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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1705.07810
Matsumoto & Kokubo (2017)
Formation of Close-in Super-Earths by Giant Impacts: Effects of Initial Eccentricities and Inclinations of Protoplanets
(巨大衝突による近接スーパーアースの形成:原始惑星の初期離心率と傾斜角の影響)
近接スーパーアースが現在の位置で形成されたとする,その場形成シナリオ (in-situ formation) では,現在の惑星の軌道離心率と軌道傾斜角は,巨大衝突段階における原始惑星同士の重力的散乱と衝突によって決まる.ここでは,近接スーパーアースの形成に関して,原始惑星の初期の軌道離心率と軌道傾斜角の影響について調べた.
ガス無し円盤での原始惑星の N 体シミュレーションを行い,初期の軌道離心率と軌道傾斜角を系統的に変更してその影響を調べた.その結果,原始惑星の進化の過程で軌道離心率はよく緩和されるが,軌道傾斜角はそうではないことが判明した.
初期の軌道傾斜角が小さい場合,重力散乱があまり効果的でなく,原始惑星の衝突は軌道交差の後にすぐ発生するため,軌道傾斜角はあまり上昇しない.それに対して,初期の傾斜角が大きい場合は,衝突減衰が効果的ではないため軌道傾斜角は大きい値のまま保たれる傾向にある.
最終的に形成される惑星の軌道傾斜角だけではなく,それらの数・軌道離心率・角運動量欠損 (angular momentun deficit) と軌道間隔も,初期の原始惑星の軌道傾斜角に影響される.
大部分のスーパーアースは 0.3 AU 以内に分布している.これらの軌道の配置について,1 次の尽数関係となっている軌道長半径周辺にはいくらかの超過は見られるものの,多くのスーパーアースは通常は平均運動共鳴に入っていないことが分かっている (Lussauer et al. 2011など).
視線速度で観測されているスーパーアースは,軌道離心率が e ≦ 0.4 である.ケプラーミッションで発見されたスーパーアースの軌道離心率は小さく,0.01 - 0.1 (Fabrycky et al. 2014など) である.
惑星系が複数のトランジット惑星を持っている場合は,各惑星の相互軌道傾斜角が推定できる.ケプラーで検出されているトランジット系での相互軌道傾斜角は,0.017 rad < 0.039 rad (Favrycky et al. 2014) である.
これまでの,軌道要素の分布について多くの理論的研究が行われてきた.しかし離心率と傾斜角が力学的にどのように決定されるのかは未解決の問題である.巨大衝突段階では,原始惑星の軌道離心率は,ガスがない環境における重力散乱と原始惑星同士の衝突で進化する.
衝突による離心率進化は Matsumoto et al. (2015) によって調べられた.近接原始惑星は,軌道交差が起きた後すぐに衝突を起こす.この時の軌道離心率は,軌道交差に必要な程度の大きさで,衝突する原始惑星の近星点はお互いに反対の方向である.この近接接近によって接触離心率は escape eccentricity (脱出速度/ケプラー速度) 程度にまで上昇する.これらの軌道離心率は衝突の結果減衰される.これはランダム速度 (中心平面での円軌道との相対速度,~ √(e2+i2))vK) が,近星点が反対であることによって打ち消されることが要因である.
最終的な惑星は,表面脱出速度よりも小さいランダム速度を持つ.また,軌道離心率の減衰率は初期の原始惑星の軌道離心率に依存する.これは,最終的な惑星のランダム速度も初期の原始惑星のランダム速度に影響を受けることを示唆している.
Kokubo & Ida (2007) や Dawson et al. (2016) では,巨大衝突で形成される惑星の基本的な性質が,初期の原始惑星の離心率と傾斜角から受ける影響を調べた.
Kokubo & Ida (2007) では,離心率と傾斜角に分散 0.01 のレイリー分布を与えてシミュレーションを行っている.この初期条件の範囲内では,離心率と傾斜角は巨大衝突段階でよく緩和されるため惑星の基本的な性質にはわずかしか影響しないと結論づけている.しかしこの研究では,初期の離心率と傾斜角の範囲が限定的であり,かつ軌道長半径は 1 AU 周辺についての研究であった.
初期の離心率と傾斜角が形成される惑星への影響は研究されているが,重力散乱と衝突による軌道進化の基本的な過程は明らかではない.また傾斜角の減衰率は離心率の減衰率とは異なる.これは,衝突は軌道離心率が 0.5Δa/a (Δa は軌道間隔) よりも大きい時に起き,傾斜角とは独立であることが理由である.
arXiv:1705.07810
Matsumoto & Kokubo (2017)
Formation of Close-in Super-Earths by Giant Impacts: Effects of Initial Eccentricities and Inclinations of Protoplanets
(巨大衝突による近接スーパーアースの形成:原始惑星の初期離心率と傾斜角の影響)
概要
最近の観測では,近接スーパーアースの軌道離心率と軌道傾斜角の分布が明らかになっている.これらの分布は,スーパーアースの形成過程に制約を与える可能性を持っている.近接スーパーアースが現在の位置で形成されたとする,その場形成シナリオ (in-situ formation) では,現在の惑星の軌道離心率と軌道傾斜角は,巨大衝突段階における原始惑星同士の重力的散乱と衝突によって決まる.ここでは,近接スーパーアースの形成に関して,原始惑星の初期の軌道離心率と軌道傾斜角の影響について調べた.
ガス無し円盤での原始惑星の N 体シミュレーションを行い,初期の軌道離心率と軌道傾斜角を系統的に変更してその影響を調べた.その結果,原始惑星の進化の過程で軌道離心率はよく緩和されるが,軌道傾斜角はそうではないことが判明した.
初期の軌道傾斜角が小さい場合,重力散乱があまり効果的でなく,原始惑星の衝突は軌道交差の後にすぐ発生するため,軌道傾斜角はあまり上昇しない.それに対して,初期の傾斜角が大きい場合は,衝突減衰が効果的ではないため軌道傾斜角は大きい値のまま保たれる傾向にある.
最終的に形成される惑星の軌道傾斜角だけではなく,それらの数・軌道離心率・角運動量欠損 (angular momentun deficit) と軌道間隔も,初期の原始惑星の軌道傾斜角に影響される.
研究背景
ここでの "スーパーアース" とは,30 地球質量程度以下,または 6 地球半径程度以下のものを指す.大部分のスーパーアースは 0.3 AU 以内に分布している.これらの軌道の配置について,1 次の尽数関係となっている軌道長半径周辺にはいくらかの超過は見られるものの,多くのスーパーアースは通常は平均運動共鳴に入っていないことが分かっている (Lussauer et al. 2011など).
視線速度で観測されているスーパーアースは,軌道離心率が e ≦ 0.4 である.ケプラーミッションで発見されたスーパーアースの軌道離心率は小さく,0.01 - 0.1 (Fabrycky et al. 2014など) である.
惑星系が複数のトランジット惑星を持っている場合は,各惑星の相互軌道傾斜角が推定できる.ケプラーで検出されているトランジット系での相互軌道傾斜角は,0.017 rad < 0.039 rad (Favrycky et al. 2014) である.
これまでの,軌道要素の分布について多くの理論的研究が行われてきた.しかし離心率と傾斜角が力学的にどのように決定されるのかは未解決の問題である.巨大衝突段階では,原始惑星の軌道離心率は,ガスがない環境における重力散乱と原始惑星同士の衝突で進化する.
衝突による離心率進化は Matsumoto et al. (2015) によって調べられた.近接原始惑星は,軌道交差が起きた後すぐに衝突を起こす.この時の軌道離心率は,軌道交差に必要な程度の大きさで,衝突する原始惑星の近星点はお互いに反対の方向である.この近接接近によって接触離心率は escape eccentricity (脱出速度/ケプラー速度) 程度にまで上昇する.これらの軌道離心率は衝突の結果減衰される.これはランダム速度 (中心平面での円軌道との相対速度,~ √(e2+i2))vK) が,近星点が反対であることによって打ち消されることが要因である.
最終的な惑星は,表面脱出速度よりも小さいランダム速度を持つ.また,軌道離心率の減衰率は初期の原始惑星の軌道離心率に依存する.これは,最終的な惑星のランダム速度も初期の原始惑星のランダム速度に影響を受けることを示唆している.
Kokubo & Ida (2007) や Dawson et al. (2016) では,巨大衝突で形成される惑星の基本的な性質が,初期の原始惑星の離心率と傾斜角から受ける影響を調べた.
Kokubo & Ida (2007) では,離心率と傾斜角に分散 0.01 のレイリー分布を与えてシミュレーションを行っている.この初期条件の範囲内では,離心率と傾斜角は巨大衝突段階でよく緩和されるため惑星の基本的な性質にはわずかしか影響しないと結論づけている.しかしこの研究では,初期の離心率と傾斜角の範囲が限定的であり,かつ軌道長半径は 1 AU 周辺についての研究であった.
初期の離心率と傾斜角が形成される惑星への影響は研究されているが,重力散乱と衝突による軌道進化の基本的な過程は明らかではない.また傾斜角の減衰率は離心率の減衰率とは異なる.これは,衝突は軌道離心率が 0.5Δa/a (Δa は軌道間隔) よりも大きい時に起き,傾斜角とは独立であることが理由である.
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