に輸送されるよりも早く破壊される.その逆であれば,HCN は化学的寿命がより長い上空へと輸送される事ができる.

仮に圧力が ≲ 0.1 bar の大気上層で雷が発生し HCN が生成された場合,HCN は化学的寿命が 2 - 3 年程度の上空 (圧力が mbar オーダーになる高度) まで輸送される.しかし ~ 1bar 程度で HCN が生成された場合,HCN は観測されるより前に急速に破壊されてしまう.

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