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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.01534
Piskorz et al. (2017)
Detection of Water Vapor in the Thermal Spectrum of the Non-Transiting Hot Jupiter upsilon Andromedae b
(トランジットしないホットジュピターアンドロメダ座ウプシロン星b の熱放射スペクトル中の水蒸気の検出)

概要

アンドロメダ座ウプシロン星 (upsilon Andromedae, ups And) は,主系列星の周りに複数の系外惑星が存在することが初めて確認された系である.ここでは,最も内側の非トランジット惑星アンドロメダ座ウプシロン星b (ups And b) の大気から,水蒸気を検出をしたことを報告する.

検出のために,中心星と惑星系を分光連星とみなし,地上からの高分散分光観測を行った.その結果,惑星の公転運動によるシグナルを分解した.また,観測結果の解析から,この非トランジット惑星の質量と軌道傾斜角の縮退を解いた.

合計して,Keck NIRSPEC L バンドで 7 回,Keck NIRSPEC 短波長 K バンドで 3 回,Keck NIRSPEC 長波長 K バンド観測を 3 回行った.観測結果と大気モデルを合わせ,全てのデータセットの複数観測回の相互相関を調べた.

解析の結果,視線方向に射影したケプラー回転速度,アンドロメダ座ウプシロン星b の真の質量 (1.7 木星質量),軌道傾斜角 (24度) が測定できた.また,惑星大気の不透明度の構造は,今回観測に用いた波長帯においては,水蒸気が主要な寄与をしていると判断した

この観測から得られた軌道要素を用いてアンドロメダ座ウプシロン星系の惑星の力学的シミュレーションを行った結果,長期間に渡って安定な軌道配置 (~ 100 Myr) がある事が分かった.

アンドロメダ座ウプシロン星系について

アンドロメダ座ウプシロン星の周りに系外惑星が発見されたのは 1997 年で,視線速度法によって検出された (Butler et al. 1997).その後の 2 年間のさらなる観測で,さらに 2 つの惑星が発見され,アンドロメダ座ウプシロン星は,主系列星の周りに初めて複数惑星が発見された系になった (Butler et al. 1999).

中心星のアンドロメダ座ウプシロン星A (ups And A) は F 型星である.またアンドロメダ座ウプシロン星b (ups And b) は,最小質量が 0.71 木星質量,軌道周期 4.617 日のホットジュピター,アンドロメダ座ウプシロン星c (ups And c) は,最小質量が 2.11 木星質量,軌道周期 241.2 日,軌道離心率が 0.18 の巨大ガス惑星,アンドロメダ座ウプシロン星d (ups And d) は最小質量 4.61 木星質量,軌道周期 1266.6 日,軌道離心率 0.41 の同じく巨大ガス惑星である.

さらに 2002 年には,赤色矮星の伴星アンドロメダ座ウプシロン星B (ups And B) が,アンドロメダ座ウプシロン星A からの射影距離 750 AU の位置に発見された.なおこの伴星は,発見済みの惑星の視線速度変動には無視できるほどの影響しか無いことも示されている (Lowrance et al. 2002).

この独特な系の起源や安定性についてはいろいろな議論がある.Adams & Laughlin (2006) は,アンドロメダ座ウプシロン星b の短い軌道周期と小さい軌道離心率を説明するためには,一般相対論の効果を考慮する必要があると指摘した.もし一般相対論効果が無ければ,アンドロメダ座ウプシロン星b はゆっくりと歳差運動をし,軌道離心率は外側の重い惑星によって上昇させられる.

この系内の惑星の相互軌道離心率によっては,アンドロメダ座ウプシロン星b の軌道周期が短い原因として Kozai-Lidov 機構が働いた可能性があるが (Nagasawa et al. 2008),一方で Lissaeur & Rivera (2001) は現在の アンドロメダ座ウプシロン星b の運動は,外側の 2 惑星とは分離されていることを示唆した.


この系に関する情報が不足しているため,上記の議論の多くは,視線速度で得られた各惑星の最小質量を真の質量とみなして考えていた.しかし実際の系の起源と安定性を解釈するためには,これらの惑星の真の質量と軌道傾斜角の決定が必要である.

スピッツァー宇宙望遠鏡による 24 µm 波長での 5 回に渡る アンドロメダ座ウプシロン星b の観測では,この惑星の軌道傾斜角は 30°より大きいとことが示唆されている (Harrington et al. 2006).Crossfield et al. (2010) では,同じ波長でのさらなるスピッツァーの観測から,軌道傾斜角は 28°よりも大きい値であると推定した.またこの観測では,アンドロメダ座ウプシロン星b のフラックスの最大が惑星の衝よりも前に発生し,この観測結果は大気循環モデルと整合しないことも報告された.

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