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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1708.01076
Evans et al. (2017)
An ultrahot gas-giant exoplanet with a stratosphere
(成層圏を持つ非常に高温な巨大系外ガス惑星)

概要

惑星からの赤外線放射は,惑星大気の化学組成と温度の鉛直分布についての情報を含んでいる.
もし大気上層が下層より低温の場合,大気中の分子ガスは惑星の温度スペクトル中における吸収として特徴が現れる.反対に,もし成層圏,すなわち温度が高度に伴って上昇する層が存在した場合,分子ガスは放射として観測される.

成層圏は,強く輻射を受けている系外惑星で形成されることが示唆されているが,成層圏の形成がどの程度起きるものかについては,理論的にも観測的にも解決されていない.過去の観測における成層圏の存在の主張には疑問の余地が残されている.これは,大きな変動性を持つ中心星と,低スペクトル分解能の観測から来る,大気構造の特定の困難さからくるものである.


ここでは,非常に高温な巨大ガス惑星 WASP-121b の近赤外線での温度スペクトルの測定結果について報告する.この惑星は平衡温度がおよそ 2500 K である.

スペクトル中には,水 (水蒸気) が放射スペクトルとして分解され,これにより 5 σ の信頼度で系外惑星の大気中に成層圏が検出されたことを意味する.

この観測は,惑星大気に入射する恒星の放射のうち多くの割合が,大気の高高度に保持されることを示唆している.これはおそらく,気相にある酸化バナジウムと酸化チタンのような化学種による,恒星輻射の吸収によるものであると考えられる.

観測と解析結果

二次食の観測

2016 年 11 月 10 日に,ハッブル宇宙望遠鏡の Wide Field Camera 3 (WFC3) を用いて WASP-121b の二次食を観測した.この観測では,1.1 - 1.7 µm の波長域のスペクトルを取得した.

二次食は 2017 年 1 月 30 日にも,スピッツァー宇宙望遠鏡の Infrared Array Camera (IRAC) で 3.6 µm で観測された.

モデルフィッティング

惑星の熱放射のスペクトルを,惑星を等温の黒体とみなしてフィットした場合,大気温度は 2700 ± 10 K となった.しかしこのモデルは,あまり観測と一致しない.そのため,等温の黒体スペクトルのモデルに関しては 5 σ の確度で排除される.

等温の黒体で観測データを説明できないという点は,温度スペクトルは異なる温度を持った大気層の範囲を観測していることに対応していると考えられる.1.35 - 1.55 µm と 1.20 - 1.25 µm の範囲で放射が最も強くなっていることから,これらの波長で大気が光学的に厚くなっている圧力領域は温度が高いことを意味する.

T-P profile (温度-圧力プロファイル) が減少傾向 (つまり,圧力が下がるにつれ温度も低下している) にある場合,周囲の波長と比較して大気の不透明度が比較的低い状況である場合のみ観測を説明可能である.しかし,考えられる気相の吸収体 (水,一酸化炭素,酸化バナジウム,酸化チタン,FeH,CrH) はそのような性質を持たない.

また,難揮発性の凝縮物 (Al2O3, CaTiO3, FeO, MgSiO3, MgSiO4 など) は WFC3 のバンドパス内ではスペクトルの特徴を持たない.

そのため,増加する T-P profile のみが残された可能性である.

大気構造の推定

得られたスペクトルの解釈をするため,大気リトリーバル (復元) メソッドを使用した.この復元では,水,酸化チタン,酸化バナジウム,FeH,CrH,一酸化炭素,メタン,アンモニアの存在度をフリーパラメータとして設定した.また,これらのガスが大気の鉛直方向によく混合されていると仮定した.

その結果,最も観測と一致したスペクトルは,大気の不透明源として,水と酸化バナジウムの不透明度のみを含むモデルであった.モデルでは,成層圏は 10-1 - 10-5 bar の範囲まで広がり,この圧力範囲の間での温度増加は 1114 K であった.

圧力が 10-3 bar より低い高層の温度を 2700 K まで上昇させるのに必要なエネルギーは,恒星からのフラックスの 20%以上に相当すると推定される.

この惑星のスペクトルの特徴について,温度領域的には,スペクトル型が M8 や L1 の矮星に近い.しかしそのような天体の熱輻射では,1.35 - 1.55 µm や 1.8 - 2.1 µm あたりに水による吸収の特徴を示す.
WASP-121b の場合,1.35 - 1.55 µm の部分は吸収ではなく放射として現れている.また 1.20 - 1.25 µm に酸化バナジウムによる可能性がある放射の特徴が見られた.

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