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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1707.07093
Brahm et al. (2017)
HATS-43b, HATS-44b, HATS-45b, and HATS-46b: Four Short Period Transiting Giant Planets in the Neptune-Jupiter Mass Range
(HATS-43b,HATS-44b,HATS-45b と HATS-46b:海王星から木星の質量範囲にある 4 つの短周期トランジット巨大惑星)

概要

4 つの短周期系外惑星の発見を報告する,これらは適度に明るい恒星をトランジットしており,HATSouth の測光観測および,追加の分光・測光フォローアップ観測で検出された.

惑星の質量は 0.26 - 0.90 木星質量の範囲だが,半径はどれもおおよそ木星半径であり,バルク密度としては広い範囲に分布している.
軌道周期は 2.7 - 4.7 日の範囲であり,そのうち HATS-43b は軌道が円軌道ではない (e = 0.173).

HATS-44 は特筆すべき点として,金属量が多い ([Fe/H] = 0.320).
中心星のスペクトル型は F 型から K 型である.また明るさは V バンド等級で 13.3 - 14.4 と適度に明るい.そのため詳細なフォローアップ観測に適している.

HATS-43b と 46b は予想される惑星大気の透過光シグナルが 2350 ppm と 1500 ppm と比較的大きく,透過光分光観測を通じて大気の特徴付けをするのに適している.

パラメータ

HATS-43 系

HATS-43
有効温度:5099 K
金属量:[Fe/H] = 0.050
質量:0.837 太陽質量
半径:0.812 太陽半径
光度:0.400 太陽光度
年齢:8.6 Gyr
距離:341 pc
HATS-43b
軌道周期:4.3888497 日
質量:0.261 木星質量
半径:1.180 木星半径
平均密度:0.191 g cm-3
軌道長半径:0.04944 AU
平衡温度:1003 K
軌道離心率:0.173
HATS-43 系について
HATS-43b は土星程度の質量,木星程度の半径を持つ惑星である.

やや軌道離心率の大きな軌道にあり,中心の K 型星の光度が小さいため幾分か温暖な平衡温度を持つ.この平衡温度は,惑星の半径が恒星の輻射に強く影響される閾値として Kovacs et al. (2010) で提案されている値である 1000 K に近い.

この惑星の半径は,似た特性を持つ他の系と比べると特に大きいものである.
似た惑星質量を持ち,同程度の輻射を受けている系としては,他に 4 つの系がある.HAT-P-19b (Hartman et al. 2011),WASP-29b (Hellier et al. 2010),WASP-69b (Anderson et al. 2014),HATS-5b (Zhou rt al. 2014) である.HATS-43b は,これらのサンプルの中で最も大きい半径を持つ.

また,中心星の金属量がこれらの中で最も低く,これは惑星が固体の中心核を持たず,大きな半径を持ちうることを示唆する.しかし Fortney et al. (2007) の惑星内部構造のモデルによると,この惑星が理論的に持ちうる半径は,観測された半径より 2 σ 小さい.

一方で,この惑星は今回発見された惑星の中で軌道離心率が 0.1 を超える唯一の惑星である.大きな離心率を持つということは,大きな潮汐加熱率を持つことを意味する (Jackson et al. 2008).これが大きな半径を持つ事の原因であるかもしれない.

この惑星は低密度であるため,大気の研究に適している.
期待される惑星大気の透過光のシグナルは 2350 ppm であり,これは発見されているトランジットの系の中でも最も大きい部類になる.類似したパラメータを持つ惑星 WASP-39b (Faedi et al. 2011) はこれまでに多数の観測が行われており,雲なしの大気を持ち,レイリースロープとナトリウム・カリウムの吸収線が検出されている (Kammer et al. 2015など).

HATS-44 系

HATS-44
平衡温度:5080 K
金属量:[Fe/H] = 0.320
質量:0.860 太陽質量
半径:0.847 太陽半径
光度:0.400 太陽光度
年齢:9.7 Gyr
距離:463 pc
HATS-44b
軌道周期:2.7439004 日
質量:0.56 木星質量
半径:1.067 木星半径
平均密度:0.56 g cm-3
軌道長半径:0.03649 AU
平衡温度:1161 K
HATS-44 系について
HATS-44b は木星より小さい質量を持ち,半径は木星程度である.中心星の光度は HATS-43 と似ているが,こちらのほうが軌道長半径が小さいために惑星の平衡温度は高い.

この惑星と似たパラメータを持つ系に WASP-24 系がある (Smalley et al. 2011).この惑星はやや大きな 1.22 木星半径を持ち,惑星半径と中心星の金属量の間には逆相関があるという仮説と整合的である.Fortney et al. (2007) のモデルによると,惑星が固体コアを持たない場合は,観測された半径が説明できる.

この惑星の透過光のシグナルの予測値は 860 ppm と HATS-43b よりは小さいが,この程度のシグナルであっても過去に大気透過光の観測例は存在する.

HATS-45 系

HATS-45
平衡温度:6450 K
金属量:[Fe/H] = 0.020
質量:1.272 太陽質量
半径:1.315 太陽半径
光度:2.66 太陽光度
年齢:1.52 Gyr
距離:818 pc
HATS-45b
軌道周期:4.1876244 日
質量:0.70 木星質量
半径:1.286 木星半径
平均密度:0.41 g cm-3
軌道長半径:0.05511 AU
平衡温度:1518 K
HATS-45 系について
こちらも木星より小さい質量を持ち,膨張した半径を持つ.F 型の中心星からのやや強い輻射を受け,平衡温度は高い.この系に似た系として HAT-P-9b (Shporer et al. 2009) がある.こちらは大きい半径を持つが HATS-45b と整合的である.

この惑星は,理論モデルが予測する半径よりも大きい半径を持つ.これは,中心星からの輻射が強いことから期待される傾向であり,膨張半径を起こす原因として提案されているいくつかの機構が働いているのだろう.

この惑星の大気の透過光のシグナルの予測値は 660 ppm と HATS-43b よりは小さいが,この程度のシグナルであっても過去に観測例はある.

また中心星の射影した自転速度は 9.90 km s-1 であり,ロシター効果を通じて spin-orbit axis が測定できる可能性がある.

HATS-46 系

HATS-46
有効温度:5495 K
金属量:[Fe/H] = -0.060
質量:0.917 太陽質量
半径:0.853 太陽半径
光度:0.589 太陽光度
年齢:3.0 Gyr
距離:448 pc
HATS-46b
軌道周期:4.7423729 日
質量:0.173 木星質量
半径:0.903 木星半径
平均密度:0.28 g cm-3
軌道長半径:0.05367 AU
平衡温度:1054 K
HATS-46 系について
この惑星は海王星と土星の間の質量を持つ.中心星の光度が小さいため,平衡温度は比較的低い.

この惑星は,トランジット惑星のパラメータ分布で見ると存在個数が少ない領域にある,海王星から土星質量の間に位置する惑星である.

質量としては,巨大氷惑星と巨大ガス惑星の中間に相当する.惑星半径が大きいことから,この惑星はおそらくは低質量の巨大ガス惑星であり,質量の大きい氷惑星では無いことが示唆される.

Fortney et al. (2007) の理論モデルでは,コア質量として 12 ± 8 地球質量が,観測された質量と半径を説明するために必要である.このことから,80% が H/He の組成であることが示唆される.

惑星大気の透過光シグナルは 1500 ppm 程度が期待され,大気の研究に適している.

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