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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1507.02388
Udalski et al. (2015)
A Venus-Mass Planet Orbiting a Brown Dwarf: Missing Link between Planets and Moons
(褐色矮星周りの金星質量惑星:惑星と衛星の間のミッシングリンク)
また、若い恒星周りに円盤が多数発見されていることや、ケプラー宇宙望遠鏡によって同一平面上に複数の惑星が存在している系が多数発見されていることは、降着円盤を通じた惑星形成のメカニズムは普遍的であることを示している。
また、ガリレオ衛星のように、衛星の中にも同様の機構で形成されたものが存在する。
今回、重力マイクロレンズを用いて、"中間の系"である、OGLE-2013-BLG-0723LB/Bbの系を発見した。
これは、褐色矮星周りの金星質量の系外惑星の発見である。
この系は、「恒星周りの惑星」という系のスケールダウン版、あるいは、恒星の周りを周回する、「惑星周りの衛星」という系のスケールアップ版であると見なせる。
褐色矮星周りの惑星の発見は、直接撮像、視線速度法、重力マイクロレンズで行われている。
・2MASS J12073346-3932539b (or 2M1207b)
惑星質量:4木星質量
軌道長半径:46 AU
中心星質量:0.024太陽質量
系の年齢:0.008 Gyr
発見手法:直接撮像
(Chauvin et al. 2004)
・2MASS J04414489+2301513b (or 2M044144b)
惑星質量:7.5木星質量
軌道長半径:15 AU
中心星質量:0.019太陽質量
系の年齢:0.001 Gyr
発見手法:直接撮像
(Todorov et al. 2004)
・Cha Hα 8
惑星質量:16 - 30木星質量
軌道長半径:~1 AU
中心星質量:0.07 - 0.10太陽質量
系の年齢:~ 3 Myr
発見手法:視線速度法
(Joergens & Müller 2007)
・OGLE-2012-BLG-0358Lb
惑星質量:1.85木星質量
軌道長半径:0.87 AU
中心星質量:0.022太陽質量
系の年齢:不明
発見手法:重力マイクロレンズ法
(Han et al. 2013)
前3つについては、中心星と惑星の質量比が小さく、また距離も離れている。そのため、連星系のスケールダウン版であると考えられる。
4番目のものは比較的軌道が小さく、質量比も大きい。そのため、コア集積を経て形成された可能性が有る。
重力マイクロレンズ法は、このような褐色矮星にある惑星の中で、岩石や氷主体の惑星を発見するのに適している。この手法では、検出のために惑星や中心星(この場合褐色矮星)からの光は必要ないからである。
大きい方のスパイクは、連星の伴星によるcausticsを通過した際にできた特徴である。
それに2ヶ月先立つ小さいスパイクが、惑星によるものである。
パラメータフィッティングの結果、
惑星質量:0.69地球質量
中心星の褐色矮星質量:0.031太陽質量
伴星の質量:0.097太陽質量
太陽系からの距離:490 pc
褐色矮星と惑星の(投影)距離:0.34 AU
褐色矮星と伴星の(投影)距離:1.74 AU
となった。
金星は 0.815地球質量であるため、今回発見されたOGLE-2013-BLG-0723LBbは金星よりやや軽い程度の惑星である。
中心星であるOGLE-2013-BLG-0723LBは 0.031太陽質量である。
恒星と褐色矮星の境界は 0.08太陽質量程度であるが、これより有意に軽い天体であり、中心星のOGLE-2013-BLG-0723LBは褐色矮星である。
一方、伴星であるOGLE-2013-BLG-0723LAは 0.097太陽質量であり、0.08太陽質量より重いため水素核融合を起こす低質量の恒星である。
しかし、投影された距離で見ると、Bまでの距離とAまでの距離は 5.2倍の違いがある。
もしAの方を惑星が公転している場合、観測されたこの現象が起きる確率は 4%未満となる。
さらにこの場合(Aの方を惑星が公転しているとした場合)、3体の力学的安定性を保証するためには、Bの方は恒星-惑星系の向こう側か手前側に、投影距離よりもファクター3ほど大きな距離にいる必要がある。
これは観測される確率を、さらにファクター 32減らす。
よってAの周りを惑星が公転しているという軌道配置は、不可能なものではないが観測できる確率が非常に低くなる。
この議論は、この惑星は周連星惑星か?という議論に対しても適用できる。
この惑星が、恒星(A)と褐色矮星(B)の投影距離の3倍以上離れた軌道で、AとBの連星の周りを公転する周連星惑星であり、たまたま投影距離ではBに近い位置関係にあるという軌道配置もあり得るが、その場合の観測できる確率は同様に非常に低い。
褐色矮星が自力で光っている恒星(A)のとの連星を成し、惑星を引き連れているという状態は、質量的にも階層構造的にも、「恒星-惑星の系」と「惑星-衛星の系」の中間であると考えられる。
Aの周囲で形成されてAの周りを公転していたが、その後力学的な擾乱を受けてBの周りの軌道に移るという事象は起こりうる。
その場合は、海王星の衛星トリトンの状況と類似している。
天王星-太陽の系と、カリスト-木星の系とこの系(褐色矮星-惑星)のパラメータは類似している。
トリトン-海王星の系とは、大きく違っているわけではない。
その理由は、この系には、他の3つより明るく重い、100 AUのオーダーかそれ以下の距離離れている、4体目の天体が存在しているかもしれないからである。
4体目の存在を示唆する証拠は、アパーチャーに余計な光源が存在したというものである。
この光源は、低質量星であるAのものとするには明る過ぎ、無関係の天体にしては投影距離が近すぎるため、この系の4体目の天体であるかもしれない。
※注釈
"OGLE-2013-BLG-0723LB/Bb"という表記がありますが、これは褐色矮星であるOGLE-2013-BLG-0723LBと、その惑星であるOGLE-2013-BLG-0723LBbの2天体から成る系を指す表記です。
arXiv:1507.02388
Udalski et al. (2015)
A Venus-Mass Planet Orbiting a Brown Dwarf: Missing Link between Planets and Moons
(褐色矮星周りの金星質量惑星:惑星と衛星の間のミッシングリンク)
概要
太陽系の天体がほぼ同一平面上に存在することから、カントは惑星は降着円盤を通じて形成されるというアイデアを得た。また、若い恒星周りに円盤が多数発見されていることや、ケプラー宇宙望遠鏡によって同一平面上に複数の惑星が存在している系が多数発見されていることは、降着円盤を通じた惑星形成のメカニズムは普遍的であることを示している。
また、ガリレオ衛星のように、衛星の中にも同様の機構で形成されたものが存在する。
今回、重力マイクロレンズを用いて、"中間の系"である、OGLE-2013-BLG-0723LB/Bbの系を発見した。
これは、褐色矮星周りの金星質量の系外惑星の発見である。
この系は、「恒星周りの惑星」という系のスケールダウン版、あるいは、恒星の周りを周回する、「惑星周りの衛星」という系のスケールアップ版であると見なせる。
背景など
これまでに、褐色矮星周りの系外惑星は4つ発見されていて、全てが"super-Jupiter"質量である。褐色矮星周りの惑星の発見は、直接撮像、視線速度法、重力マイクロレンズで行われている。
・2MASS J12073346-3932539b (or 2M1207b)
惑星質量:4木星質量
軌道長半径:46 AU
中心星質量:0.024太陽質量
系の年齢:0.008 Gyr
発見手法:直接撮像
(Chauvin et al. 2004)
・2MASS J04414489+2301513b (or 2M044144b)
惑星質量:7.5木星質量
軌道長半径:15 AU
中心星質量:0.019太陽質量
系の年齢:0.001 Gyr
発見手法:直接撮像
(Todorov et al. 2004)
・Cha Hα 8
惑星質量:16 - 30木星質量
軌道長半径:~1 AU
中心星質量:0.07 - 0.10太陽質量
系の年齢:~ 3 Myr
発見手法:視線速度法
(Joergens & Müller 2007)
・OGLE-2012-BLG-0358Lb
惑星質量:1.85木星質量
軌道長半径:0.87 AU
中心星質量:0.022太陽質量
系の年齢:不明
発見手法:重力マイクロレンズ法
(Han et al. 2013)
前3つについては、中心星と惑星の質量比が小さく、また距離も離れている。そのため、連星系のスケールダウン版であると考えられる。
4番目のものは比較的軌道が小さく、質量比も大きい。そのため、コア集積を経て形成された可能性が有る。
重力マイクロレンズ法は、このような褐色矮星にある惑星の中で、岩石や氷主体の惑星を発見するのに適している。この手法では、検出のために惑星や中心星(この場合褐色矮星)からの光は必要ないからである。
観測
中心星の褐色矮星の重力に由来する光度曲線に、2つの特徴的なスパイクが検出されている。大きい方のスパイクは、連星の伴星によるcausticsを通過した際にできた特徴である。
それに2ヶ月先立つ小さいスパイクが、惑星によるものである。
パラメータフィッティングの結果、
惑星質量:0.69地球質量
中心星の褐色矮星質量:0.031太陽質量
伴星の質量:0.097太陽質量
太陽系からの距離:490 pc
褐色矮星と惑星の(投影)距離:0.34 AU
褐色矮星と伴星の(投影)距離:1.74 AU
となった。
金星は 0.815地球質量であるため、今回発見されたOGLE-2013-BLG-0723LBbは金星よりやや軽い程度の惑星である。
中心星であるOGLE-2013-BLG-0723LBは 0.031太陽質量である。
恒星と褐色矮星の境界は 0.08太陽質量程度であるが、これより有意に軽い天体であり、中心星のOGLE-2013-BLG-0723LBは褐色矮星である。
一方、伴星であるOGLE-2013-BLG-0723LAは 0.097太陽質量であり、0.08太陽質量より重いため水素核融合を起こす低質量の恒星である。
BとAのどちらを公転しているのか?
惑星が、OGLE-2013-BLG-0723LBとOGLE-2013-BLG-0723LAのどちらを公転しているかを断言することは困難である。しかし、投影された距離で見ると、Bまでの距離とAまでの距離は 5.2倍の違いがある。
もしAの方を惑星が公転している場合、観測されたこの現象が起きる確率は 4%未満となる。
さらにこの場合(Aの方を惑星が公転しているとした場合)、3体の力学的安定性を保証するためには、Bの方は恒星-惑星系の向こう側か手前側に、投影距離よりもファクター3ほど大きな距離にいる必要がある。
これは観測される確率を、さらにファクター 32減らす。
よってAの周りを惑星が公転しているという軌道配置は、不可能なものではないが観測できる確率が非常に低くなる。
この議論は、この惑星は周連星惑星か?という議論に対しても適用できる。
この惑星が、恒星(A)と褐色矮星(B)の投影距離の3倍以上離れた軌道で、AとBの連星の周りを公転する周連星惑星であり、たまたま投影距離ではBに近い位置関係にあるという軌道配置もあり得るが、その場合の観測できる確率は同様に非常に低い。
議論
この系の特徴について
この系は、惑星と衛星のミッシングリンクである。褐色矮星が自力で光っている恒星(A)のとの連星を成し、惑星を引き連れているという状態は、質量的にも階層構造的にも、「恒星-惑星の系」と「惑星-衛星の系」の中間であると考えられる。
3体の軌道と惑星の形成場所
この惑星は褐色矮星(B)の周りを公転していると考えられるが、かつては恒星(A)の周囲を公転していた可能性はある。Aの周囲で形成されてAの周りを公転していたが、その後力学的な擾乱を受けてBの周りの軌道に移るという事象は起こりうる。
その場合は、海王星の衛星トリトンの状況と類似している。
天王星-太陽の系と、カリスト-木星の系とこの系(褐色矮星-惑星)のパラメータは類似している。
トリトン-海王星の系とは、大きく違っているわけではない。
4体目の存在可能性について
A, B, 惑星の3体のモデルを構築するのは興味深いが、それは時期尚早であるかもしれない。その理由は、この系には、他の3つより明るく重い、100 AUのオーダーかそれ以下の距離離れている、4体目の天体が存在しているかもしれないからである。
4体目の存在を示唆する証拠は、アパーチャーに余計な光源が存在したというものである。
この光源は、低質量星であるAのものとするには明る過ぎ、無関係の天体にしては投影距離が近すぎるため、この系の4体目の天体であるかもしれない。
※注釈
"OGLE-2013-BLG-0723LB/Bb"という表記がありますが、これは褐色矮星であるOGLE-2013-BLG-0723LBと、その惑星であるOGLE-2013-BLG-0723LBbの2天体から成る系を指す表記です。
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