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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1703.06716
Chen et al. (2017)
The GTC exoplanet transit spectroscopy survey. VII. Detection of sodium in WASP-52b's cloudy atmosphere
(GTC 系外惑星トランジット分光サーベイ VII:WASP-52b の雲の多い大気中のナトリウムの検出)
今回観測した波長の範囲内では,大気透過スペクトルは平坦で特徴に欠けていた.しかし,ナトリウムの doublet の波長では有意な細い吸収の特徴が見られた.この特徴は,1 mbar の高度に雲を持つ,太陽組成の大気によって説明できる.スペクトルより,雲を持たない大気である可能性は強く排除された.
異なる波長ビン幅でのナトリウムの吸収深さの解析から,大気圧力水準が低い方へ向かって (※つまり上空へ向かって) 温度が上昇している事が示唆される.観測範囲内の温度勾配は正の値である 0.88 ± 0.65 K km-1 であった.これは,高層大気加熱と温度逆転層の存在を示唆している可能性がある.
近年は地上からの観測でも,ナトリウムとカリウムの確実な検出と,暫定的な吸収線の形状の分析も可能である事が示されている.
ここではこれまでの観測例に加え,さらに WASP-52b 大気中からのナトリウムの検出を報告する.この惑星は K2 型矮星を 1.75 日周期で公転しており,トランジット法で検出された惑星である (Hebrard et al. 2013).質量は 0.43 木星質量,半径 1.25 木星半径と低密度の惑星で (Mancini et al. 2017) 大きく膨張した半径を持っている.そのため,大気の透過光分光観測に適した対象である.
また,スペクトル線の形状から大気の温度構造を推定した.その結果,上空へ向かって温度が上昇しており,温度勾配は 0.88 ± 0.65 K km-1 と推定された.これは HD 209458b (Vidal-Madjar et al. 2011) や HD 189733b (Huitson et al. 2012など),WASP-49b (Wyttenbach et al. 2017) で見られている構造と似た傾向である.この結果は,高層大気加熱と大気散逸過程を示唆するかもしれない (Lammer et al. 2003など).
またこれは,WASP-52b は蒸発している惑星の候補である可能性も示唆している (Vidal-Madjar et al. 2003など).
しかし Huitson et al. (2012) で指摘されているように,ラインの分布は,分解されていないスペクトル線の周りでバンド幅を増加させる場合の希釈効果によって損なわれる可能性がある.そのためさらなる高分解能の将来観測が,この結果を確認するために必要であると考えられる.
arXiv:1703.06716
Chen et al. (2017)
The GTC exoplanet transit spectroscopy survey. VII. Detection of sodium in WASP-52b's cloudy atmosphere
(GTC 系外惑星トランジット分光サーベイ VII:WASP-52b の雲の多い大気中のナトリウムの検出)
概要
ホットジュピター WASP-52b の大気中におけるナトリウムの吸収の初めての検出を報告する.観測には,Gran Telescopio Canarias (GTC) の 10.4 m 望遠鏡にある Optical System for Imaging and low-Intermediate Resolution Integrated Spectroscopy (OSIRIS) を用い,低分解能トランジット分光観測を行った.観測波長域は 522 nm - 903 nm である今回観測した波長の範囲内では,大気透過スペクトルは平坦で特徴に欠けていた.しかし,ナトリウムの doublet の波長では有意な細い吸収の特徴が見られた.この特徴は,1 mbar の高度に雲を持つ,太陽組成の大気によって説明できる.スペクトルより,雲を持たない大気である可能性は強く排除された.
異なる波長ビン幅でのナトリウムの吸収深さの解析から,大気圧力水準が低い方へ向かって (※つまり上空へ向かって) 温度が上昇している事が示唆される.観測範囲内の温度勾配は正の値である 0.88 ± 0.65 K km-1 であった.これは,高層大気加熱と温度逆転層の存在を示唆している可能性がある.
観測の背景
ナトリウムとカリウムは,系外惑星大気の特徴付けにおいて,可視光領域での重要な吸収源である (Seager & Sasselov 2000).これまでに 10 個程度の高温のガス惑星 (960 - 1740 K) の大気中から,ナトリウムやカリウムが検出されている (Charbonneau et al. 2002など).近年は地上からの観測でも,ナトリウムとカリウムの確実な検出と,暫定的な吸収線の形状の分析も可能である事が示されている.
ここではこれまでの観測例に加え,さらに WASP-52b 大気中からのナトリウムの検出を報告する.この惑星は K2 型矮星を 1.75 日周期で公転しており,トランジット法で検出された惑星である (Hebrard et al. 2013).質量は 0.43 木星質量,半径 1.25 木星半径と低密度の惑星で (Mancini et al. 2017) 大きく膨張した半径を持っている.そのため,大気の透過光分光観測に適した対象である.
結果
スペクトルの解析の結果,大部分の波長域では特徴に欠けた平坦なスペクトルであった.しかしナトリウムのスペクトル部分は有意に大きな吸収が検出された.この特徴は,太陽組成で,1 mbar の高度に雲を持つ大気であると考えると解釈可能である.また,スペクトル線の形状から大気の温度構造を推定した.その結果,上空へ向かって温度が上昇しており,温度勾配は 0.88 ± 0.65 K km-1 と推定された.これは HD 209458b (Vidal-Madjar et al. 2011) や HD 189733b (Huitson et al. 2012など),WASP-49b (Wyttenbach et al. 2017) で見られている構造と似た傾向である.この結果は,高層大気加熱と大気散逸過程を示唆するかもしれない (Lammer et al. 2003など).
またこれは,WASP-52b は蒸発している惑星の候補である可能性も示唆している (Vidal-Madjar et al. 2003など).
しかし Huitson et al. (2012) で指摘されているように,ラインの分布は,分解されていないスペクトル線の周りでバンド幅を増加させる場合の希釈効果によって損なわれる可能性がある.そのためさらなる高分解能の将来観測が,この結果を確認するために必要であると考えられる.
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