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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1706.03789
Cai et al. (2017)
Stability of Multiplanetary Systems in Star Clusters
(星団中の複数惑星系の安定性)
4 つの惑星系モデルを,恒星数が 2000, 8000, 32000 個の異なる星団環境のもとでシミュレーションを行った.惑星系に関しては,中心星は ~ 1 太陽質量の太陽型星とし,50 Myr に渡って進化させた.
その結果,原始惑星系円盤の散逸の後,外部からの擾乱と惑星-惑星相互作用は,惑星系を不安定化させる 2 つの駆動機構であることが分かった.
惑星の生存率は,恒星数が 2000 個の星団では ~ 95%,恒星数が 32000 個の星団での ~ 60%と恒星数によって変化する.従って多くの惑星系は,低質量の星団では星団の中心部を除けば生き残ることが出来る.
また,恒星の近接遭遇による惑星の系からの弾き出しは累積的な過程であり,一度の遭遇で惑星の軌道離心率が 0.5 以上励起できるような十分強い近接遭遇は,全ての近接遭遇のうち ~ 3%のみであった.
短周期惑星は,長周期惑星との軌道交差によって擾乱を受ける.惑星-惑星相互作用を考慮に入れると,系からの惑星の射出率はおおよそ 2 倍になる.また,惑星が複数存在することは惑星系の脆弱性を大きくする.
それぞれの計算設定において,惑星の ~ 0.2%は恒星相互作用のランダムな影響によって逆行軌道を持つようになる.
今回の結果から,若い低質量の星団は次世代の惑星探査対象として適していると考えられる.しかし,47 Tuc (きょしちょう座47) のような高密度の球場星団では,惑星検出率の検出率が低いことが推定される.しかし,恒星の個数密度が大きい環境では惑星は短い軌道周期を持ちやすいため,検出可能性は大きくなるだろう.
惑星系は,AU スケールの大きさを持つ数天体の系であり,星団はパーセクスケールで多数の天体が存在する系である.惑星の軌道周期は数時間から数百年だが,一方で星団の横断時間 (crossing time) は典型的には ~ Myr のオーダーである.
惑星系のシミュレーションでは一般的に,相対エネルギー誤差が 10-10 程度以下であれば十分だとされているが,星団のシミュレーションではこの条件は一般に 10-5 まで緩くなる.
もし恒星が惑星を 1 個だけ持つのであれば,惑星を低質量の伴星とみなして,正則化法で積分することができる (Kustaanheimo & Stiefel 1965).しかしこの手法は,星団中にある複数惑星系を取り扱う場合は不十分である.そのため,それぞれの系について適した手法を用いて力学問題を解く必要がある.
ここでは,惑星系の積分には rebound (Rein & Liu 2012) を IAS15 アルゴリズム (Rein & Spiegel 2015) を用いて使用した.これは,近接遭遇を取り扱うのに最適化されている手法である.また,星団の計算には NBODY6++GPU パッケージ (4 次のエルミート法を使用) を用いた.目標の惑星系への擾乱は,NBODY6++GPU コードで得た恒星の位置に従って計算している.
arXiv:1706.03789
Cai et al. (2017)
Stability of Multiplanetary Systems in Star Clusters
(星団中の複数惑星系の安定性)
概要
多くの恒星は,星団か恒星アソシエーションの中で形成される.しかし,これまでに知られている系外惑星のうち,それらの環境の中に見つかっているのは ~ 1%に過ぎない.ここでは,惑星系の力学的進化における星団中の環境の影響を理解するため,N 体の直接数値計算を行った.4 つの惑星系モデルを,恒星数が 2000, 8000, 32000 個の異なる星団環境のもとでシミュレーションを行った.惑星系に関しては,中心星は ~ 1 太陽質量の太陽型星とし,50 Myr に渡って進化させた.
その結果,原始惑星系円盤の散逸の後,外部からの擾乱と惑星-惑星相互作用は,惑星系を不安定化させる 2 つの駆動機構であることが分かった.
惑星の生存率は,恒星数が 2000 個の星団では ~ 95%,恒星数が 32000 個の星団での ~ 60%と恒星数によって変化する.従って多くの惑星系は,低質量の星団では星団の中心部を除けば生き残ることが出来る.
また,恒星の近接遭遇による惑星の系からの弾き出しは累積的な過程であり,一度の遭遇で惑星の軌道離心率が 0.5 以上励起できるような十分強い近接遭遇は,全ての近接遭遇のうち ~ 3%のみであった.
短周期惑星は,長周期惑星との軌道交差によって擾乱を受ける.惑星-惑星相互作用を考慮に入れると,系からの惑星の射出率はおおよそ 2 倍になる.また,惑星が複数存在することは惑星系の脆弱性を大きくする.
それぞれの計算設定において,惑星の ~ 0.2%は恒星相互作用のランダムな影響によって逆行軌道を持つようになる.
今回の結果から,若い低質量の星団は次世代の惑星探査対象として適していると考えられる.しかし,47 Tuc (きょしちょう座47) のような高密度の球場星団では,惑星検出率の検出率が低いことが推定される.しかし,恒星の個数密度が大きい環境では惑星は短い軌道周期を持ちやすいため,検出可能性は大きくなるだろう.
計算手法など
惑星系と星団は非常に異なる力学系である.惑星系は,AU スケールの大きさを持つ数天体の系であり,星団はパーセクスケールで多数の天体が存在する系である.惑星の軌道周期は数時間から数百年だが,一方で星団の横断時間 (crossing time) は典型的には ~ Myr のオーダーである.
惑星系のシミュレーションでは一般的に,相対エネルギー誤差が 10-10 程度以下であれば十分だとされているが,星団のシミュレーションではこの条件は一般に 10-5 まで緩くなる.
もし恒星が惑星を 1 個だけ持つのであれば,惑星を低質量の伴星とみなして,正則化法で積分することができる (Kustaanheimo & Stiefel 1965).しかしこの手法は,星団中にある複数惑星系を取り扱う場合は不十分である.そのため,それぞれの系について適した手法を用いて力学問題を解く必要がある.
ここでは,惑星系の積分には rebound (Rein & Liu 2012) を IAS15 アルゴリズム (Rein & Spiegel 2015) を用いて使用した.これは,近接遭遇を取り扱うのに最適化されている手法である.また,星団の計算には NBODY6++GPU パッケージ (4 次のエルミート法を使用) を用いた.目標の惑星系への擾乱は,NBODY6++GPU コードで得た恒星の位置に従って計算している.
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