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前の記事を書いていたときにちょっと気になったので、太陽類似星のクラス分けについてメモ。




昔は観測の精度もそこまで高くなかったため、太陽に似ている恒星、という大雑把な分類しかなかった。
その後観測精度が向上したことによって恒星のより詳細な物理量を観測できるようになり、太陽にどの程度類似しているかという分類も精密な条件になっていった。
そのため太陽類似星のクラス分けは、観測技術の発展を反映していると解釈することが出来る。

太陽類似星のクラス分けとしては、大まかに太陽に似ているソーラータイプ (solar-type)、より類似度の高いソーラーアナログ (solar analog)、さらに類似しているソーラーツイン (solar twin)がある。

(…この語に対応する日本語訳は特に無さそう。直訳で付けるのであればそれぞれ、太陽型星、太陽類似星、太陽双子星みたいな感じだろうか?3つ目がイマイチな気がするけど…)

ソーラータイプ

ソーラータイプは、大雑把に太陽に類似している恒星のことを指す。

ソーラータイプの条件は、
・B-V色指数が 0.48 - 0.80の値にある
というもの。
太陽のB-V色指数は0.65である。

天体の色を定量的に評価する指標として色指数 (color index)というものがあり、青色(Bバンド)をよく透過させるフィルターでの等級と、緑〜黄の可視光(Vバンド)をよく透過させるフィルターでの等級の差を取ったものがB-V色指数となる。
恒星の場合はB-V色指数を用いることが多いが、その他にも紫外線領域のUバンド、赤色領域のRバンド、近赤外領域のIバンドがあり、状況に応じてそれぞれの差分を参照することがある。

色指数ではなくスペクトル型によって分類することもあり、その場合のソーラータイプの条件は
・スペクトル型がF8VからK2Vまでである
というもの。
これはB-V色指数に焼き直すと、おおむね 0.5 - 1.0に相当する。
この基準では、スペクトル型がF, G, Kの恒星は概ねソーラータイプであるとも言える。
なお太陽のスペクトル型はG2Vである。

ソーラータイプの恒星は、自転周期と彩層活動、およびコロナ活動の間に強い相関を示す。
ソーラータイプの恒星は主系列段階を通じて磁気制動 (magnetic braking)によって自転が減速されるため、これらの相関から恒星の年齢の大まかな推定が出来る。
彩層活動の観測にはカルシウムの輝線の観測、コロナ活動にはX線の放射が主に用いられる。

ソーラーアナログ

ソーラーアナログは、ソーラータイプの恒星の中でもより太陽に近いものを指す。
測光的に太陽に類似している恒星がこのカテゴリに属する。

ソーラーアナログの条件は、
・表面温度が太陽の表面温度(~ 5778 K)の ±500 Kである
・金属量(metalicity)が太陽の 50% - 200%である
・軌道周期が10日程度以下の近接した伴星が存在しない
というものである。

2つ目の条件である金属量については、[Fe/H]の単位で言うと、± 0.3 dexに収まっているものという意味に等しい。
[Fe/H]は太陽の金属量を基準にした量であり、太陽の値は 0.0 dexである。
なお、[Fe/H]の単位として"dex"がしばしば使用されるが、これは"decimal exponent" (10進指数)から来ている。

この金属量の制約は、原始惑星系円盤内で惑星が形成されるためのダストの存在量の条件から来ている。
太陽に類似していると言う以上は、星形成時に太陽系のような惑星系を形成するだけの重元素成分を持っていて然るべき、という意味の条件なのだろう(おそらく)。

また、3つ目の条件は、この程度の近接した短周期の伴星は中心星の活動を刺激することから来ている。

従ってソーラーアナログは、近接した伴星を持たず、太陽系のような惑星系を形成するのに十分な金属量を持ち、表面温度が太陽にそこそこ近い恒星、ということになる。

ソーラーツイン

ソーラーツインは、ソーラーアナログの恒星の中でさらに極めて太陽に似ている恒星のことを指す。
恒星の様々な物理量が本質的に太陽に近いものがこのカテゴリに属する。

ソーラーツインの条件は、
・表面温度が太陽の表面温度(~ 5778 K)の ±50 Kである
・金属量(metalicity)が太陽の 89% - 112%である
・伴星を持たない
・年齢が太陽年齢(~ 46億年)の ± 10億年である
というものであり、さらに厳しい条件となっている。

恒星のスペクトル型は表面温度に概ね対応しているため、表面温度が太陽の ±50 Kの恒星のスペクトル型は必然的に G型となる。

2つ目の条件である金属量については、[Fe/H]の単位で言うと、± 0.05 dexに収まっているものという意味に等しい。
この金属量に関する制約も先程と同様に、惑星形成に必要な重元素の量から来ており、さらに制限が厳しくなっている。

また3つ目の条件は、太陽自身が単独星であることによる。


ソーラーツインの恒星の代表例としては、さそり座18番星が挙げられる。
この恒星はソーラーツインの条件をすべて満たした非常に太陽に類似している恒星である。
ただしリチウムの存在量は太陽とは大きく異なっており(太陽よりもずっと多い)、完全に"双子"の恒星ではない。

ソーラーツインのうち、現段階で最も太陽に近いと考えられている恒星はHIP 56948であり、こちらはリチウム存在量も類似していると考えられている(太陽よりやや多い)。

なお、近年の太陽に類似した恒星の観測からは、太陽類似星の中でも太陽はリチウムの存在量が特に少ないということが示唆されている。
また同時に、太陽類似星の中では活動度も低く、自転周期も遅いことが判明している。
そのため、同じ程度のパラメータを持つ恒星の中で、太陽は普遍的な恒星ではなく特異な存在であるという可能性が指摘されている。

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