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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.06136
Masuda & Winn (2017)
Reassessment of the Null Result of the HST Search for Planets in 47 Tucanae
(きょしちょう座47 でのハッブル宇宙望遠鏡での惑星探査における否定的な結果の再評価)
Gilliland et al. (2000) によると,きょしちょう座47 中には短周期ガス惑星が 17 個発見されると期待された.この推定は,きょしちょう座47 の恒星たちが,近傍の恒星で 1999 年までの系外惑星サーベイ結果を元にした,惑星の存在頻度および存在する惑星と同じ特性を持つという仮定の元に算出されていた.
ここではこの結果を,きょしちょう座47 の恒星とケプラーで観測された恒星は同じ惑星の population を持つと仮定してアップデートした.
その結果,きょしちょう座47 を観測した時に期待されるトランジット系外惑星の検出個数の改善された値は,4.0 (+1.7, -1.4) 個となった.また,ケプラーで検出された系外惑星のサンプルを,きょしちょう座47 で観測されたものと同じ恒星の質量範囲に限定して解析した場合は,期待される検出数は更に減って 2.2 (+1.6, -1.1) 個となった.そのため,ハッブル宇宙望遠鏡での否定的な結果は,これまで思われていたよりも統計的に有意ではない.きょしちょう座47 とケプラーで観測された恒星が同じ惑星の population を持つという極端な仮説も,2 - 3 σ より大きな有意性で排除できない.
この結果は,球状星団と散在星の惑星の population の比較をするには,より慎重な探査が必要であることを示す.
このサーベイでは,連続 8.3 日間で計 34000 個の恒星の観測が行われた.トランジットする巨大惑星を検出するための十分な精度がある観測であったにも関わらず,一つも惑星は発見されなかった.そのため Gilliland et al. (2000) では,きょしちょう座47 でのホットジュピターは,太陽近傍星よりも少なくとも一桁は稀少であると結論付けた.
彼らの観測当時考えられていた系外惑星頻度や inject-and-recover テストと惑星頻度の推定に基づけば,もしきょしちょう座47 の恒星と散在星 (field stars) が同じ頻度でホットジュピターを持っているのであれば,このサーベイでは 17 個の惑星を検出しているはずだった.
今日では,この結果は驚くべきことではないとみなされるようになっている.球状星団内の恒星がホットジュピターを持つ確率は,星団外の近傍の恒星よりも低いだろうと考えるに足る多数の理由がある.
最も明確な理由は恒星の金属量である.太陽近傍星では,短周期巨大惑星の存在頻度は中心星の高い金属量と強く関連していることが分かっている (Santos et al. 2001, Fischer & Valenti 2005).また,きょしちょう座47 の恒星は金属量が [Fe/H] = -0.7 と低いこともこれを支持する (McWilliam & Bernstein 2008).
金属量の他にも考えられる理由はある.例えば,近傍の重い恒星からの輻射がある環境では,巨大惑星の形成と移動は阻害されるという仮説 (Armitage 2000など) や,球状星団内での惑星は恒星遭遇によって失われるというもの (Sigurdsson 1992など),その星団が,ホットジュピターが潮汐軌道崩壊を起こすには十分なほど年老いているというもの (Debes & Jackson 2010),または潮汐加熱と膨張により大気のロッシュローブオーバーフローを起こす (Gu et al. 2003) というものである.
これらの仮説は説得力があるものの,必ずしも正しいとは限らない.
例えば,恒星の金属量とホットジュピターの存在頻度の因果関係はまだ立証されていない.金属量それ自体は重要ではなく,近傍星での高い金属量と関連した別の要素が重要であるが,きょしちょう座47 の環境ではそうではない,ということも考えられる.
同様に,惑星が少ないことの全てを星団内での恒星遭遇の結果と考えるのも難しい.確かに恒星遭遇はいくつかの惑星系を破壊するが,高軌道離心率での軌道移動を介して,逆にホットジュピターの生成率を上げるかもしれない.
また,もしホットジュピターがその場形成するのであれば (Batygin et al. 2016),星団内での恒星遭遇は重要ではない.さらに,ホットジュピターの形成モードは球状星団に特有なものである可能性もある.
要するに,ホットジュピターの形成も球状星団の形成も十分には理解されていないため,明らかに見える仮説であっても観測的検証を行う必要がある.
Gilliland et al. (2000) による先進的なハッブル宇宙望遠鏡でのサーベイが行われていた時点では,トランジット惑星として知られていたのは HD 209458b のみである (Charbonneau et al. 2000, Henry et al. 2000).当然,観測で得られた否定的な結果を解釈する際は,Gilliland et al. (2000) ではこの惑星に似たホットジュピターを,近傍星のドップラーサーベイ結果から参照していた.15 年以上が経過し,当時よりも惑星の分布や存在確率に関する理解は進んでいる.そこで,過去の結果が正しいかどうかの検証を行った.
ケプラーによって得られている全てのデータを用いた場合は,きょしちょう座47 中にサーベイで検出されることが期待されるホットジュピターの個数は 4.0 (+1.7, -1.4) 個となった,また,ケプラーでの低質量の恒星をピックアップして計算した場合は,さらに低く 2.2 (+1.6, -1.1) 個となった.
過去の推定と結果が異なる理由は,ケプラーの観測から算出されているホットジュピターの存在頻度が,過去の仮定より小さいことである.また,恒星質量の範囲を限定した場合は更に存在頻度が小さくなる.
その他の重要な要素は,系外惑星の検出可能性の典型的な値が,過去の研究での仮定より半分程度小さい値であることである.
その解析の結果,期待される検出個数は 15.2 (+7.1, -5.9) となった.これは,上記のケプラーによるデータに基づいた結果より大きい値である.また Gilliland et al. (2000) の値と近い.これは,視線速度サーベイでのホットジュピター存在頻度が高いことが主な原因である.また,いくらか高い検出効率からの寄与も小さいながらある.
視線速度サーベイをベースにした結果は,ケプラーデータをベースにした結果よりも統計的不確実性が大きい.
また,ケプラーデータをベースにした結果に重きを置くべきいくつかの理由がある.
例えば,視線速度での系外惑星サンプルは,もともと対象として選択された恒星から,外部に公開されていない理由での事後評価に基づいた恒星サンプルで構成されている.Mayor et al. (2011) は同様の恒星に対する視線速度観測をベースにした独立した解析を行い,822 の恒星中に 5 個のホットジュピターを発見している.これにより,惑星の存在頻度として 0.6 (+0.3, -0.2)%という値を与えた.これは Wright et al. (2012) で報告されている値の半分であり,またケプラーに基づいた結果の 1 σ 以内に入る.Mayor et al. (2011) の表 1 では,より高い値である 0.89%を報告しているが,これは 0.16 木星質量よりも小さい質量の惑星を個数に含んでおり,また惑星の軌道周期が 10 日ではなく 11 日未満のものを個数に含んでいる.ここで恣意的に軌道周期 11 日が選ばれた理由は不明であり,事後評価のサンプルの解析を難しくしている要因である.
きょしちょう座47 の恒星の金属量は [Fe/H] = -0.7 程度である,ケプラーで観測した恒星サンプルでは,金属量は平均で [Fe/H] = 0 である (Dong et al. 2004など).ケプラーデータ中には信頼できる金属量データがあるサンプル数が少ないことと,またケプラーのサンプルには低金属量の恒星をあまり含まないことから,ケプラーサンプルから低金属量の恒星を抽出するのは難しい.
金属量と惑星存在頻度の関連性から簡単な議論を行う.
検出が期待できる惑星の個数が 2.2 個という値は,ゼロとはわずかに非整合であるにすぎない.低い金属量は,期待される検出個数を更に減らす.たとえば Johnson et al. (2010) では巨大惑星の存在頻度を 101.2[Fe/H] とスケーリングした.この場合,平均の期待される検出個数は [Fe/H] = -0.29 の時に 1 個を下回る.
また,Schlaufman (2014) ではさらに強い依存性を主張しており,102.3[Fe/H] とした.この関係性を用いれば, [Fe/H] = -0.15 程度で 1 個を下回る.
なお,恒星の進化モデルは結果の比較のために過去研究と同じものを用いたが,最新のモデルを用いても結果に大きな影響は無かった.また,惑星の検出効率の外挿の方法の違いにも敏感ではなかった.
またケプラーのサンプルから,きょしちょう座47 中の恒星質量と同じ質量範囲を持つものを抽出して解析した結果,期待される個数はわずか 2.2 (+1.6, -1.1) 個となった.そのため,サーベイで惑星が一個も発見されない可能性は ~ 15%の確率で有り得る.
どちらの数値も,球状星団とケプラーデータ中における惑星の population が異なるという主張について,これまで考えられていたよりも信頼度が低いということを示している.
Gilliland et al (2000) による否定的な結果は,これまでに得られている球状星団での惑星存在頻度への制約において,現在でも最も良いものである.また,きょしちょう座47 での巨大惑星は散在星に比べて稀少であることを示唆する結果であるが,この統計的有意性は低い.
我々は球状星団内での惑星形成の理解からは遠く,何が星団外の恒星での population から異なるものにしている可能性があるのかの理解からも遠い.より慎重な球状星団中での惑星探査が必要である.
arXiv:1703.06136
Masuda & Winn (2017)
Reassessment of the Null Result of the HST Search for Planets in 47 Tucanae
(きょしちょう座47 でのハッブル宇宙望遠鏡での惑星探査における否定的な結果の再評価)
概要
球状星団 47 Tucanae (きょしちょう座47) を対象にした,ハッブル宇宙望遠鏡によるトランジット惑星探査観測における否定的な結果についての再評価を行った.再評価に際しては,ケプラーミッションによる最新の系外惑星の存在頻度についての知識を考慮した.Gilliland et al. (2000) によると,きょしちょう座47 中には短周期ガス惑星が 17 個発見されると期待された.この推定は,きょしちょう座47 の恒星たちが,近傍の恒星で 1999 年までの系外惑星サーベイ結果を元にした,惑星の存在頻度および存在する惑星と同じ特性を持つという仮定の元に算出されていた.
ここではこの結果を,きょしちょう座47 の恒星とケプラーで観測された恒星は同じ惑星の population を持つと仮定してアップデートした.
その結果,きょしちょう座47 を観測した時に期待されるトランジット系外惑星の検出個数の改善された値は,4.0 (+1.7, -1.4) 個となった.また,ケプラーで検出された系外惑星のサンプルを,きょしちょう座47 で観測されたものと同じ恒星の質量範囲に限定して解析した場合は,期待される検出数は更に減って 2.2 (+1.6, -1.1) 個となった.そのため,ハッブル宇宙望遠鏡での否定的な結果は,これまで思われていたよりも統計的に有意ではない.きょしちょう座47 とケプラーで観測された恒星が同じ惑星の population を持つという極端な仮説も,2 - 3 σ より大きな有意性で排除できない.
この結果は,球状星団と散在星の惑星の population の比較をするには,より慎重な探査が必要であることを示す.
研究背景
球状星団きょしちょう座47 (Tucanae 47, NGC 104) の恒星に対するハッブル宇宙望遠鏡によるトランジットサーベイ (Gilliland et al. 2000) は,系外惑星検出の歴史の中のマイルストーンである.このサーベイは系外惑星の初めての宇宙空間からのサーベイであると同時に,球状星団の中での惑星の population の初めての探査でもある.このサーベイでは,連続 8.3 日間で計 34000 個の恒星の観測が行われた.トランジットする巨大惑星を検出するための十分な精度がある観測であったにも関わらず,一つも惑星は発見されなかった.そのため Gilliland et al. (2000) では,きょしちょう座47 でのホットジュピターは,太陽近傍星よりも少なくとも一桁は稀少であると結論付けた.
彼らの観測当時考えられていた系外惑星頻度や inject-and-recover テストと惑星頻度の推定に基づけば,もしきょしちょう座47 の恒星と散在星 (field stars) が同じ頻度でホットジュピターを持っているのであれば,このサーベイでは 17 個の惑星を検出しているはずだった.
今日では,この結果は驚くべきことではないとみなされるようになっている.球状星団内の恒星がホットジュピターを持つ確率は,星団外の近傍の恒星よりも低いだろうと考えるに足る多数の理由がある.
最も明確な理由は恒星の金属量である.太陽近傍星では,短周期巨大惑星の存在頻度は中心星の高い金属量と強く関連していることが分かっている (Santos et al. 2001, Fischer & Valenti 2005).また,きょしちょう座47 の恒星は金属量が [Fe/H] = -0.7 と低いこともこれを支持する (McWilliam & Bernstein 2008).
金属量の他にも考えられる理由はある.例えば,近傍の重い恒星からの輻射がある環境では,巨大惑星の形成と移動は阻害されるという仮説 (Armitage 2000など) や,球状星団内での惑星は恒星遭遇によって失われるというもの (Sigurdsson 1992など),その星団が,ホットジュピターが潮汐軌道崩壊を起こすには十分なほど年老いているというもの (Debes & Jackson 2010),または潮汐加熱と膨張により大気のロッシュローブオーバーフローを起こす (Gu et al. 2003) というものである.
これらの仮説は説得力があるものの,必ずしも正しいとは限らない.
例えば,恒星の金属量とホットジュピターの存在頻度の因果関係はまだ立証されていない.金属量それ自体は重要ではなく,近傍星での高い金属量と関連した別の要素が重要であるが,きょしちょう座47 の環境ではそうではない,ということも考えられる.
同様に,惑星が少ないことの全てを星団内での恒星遭遇の結果と考えるのも難しい.確かに恒星遭遇はいくつかの惑星系を破壊するが,高軌道離心率での軌道移動を介して,逆にホットジュピターの生成率を上げるかもしれない.
また,もしホットジュピターがその場形成するのであれば (Batygin et al. 2016),星団内での恒星遭遇は重要ではない.さらに,ホットジュピターの形成モードは球状星団に特有なものである可能性もある.
要するに,ホットジュピターの形成も球状星団の形成も十分には理解されていないため,明らかに見える仮説であっても観測的検証を行う必要がある.
Gilliland et al. (2000) による先進的なハッブル宇宙望遠鏡でのサーベイが行われていた時点では,トランジット惑星として知られていたのは HD 209458b のみである (Charbonneau et al. 2000, Henry et al. 2000).当然,観測で得られた否定的な結果を解釈する際は,Gilliland et al. (2000) ではこの惑星に似たホットジュピターを,近傍星のドップラーサーベイ結果から参照していた.15 年以上が経過し,当時よりも惑星の分布や存在確率に関する理解は進んでいる.そこで,過去の結果が正しいかどうかの検証を行った.
結果
ケプラーデータからの結果
解析手法の検証のため,サーベイで期待されるホットジュピターの検出個数 を過去の Gilliland et al. (2000) と同じ仮定を用いて算出した場合は 16.5 (+3.2, -3.1) 個であり,これは彼らの結果と概ね同じであった.ケプラーによって得られている全てのデータを用いた場合は,きょしちょう座47 中にサーベイで検出されることが期待されるホットジュピターの個数は 4.0 (+1.7, -1.4) 個となった,また,ケプラーでの低質量の恒星をピックアップして計算した場合は,さらに低く 2.2 (+1.6, -1.1) 個となった.
過去の推定と結果が異なる理由は,ケプラーの観測から算出されているホットジュピターの存在頻度が,過去の仮定より小さいことである.また,恒星質量の範囲を限定した場合は更に存在頻度が小さくなる.
その他の重要な要素は,系外惑星の検出可能性の典型的な値が,過去の研究での仮定より半分程度小さい値であることである.
視線速度サーベイデータからの結果
更に,視線速度法でのサーベイ (Wright et al. 2012) でのサンプルを使ったシミュレーションも行った.視線速度法による検出では,惑星の半径は不明な上に真の質量も不明である.そのため,惑星の軌道分布は一様と仮定し,Weiss et al. (2013) による惑星質量・半径・日射量の関係を用いた.その解析の結果,期待される検出個数は 15.2 (+7.1, -5.9) となった.これは,上記のケプラーによるデータに基づいた結果より大きい値である.また Gilliland et al. (2000) の値と近い.これは,視線速度サーベイでのホットジュピター存在頻度が高いことが主な原因である.また,いくらか高い検出効率からの寄与も小さいながらある.
視線速度サーベイをベースにした結果は,ケプラーデータをベースにした結果よりも統計的不確実性が大きい.
また,ケプラーデータをベースにした結果に重きを置くべきいくつかの理由がある.
例えば,視線速度での系外惑星サンプルは,もともと対象として選択された恒星から,外部に公開されていない理由での事後評価に基づいた恒星サンプルで構成されている.Mayor et al. (2011) は同様の恒星に対する視線速度観測をベースにした独立した解析を行い,822 の恒星中に 5 個のホットジュピターを発見している.これにより,惑星の存在頻度として 0.6 (+0.3, -0.2)%という値を与えた.これは Wright et al. (2012) で報告されている値の半分であり,またケプラーに基づいた結果の 1 σ 以内に入る.Mayor et al. (2011) の表 1 では,より高い値である 0.89%を報告しているが,これは 0.16 木星質量よりも小さい質量の惑星を個数に含んでおり,また惑星の軌道周期が 10 日ではなく 11 日未満のものを個数に含んでいる.ここで恣意的に軌道周期 11 日が選ばれた理由は不明であり,事後評価のサンプルの解析を難しくしている要因である.
金属量との関連性
観測から,ホットジュピターの存在頻度と恒星の金属量は強く関係していることが示されている.しかし,今回参照可能なデータでは金属量については議論できない.きょしちょう座47 の恒星の金属量は [Fe/H] = -0.7 程度である,ケプラーで観測した恒星サンプルでは,金属量は平均で [Fe/H] = 0 である (Dong et al. 2004など).ケプラーデータ中には信頼できる金属量データがあるサンプル数が少ないことと,またケプラーのサンプルには低金属量の恒星をあまり含まないことから,ケプラーサンプルから低金属量の恒星を抽出するのは難しい.
金属量と惑星存在頻度の関連性から簡単な議論を行う.
検出が期待できる惑星の個数が 2.2 個という値は,ゼロとはわずかに非整合であるにすぎない.低い金属量は,期待される検出個数を更に減らす.たとえば Johnson et al. (2010) では巨大惑星の存在頻度を 101.2[Fe/H] とスケーリングした.この場合,平均の期待される検出個数は [Fe/H] = -0.29 の時に 1 個を下回る.
また,Schlaufman (2014) ではさらに強い依存性を主張しており,102.3[Fe/H] とした.この関係性を用いれば, [Fe/H] = -0.15 程度で 1 個を下回る.
なお,恒星の進化モデルは結果の比較のために過去研究と同じものを用いたが,最新のモデルを用いても結果に大きな影響は無かった.また,惑星の検出効率の外挿の方法の違いにも敏感ではなかった.
結論
ケプラーで観測した恒星と,きょしちょう座47 中の恒星が同じ惑星の population を持っている (巨大惑星の存在頻度,半径と周期の分布において) という仮説を検証した.その結果,きょしちょう座47 で検出されているべきトランジット惑星の個数は 4.0 (+1.7, -1.4) 個となった.従って,この仮説は ~ 3 σ の水準においてしか否定されない.またケプラーのサンプルから,きょしちょう座47 中の恒星質量と同じ質量範囲を持つものを抽出して解析した結果,期待される個数はわずか 2.2 (+1.6, -1.1) 個となった.そのため,サーベイで惑星が一個も発見されない可能性は ~ 15%の確率で有り得る.
どちらの数値も,球状星団とケプラーデータ中における惑星の population が異なるという主張について,これまで考えられていたよりも信頼度が低いということを示している.
Gilliland et al (2000) による否定的な結果は,これまでに得られている球状星団での惑星存在頻度への制約において,現在でも最も良いものである.また,きょしちょう座47 での巨大惑星は散在星に比べて稀少であることを示唆する結果であるが,この統計的有意性は低い.
我々は球状星団内での惑星形成の理解からは遠く,何が星団外の恒星での population から異なるものにしている可能性があるのかの理解からも遠い.より慎重な球状星団中での惑星探査が必要である.
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