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arXiv:1609.00275
van Lieshout et al. (2016)
Dusty tails of evaporating exoplanets. II. Physical modelling of the KIC 12557548b light curve
(蒸発する系外惑星のダストテイル II KIC 12557548b の光度曲線の物理モデリング)

概要

KIC 12557548b のような蒸発している系外惑星は,大量のダスト粒子を放出している.このダスト粒子は彗星の尾のような形状になりうる.この尾が中心星を隠すと,トランジットシグナルは尾の中に含まれるダストの情報を含むことになる.

ここでは,KIC 12557548b のケプラーによる光度曲線の詳細な形状を用いて,尾を作るダストのサイズと組成の制限を試みた.これは惑星からのダスト成分の放出から,昇華によるダストの破壊までを含むものである.

このダスト雲の形状から,光の減衰と角度依存性のある散乱光の効果を含めて光度曲線を生成し,惑星の軌道位相で折りたたんだケプラーの光度曲線の形状と比較した.また MCMC 法を用いてパラメータ空間のサーベイも行った.

その結果,パラメータによっては観測された光度曲線を再現することが出来た.その結果によると,初期の粒子サイズは 0.2 - 5.6 µm,質量放出率は 1 Gyr あたり 0.6 - 15.6 地球質量 (2 σ の確度) と考えられる.

尾の長さは,ダスト成分の物質パラメータの特定の組み合わせのみが説明することが出来す.これらの制限より,ダスト成分はコランダム (corundum, Al2O3) とすると整合的である.しかし,炭素質のダストやシリケイト,鉄組成は観測と合わないと判明した.

研究背景

蒸発する岩石惑星の発見

これまでに,岩石主体の蒸発している惑星と思われる天体が発見されている (Rappaport et al. 2012).これまでに 3 天体が発見されている.KIC 12557548b (Rappaport et al. 2012, 以降 KIC 1255b),KOI-2700b (Rappaport et al. 2014),K2-22b (Sanchis-Ojeda et al. 2015) である.これらはどれもケプラーを用いて検出されている (Borucki et al. 2010).

これらの天体はどれも中心星が K 型・M 型の主系列星であり,短周期で公転している.トランジット光度曲線が非対称な形状を示し,またトランジット深さにも変動がある.これは惑星からのダストの放出で説明することができ,KIC 1255b におけるモデルについては初出は Rappaport et al. (2012) である.

ダストの放出とトランジット光度曲線

ダスト粒子は,蒸発する小さい惑星で生成される.放出され惑星を離れると,中心星からの輻射圧で押され,彗星の尾のような形状を形成する.

惑星から離れるにつれ,ダスト粒子の惑星に対する速度は大きくなる.また中心星からのフラックスを受け徐々に昇華していく.この両方の効果によって,吸収断面積の角度密度が減少する.その結果,観測されている光度曲線のシャープなトランジットへの入り (ingress) と,緩やかなトランジットからの出 (egress) が説明される.

加えて,ダスト粒子による中心星からの光の散乱により,トランジットに入る直前にわずかな増光を起こす.これは,ダスト雲全体が恒星面の大部分 (最も明るい部分) を隠さず,しかし小さな散乱角を得るのには十分な近さにいる時に発生する.ダスト雲の分布は非対称になっているため,散乱の効果は ingress 時に大きく,egress 時はそれに比べて小さくなる.

光度曲線の形状はダスト雲の存在によるとするシナリオは,トランジット深さの波長依存性によって有効であることが確認されている (Bochinski et al. 2015, Sanchis-Ojeda et al. 2015),その一方で,トランジット光度曲線の形状は偽陽性だとするシナリオは,支援速度観測,高分解能の撮像観測や測光観測によって否定されている (Croll et al. 2014).


トランジット深さの変動を説明するためには,惑星表面でのダスト粒子生成率に不規則な変動があることが必要である.

また,ダスト粒子に対していくつかの仮定を課せば,ダスト成分の質量放出率の平均値を推測することも可能である (ガス成分での散逸は含まない).

KIC 1255b と K2-22b では,1 Gyr に 0.1 - 1 地球質量程度のオーダだという推定がされている (Rappaport et al. 2012, Perez-Becker & Chiang 2013, Kawahara et al. 2013など).KOI-2700b ではそれよりも 1 - 2 桁小さい値が見積もられている (Rappaport et al. 2014, van Lieshout et al. 2014).

ダスト雲のモデリングと質量放出

質量放出は中心星からのフラックスによって駆動されていると考えられる (Rappaport et al. 2012).放射によって惑星の表面が 2000 K 以上にまで加熱され,固体の表面が蒸発し,金属量の多い大気を形成する.(スーパーアースに関しては,Schaefer & Fegley (2009) などでモデリングされている)

大気は高温であり,外へ広がっていき,"パーカータイプ" の thermal wind となる (Rapapport et al. 2012).ガスが膨張して温度が低下すると,ダスト粒子が生成される.ダスト粒子はガスが希薄になるまでガスに引きずられて運動し,それ以降はダストの力学は中心星の重力と輻射圧が支配することになる.

Perez-Becker & Chiang (2013) では,惑星からのアウトフローを詳細に調べ,質量放出率は蒸発している天体の質量の強い関数になっていることを明らかにした.そのモデルによると,KIC 1255b の質量は 0.02 地球質量 (月質量の 2 倍程度) よりは軽く,また 40 - 400 Myr のうちに完全に消滅するとしている.この質量の上限値に対応する惑星半径は,この惑星の半径の上限値 (しばしばトランジットが検出できなくなる事から与えられた上限値) と整合的である (Brogi et al. 2012).
また,二次食からの制限値 (van Werkhoven et al. 2014) とも整合的であった.

さらに上記のモデルが正しければ,KIC 1255b はこれまで発見されている中で最も小さい惑星であるということになる.

ダストテイルのモデリング

惑星からのダスト粒子放出の詳細に関わらず,ダストの組成は惑星の組成を反映するだろうと考えられる.最近,Kimura et al. (2002) と Rappaport et al. (2012, 2014) をベースとして,ダストテイルの長さからダスト雲の組成の制限をしようという試みが行われた (van Lieshout et al. 2014).

簡単に言うとダストテイルの長さは,輻射圧によるダスト粒子の方位角方向のドリフトと,昇華によるダストサイズの減少の 2 つの作用によって決まる.ダストの昇華速度は粒子の組成に大きく依存するため,尾の長さはダストの組成を反映することになる.

van Lieshout et al. (2014) では,ダストテイルの半解析的な記述を与えた.そこでは,ダストテイルの形状は,特徴的な長さと初期の angular density の 2 つのみで記述されている.しかしこれは過程が多かったことや,2 つのパラメータで表すことで尾の詳細な形状を無視してしまっていたという課題があった.従って,形態学的ではなく,物理に基づいた,粒子サイズ依存性のある輻射圧の力学と,温度依存性のある粒子サイズの進化を考慮したモデリングが必要である.

ここでは,particle-dynamics-and-sublimation シミュレーションを行った.Rappaport et al. (2012) や Sanchis-Ojeda et al. (2015) でも粒子力学シミュレーションを行っているが,ダスト粒子の寿命が一定であり,また光度曲線の再現を行っていなかった.

結果

ダスト粒子の組成

ダストテイルの長さを説明できるのはコランダムだけという結果になった.組成に関しては van Lieshout et al. (2014) と整合的な結果になった.

その他の過去の研究では,Rappaport et al. (2012) では,Kimura et al. (2002) の昇華時間をベースにし,ダストは輝石 (pyroxene) であるとしていた.今回の結果との違いの原因は,使用している複素屈折率と昇華のパラメータの違いによるものだろうと考えられる.

コランダムの要素であるアルミニウムは,宇宙の存在度では比較的低い方である.また岩石惑星ではマイナーな元素である.そのため,ダストの主成分がコランダムであるという結果は驚きである.

この結果は,放出されている大気中では特定の化学種だけが凝結しやすいことを示しているのかもしれない.例えば,仮にガスのアウトフローの密度がダストが凝結するには希薄であり,なおかつ高温である場合,凝縮温度の高いコランダムは混合ガス中ではじめに凝縮を始める成分となり得る.
別の可能性としては,ダスト粒子は惑星のマグマオーシャンにおける蒸留の残留物 (カルシウムやアルミニウムが多くなる) によるとする考えである.

質量放出率

質量放出率の推定値 (1 Gyr あたり 0.6 - 15.6 地球質量) も,van Lieshout et al. (2014) と整合的な結果になった.

他の先行研究と比べると,上端の推定値が大きくなっている.過去の研究では,1 Gyr あたり 0.1 - 1 地球質量程度と見積もられていた (Rappaport et al. 2012, Perez-Becker & Chiang 2013, Kawahara et al. 2013など).
これは,この研究ではダストによる光の散乱の効果を取り入れているためである.惑星の前方での散乱は,トランジット光度曲線の一部を "埋める" ことが出来るが,同じトランジット深さを再現するためにはより大きい質量放出率が必要だからである.

結論

  1. 組成:観測のトランジット光度曲線とダストテイルの長さに合うものはコランダムのみであった.鉄,酸化ケイ素,fayalite (鉄カンラン石),enstatite (頑火輝石),forsterite (苦土カンラン石),石英,炭化ケイ素,黒鉛では合わなかった.ただしこれらの混合物である可能性は排除できない.
  2. 粒子サイズ:同じ初期サイズで計算を始め,昇華によるサイズ進化を考慮した.初期サイズが 0.2 - 5.6 µm とすると観測結果とよく合う.また,ingress 直前の光度曲線の増光の形状からは,この下限値である 0.2 - 0.3 µm が好ましい.
  3. 質量放出率:ダスト成分の質量放出率は,1 Gyr (10 億年) あたり 0.6 - 15.6 地球質量と推定される.(この値にはガス成分の質量は含まれていない.)
  4. 尾の形状:彗星のコマと尾のような,複数の構造を想定する必要は無い.また,ダスト雲の先頭部分は,動径方向に光学的に厚いだろう.

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