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arXiv:1605.06942
Santos et al. (2016)
An extreme planetary system around HD219828. One long-period super Jupiter to a hot-neptune host star
(HD 219828 まわりの極端な惑星系 長周期の重い木星型惑星と高温の海王星型惑星)

概要

これまでにおよそ 2000 個もの系外惑星が確認されており,その特徴は非常に幅広い範囲に渡っている.この広い多様性は,惑星系生と進化のプロセスへのヒントを与える.

ここでは,HD 219828 まわりの惑星系についての報告を行う.この恒星は明るく金属量の多い星であり,ホットネプチューンの発見が報告されている系である.

この系を,HARPS, SOPHIE, ELODIE を用いて視線速度観測を行った.また,恒星のスペクトルから,恒星の特徴付けや化学組成の調査,恒星活動による偽の惑星シグナルの調査も行った.さらに系の安定性や,惑星の軌道要素,惑星の質量への制限のために力学的な解析も行った.

観測の結果,軌道周期 13.1 日,最小質量 15.1 木星質量,軌道離心率 0.81 の伴星 HD 219828c を発見した.また同じ観測データから,既に発見されていた,軌道周期 3.83 日,最小質量 21 地球質量のホットネプチューン HD 219828b の存在を確認した.

力学的な解析から,この系は安定であり,また HD 219828b の平衡状態での軌道離心率は 0 に近いことが分かった.


この系は幾つかの点において極端かつ独特な系である.一つは,全ての系外惑星系と比較して,惑星同士の質量比が非常に大きいという点である.

また,この系の様な,「ホットネプチューン + 重い長周期の伴星」という惑星系は,「ホットジュピター + 重い長周期の伴星」という組み合わせよりも多いことが示唆される.このことは,ホットネプチューンの形成過程はホットジュピターの場合とは異なる可能性を示唆する.

質量が大きく,長周期で軌道離心率が大きい伴星である HD 219828c は,Gaia によるアストロメトリ (位置天文学) 検出の良い対象である.また同様に,直接撮像や高精度分光観測による大気観測という点からも良い対象である.アストロメトリの場合,この天体の真の質量と軌道配置を知ることが出来る.

仮に HD 219828b のトランジットが観測された場合,HD 219828 b, c の 2 天体の相互軌道傾斜角を含めてこの系を完全に特徴づけることが出来る.HD 219828c の真の質量が判明すれば,巨大ガス惑星と褐色矮星の間の天体のベンチマーク的な存在になるだろう.

観測の背景

HD 219828 のまわりには,視線速度法によって海王星質量の天体が検出されていた (Mero et al. 2007).

この際,さらに長周期の伴星の存在を示唆するシグナルも見られていたが,特定には至っていなかった.

系のパラメータ

HD 219828
スペクトル型:G0IV
距離:77.9 pc
等級:V = 8.04
光度:3.08 太陽光度
質量:1.23 太陽質量
有効温度:5891 K
金属量:[Fe/H] = 0.19
自転周期:28.7 日 もしくは 31.7 日

データは van Leeuwen (2007), Bressan et al. (2012) より.自転周期は Noyes et al. (1984), Mamajek & Hillenbrand (2008) より.

この恒星は,主系列段階からはわずかに進化している,低活動度の恒星である.
HD 219828b
周期:3.834887 日
軌道離心率:0.059
最小質量:21.0 地球質量
軌道長半径:0.045 AU
HD 219828c
周期:4791 日
軌道離心率:0.8115
最小質量:15.1 木星質量
軌道長半径:5.96 AU

観測の統計とホットネプチューンの形成について

HD 219828 まわりの 2 惑星は,太陽型星まわりの惑星の質量分布における,大質量側と低質量側の端に位置している.仮に両者の軌道が同一平面上にあるとすると,2 惑星の質量の比は ~ 229 となる.これは複数の惑星が発見されている系外惑星系の中でも特に質量比が大きい部類である.

多くの複数惑星系では,惑星同士の質量比は ~ 10 以下であり,200 を超えることは稀である.今回の発見以外では,太陽系の木星と水星の質量比が 4000,GJ 676 A (2 つのスーパーアースと 2 つの木星型惑星) で ~ 353 (Anglada-Escude & Tuomi 2012),ケプラー94 (ホットネプチューンと軌道周期 820 日の木星型惑星) で,軌道平面が同一とした場合に ~ 288 (Marcy et al. 2014),ケプラー454 (スーパーアースと軌道周期 524 日の木星型惑星) の ~ 207 (Gettel et al. 2016) が,特に大きな質量比を持つ複数惑星系である.

ホットジュピターを持つ恒星が長周期の惑星 (伴星) をどれくらい持っているのかという点について,視線速度観測と直接撮像からは,5 - 20 AU の範囲内に 1 - 20 木星質量の惑星・褐色矮星を持つ確率は ~ 50%と推定されている (Bryan et al. 2016).これは通常の恒星の連星率と近い値である.

しかし,より低質量の短周期惑星を持つ恒星については調べられていない.系外惑星のカタログ (exoplanet.eu) を元にすると,ホットジュピターを持つ系の場合,40 惑星系のうち 4 つ (~ 10%) が複数惑星系である.この場合,4 つの惑星系全てで外側の惑星は大きな質量 (0.1 木星質量以上) を持つ.

一方,ホットネプチューンを持つ系の場合,38 惑星系のうち 28 個 (~ 74%) が複数惑星系である.このうち 16 個は巨大ガス惑星 (0.1 木星質量以上) を持ち,12 個 (~ 32%) が海王星か地球サイズの低質量の惑星を持つ.
(exoplanet.eu からのサンプル抽出においては,バイアスを無くす為の抽出を行っているため,全ホットジュピター・ホットネプチューンの統計は取っていない.)

これらの統計より,「ホットネプチューン + 長周期の伴星」という系は,「ホットジュピター + 長周期の伴星」という系よりも多く存在することが分かる.これは,ホットネプチューンとホットジュピターでは形成過程が異なる事を意味する可能性がある.

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