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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1608.08257
Borgniet et al. (2016)
Extrasolar planets and brown dwarfs around AF-type stars. IX. The HARPS southern sample
(AF 型星のまわりの系外惑星と褐色矮星 IX:HARPS 南天サンプル)

概要

重い A, F 型の恒星は,これまで視線速度法による伴星のサーベイ観測はされない状態であった.これは,これらの恒星はスペクトル線が少なく自転が高速であるため,これまでの視線速度観測による伴星探査の障害となっているからである.

この研究の目的は,主系列段階の重い AF 型星まわりでの巨大ガス惑星の探査である.これらのタイプの恒星における巨大ガス惑星の存在度を統計的に調査し,進化した恒星まわりや低質量の主系列星まわりと比較を行うことを目指す.

欧州南天天文台 (European Southern Observatory, ESO) の La Silla observatory にある 3.6 m 望遠鏡に設置されている HARPS 分光器を用い,108 個の主系列段階の AF 星を観測した,これらの恒星は,B-V 光度が -0.04 〜 0.58,質量が 1.1 - 3.6 太陽質量の範囲にある.


巨大ガス惑星の探査に関しては,F6V 型の矮星 (主系列星) である HD 111998 の周りに,最小質量が 4.51 木星質量,軌道周期が 826 日の天体を発見した.
また,スペクトル型が F6IV-V の HD 60532 のまわりに検出されていた 2 惑星についても新しいデータを取得した.

さらに,分光連星の検出に関して,長周期の視線速度変動か大きな視線速度変動 (あるいはその両方) を示す,合計 14 個の伴星を検出した.


これまでの統計より,軌道周期が 1 - 1000 日の褐色矮星 (最小質量が 13 - 80 木星質量) が AF 型星まわりに存在する割合は,2 (+5, -2)% から 2.6 (+6.7, -2.6)%であった (中心星が 1.1 - 1.5 太陽質量である場合と,1.5 - 3 太陽質量である場合のそれぞれ).同じ軌道周期の範囲内の木星質量の天体 (最小質量が 1 - 13 木星質量) の場合は同じく,4 (+5.9, -0.9)% から 6.3 (+15.9, -6.3)%であった

軌道周期が 1 - 100 日の範囲にある木星質量天体に限ると,2 (+5.2, -2)% から 3.9 (+9.9, -3.9)%であった.

誤差の大きさを考えると,これらの結果は太陽型の主系列星まわりの値と大きな違いはないと言える.

研究背景

中心星の質量とそのまわりでの惑星形成にかんして,コア降着モデルによると,巨大ガス惑星の存在頻度は中心星の質量が上がるにつれ大きくなると予想されている.Kennedy & Kenyon (2008) によると,巨大ガス惑星の存在頻度は,中心星が 0.4 - 3 太陽質量の間では線形に増加する (1 太陽質量のとき 6%) としている.この傾向は,F, G, K 型 (スペクトル型が F7V - F8V から K 型の中期程度まで) のまわりでは多かれ少なかれ確認されている.例えば,Cumming et al. (2008) などでは,軌道長半径が最大で 4 - 5 AU の範囲内で,0.3 - 10 木星質量の惑星は 9 - 10 %の確率で存在するとされている.

低質量の M 型矮星では,存在頻度は ~ 10%とされている (Bonfis et al. 2013).これもコア降着モデルと整合的な傾向である (Laughlin et al. 2004など).

しかしこの傾向が,より重い AF 型星でも見られるかどうかは不明である.

重い恒星 (1.2 - 3.5 太陽質量) でスペクトル型が AF (B9V - A0V から F6V - F7V の範囲) の恒星では,スペクトル線が少ないことと,FGK 型星よりも速く自転していることから,視線速度による惑星探査がしづらい.

その代わりに,進化した恒星まわりでの視線速度観測は行われている.これは,恒星が進化するとスペクトル線が増え,自転速度も AF 星の主系列段階より遅くなるからである.過去の研究では,1.2 - 2.2 太陽質量の GK 型準巨星まわりの ~ 160 個の観測対象では,軌道長半径が最大 2.5 AU までの 0.8 木星質量より重い巨大ガス惑星は 11 ± 2%の頻度で存在すると考えられている (Johnson et al. 2008, 2010).

1 - 5 太陽質量の赤色巨星では,~ 2.5 太陽質量までは巨大ガス惑星の存在頻度が上昇し,1.8 - 2.2 太陽質量の範囲で ~ 15%となっている (Reffert et al. 2015).2.5 - 5 太陽質量の範囲では頻度が低下する.これは 373 個の GK 星の ~ 12 年間に及ぶ観測結果にもとづいているが,異論も存在する.

パラメータ

HD 111998
スペクトル型:F5V
等級:6.11
金属量:[Fe/H] = 0.07
有効温度:6557 K
質量:1.18 太陽質量
半径:1.45 太陽半径
HD 111998b
軌道周期:825.9 日
軌道離心率:0.03
最小質量:4.51 木星質量

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