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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1606.03293
Lellouch et al. (2016)
Detection of CO and HCN in Pluto's atmosphere with ALMA
(ALMA による冥王星大気からの CO と HCN の検出)
この検出は,冥王星大気中の CO (一酸化炭素) の存在を強く支持する結果であり,また HCN (シアン化水素) の冥王星大気中での初検出でもある.CO, HCN のスペクトル線は,それぞれ大気の高度 ~ 450 km, ~ 900 km を探査していることに相当する.
また,冥王星の昼側の大気の高度 ~ 50 - 400 km までの平均温度分布への強い制限が与えられた.具体的には,高度 30 - 50 km の成層圏の上部に明確な温度低下層 (中間圏) が存在することと,高度 300 km での温度が 70 ± 2 K と,先行研究 (81 ± 6 K) よりやや低く,最近のニューホライズンズによる太陽掩蔽観測のデータからの推定とは一致する値であった.
HCN が上空で飽和しているとすると,これは高層大気の温度が > 92 K という高い温度であることを要求する.これは CO の観測から否定される温度ではないものの,ニューホライズンズで測定されたメタンと窒素の視線方向の柱密度の値と非整合的である.
これらを総合すると,HCN の存在度の多さと上空の低温により,7 - 8 桁程度の HCN の過飽和状態が実現されていることが示唆される.これはこれまでの太陽系内の惑星大気には見られなかったものである.
大気上層での過飽和は,ヘイズ (もや) が存在する領域より上層での凝結核の欠乏と,冥王星高層大気での低圧・低温による凝縮速度の遅さが原因である可能性がある.
HCN は,高度 ~ 100 km の低層部にも存在し,モル分率では 10-8 - 10-7 である.これは成層圏の温度によって,飽和か不飽和かどちらも有り得る.
HCN の回転遷移に伴う放射による冷却 (line cooling) は,冥王星大気の熱収支に影響を及ぼす.しかし,観測から推定された量では,明確な中間圏の存在と,高層大気の ~ 70 K という低温を説明するには不十分である.
HCN の柱密度は,(1.6 ± 0.4) × 1014 cm-2 である.また,surface-reffered vertically integrated net production rate は 2 × 107 cm-1 s-1である.
また,HC3N の柱密度の上限値は 2 × 1013 cm-2,HC15N/HC14N < 1/125 である.
arXiv:1606.03293
Lellouch et al. (2016)
Detection of CO and HCN in Pluto's atmosphere with ALMA
(ALMA による冥王星大気からの CO と HCN の検出)
概要
ALMA (Atacama Large Millimeter/submillimeter Array) を用いて,2015 年 6 月 12 - 13 日に冥王星・カロン系の観測を行った.この観測の主要な発見は,CO (3-2) と HCN (4-3) の回転遷移を冥王星の大気中から検出したことである.この検出は,HCN のスペクトルの超微細構造の検出も含む.この検出は,冥王星大気中の CO (一酸化炭素) の存在を強く支持する結果であり,また HCN (シアン化水素) の冥王星大気中での初検出でもある.CO, HCN のスペクトル線は,それぞれ大気の高度 ~ 450 km, ~ 900 km を探査していることに相当する.
観測結果の詳細と議論
CO 検出による大気組成と温度構造への制限
CO の検出により,冥王星大気の CO モル分率が精度よく推定され,12 µbar の表面圧力で 515 ± 40 ppm となった.また,冥王星の昼側の大気の高度 ~ 50 - 400 km までの平均温度分布への強い制限が与えられた.具体的には,高度 30 - 50 km の成層圏の上部に明確な温度低下層 (中間圏) が存在することと,高度 300 km での温度が 70 ± 2 K と,先行研究 (81 ± 6 K) よりやや低く,最近のニューホライズンズによる太陽掩蔽観測のデータからの推定とは一致する値であった.
HCN と大気組成・大気構造
HCN のスペクトル線の形状より,高層大気には HCN が多く存在することが示唆される.高度 450 km より上では,モル分率が > 1.5 × 10-4 と推定される.また ~ 800 km では ~ 4 × 10-5 となる.HCN が上空で飽和しているとすると,これは高層大気の温度が > 92 K という高い温度であることを要求する.これは CO の観測から否定される温度ではないものの,ニューホライズンズで測定されたメタンと窒素の視線方向の柱密度の値と非整合的である.
これらを総合すると,HCN の存在度の多さと上空の低温により,7 - 8 桁程度の HCN の過飽和状態が実現されていることが示唆される.これはこれまでの太陽系内の惑星大気には見られなかったものである.
大気上層での過飽和は,ヘイズ (もや) が存在する領域より上層での凝結核の欠乏と,冥王星高層大気での低圧・低温による凝縮速度の遅さが原因である可能性がある.
HCN は,高度 ~ 100 km の低層部にも存在し,モル分率では 10-8 - 10-7 である.これは成層圏の温度によって,飽和か不飽和かどちらも有り得る.
HCN の回転遷移に伴う放射による冷却 (line cooling) は,冥王星大気の熱収支に影響を及ぼす.しかし,観測から推定された量では,明確な中間圏の存在と,高層大気の ~ 70 K という低温を説明するには不十分である.
HCN の柱密度は,(1.6 ± 0.4) × 1014 cm-2 である.また,surface-reffered vertically integrated net production rate は 2 × 107 cm-1 s-1である.
また,HC3N の柱密度の上限値は 2 × 1013 cm-2,HC15N/HC14N < 1/125 である.
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