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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1706.04232
Kammer et al. (2017)
New Horizons Upper Limits on O2 in Pluto's Present Day Atmosphere
(冥王星の現在の大気における酸素分子のニューホライズンによる上限)

概要

67P/Churyumov-Gerasimenko 彗星 (チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星) のコマから,探査機ロゼッタによって酸素分子が発見されたこと (Bieler et al. 2015) は驚くべき結果であった.この発見が,カイパーベルト天体である冥王星の大気中での酸素探査のモチベーションとなった.これは,酸素分子は冥王星の表面温度でも依然として揮発性物質として存在できるからである.

2015 年 7 月の冥王星探査機ニューホライズンズのフライバイの間に,探査機は様々な観測から冥王星の大気の組成を探査した.この観測には,Alice UV 分光器を用いた,紫外線での太陽掩蔽観測も含む (Stern et al. 2015, Gladstone et al. 2016, Young et al. 2017).
これらの報告で記述されているように,冥王星大気中での分子種による吸収からは,窒素分子が検出されている.また,CH4,C2H2,C2H4,C2H6 といった炭化水素種も検出されている.

ここでは,これらのデータから酸素分子の紫外線での吸収が無いか解析を行った.酸素分子は Alice 分光器のバンドパス内で大きな断面積を持つ.

解析の結果,冥王星大気中から酸素分子の吸収の証拠は検出されなかった.このことから,冥王星大気中の酸素分子の存在度への上限値を,鉛直方向の高さ 700 km までの範囲で高度の関数として与えた.大気の大部分において,視線方向の上限値は ~ 3 × 1015 cm-2 であった.この値は,酸素分子の混合比が 10-6 - 10-4 であることに対応している.
この値はチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星での値より遥かに低い (5 分の 1 〜 50 分の 1)


この解析結果を元に,冥王星大気中に酸素分子が少ない理由について考察した.

1 つ目は,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は冥王星を形成したような物質の典型的な例ではないという可能性である.

あるいは,冥王星は初期の酸素分子の量としてはチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星と似た量を含んでいるが,現在の大気中には検知可能な量としては見つからない,という可能性である.つまり,かつては大気中に存在したものの,現在は惑星の内部に隔離されていて検出できないというものである.

さらにその他の可能性として,冥王星内における酸素分子は,酸素を含む別の分子種に化学的に変換されているというものがある.この分子種には例えば H2O,CO,CO2 などがある.あるいは金属元素と化合している可能性もある.

冥王星とチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星では質量が 109 倍異なり,お互いの熱的進化と化学進化は大きく異なることが予想されるため.さらなる観測が必要である.
具体的には,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星での酸素分子の存在度が,カイパーベルト起源の彗星全体としてどれだけ典型的なのかを決定する必要がある.Keeny et al. (2017) では,チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の酸素分子は,遠紫外線の波長での恒星掩蔽観測でも検出できることを示している.これにより,将来的なハッブル宇宙望遠鏡や同様の将来観測装置によってこの問題に取り組める可能性が拓ける.

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