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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1702.02994
Arney et al. (2017)
Pale Orange Dots: The Impact of Organic Haze on the Habitability and Detectability of Earthlike Exoplanets
(ペール・オレンジ・ドッツ:地球に似た系外惑星の生命存在可能性と検出可能性への有機物ヘイズの影響)

概要

既知の惑星大気の中ではヘイズ (もや) の存在は一般的である.また,地球化学的な証拠からは,初期の地球はその環境およびスペクトルへの大きな影響を及ぼすだけの有機物のヘイズが存在したことが示唆されている.

中心星の紫外線スペクトルは,大気中のメタンの光化学を通じて有機物ヘイズの形成を駆動する.ここでは 1 次元の光化学気候モデルを用いて,いくつかのタイプの恒星まわりでのハビタブルゾーンにおける,始生代の地球を模した環境での有機物ヘイズのフラクタルの生成を研究した.モデルとして用いたのは,現在および形成初期の太陽,AD Leo (しし座AD星,スペクトル型 M3.5V),GJ 876 (M4V),ε Eridani (エリダヌス座イプシロン星,K2V),σ Bootis (うしかい座シグマ星,F2V) である.

始生代的な大気においては,最も高い紫外線フラックスを持つ恒星を公転する惑星の大気中では,ヘイズは生成しない.これは,光化学的に生じる酸素ラジカルがヘイズの前駆体を破壊することが原因である.

大気中の有機物ヘイズは惑星の居住可能性 (habitability) に関して,紫外線の遮蔽と表面の冷却という影響を与える.しかしこの冷却の効果は, M 型星のまわりでは小さい.これは,M 型星が放射する波長は,有機物ヘイズに対して比較的透明であることが原因である.


さらに,惑星大気中のヘイズの検出可能性について議論するため,スペクトルを計算した.
その結果,GJ 876 の周りの惑星では,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の (James Webb Space Telescope, JWST) による10 回のトランジット観測で,2.5 µm より短い波長において,ヘイズが存在しない惑星の場合と比べると 2 - 10 σ だけガスの吸収を浅くするという違いが出ることが分かった.

また,メタンと二酸化炭素は > 5 σ で検出可能である.6.3 µm 付近では,ヘイズによる吸収の特徴は 5 σで検出可能となった.しかし近い吸収波長を持つ別の吸収体とヘイズを区別するためには,高いシグナルノイズ比が必要である.

10 パーセクの距離の惑星の直接撮像においては,10 メートルクラスの紫外線・可視光・近赤外線望遠鏡のコロナグラフを用いた観測によって,200 時間の観測において紫外線-青のヘイズの吸収の特徴が > 12 σ で強く検出されるだろう.






論文タイトルの "Pale Orange Dots" は,the Pale Blue Dot のもじりです.ボイジャー1号によって地球から 60 億 km の距離から撮影された地球が,青く淡い点として撮影されたことから,地球およびその写真を "the Pale Blue Dot" と呼ぶようになりました.

なおこの論文のグループは,以前に同じ手法で過去の地球の大気中のヘイズとその影響に関する論文を発表しています.その時の論文タイトルは "The Pale Orange Dot: The Spectrum and Habitability of Hazy Archean Earth" と,"The Pale Orange Dot" が使われています.
今回は系外惑星も含めた多数の惑星を想定した研究となっているため,"Pale Orange Dots" と微妙にタイトルが変わっているようです.
※参考リンク
arXiv:1610.04515

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