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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1708.01291
Johnson et al. (2017)
Spin-Orbit Misalignments of Three Jovian Planets via Doppler Tomography
(ドップラートモグラフィーを用いた 3 つの木星型惑星の恒星自転軸-公転軸のずれ)
これら 3 惑星の spin-orbit misalignment を,ドップラートモグラフィー (Doppler tomography) を用いて測定した.これは,Rossiter-McLaughlin 効果 (RM effect,ロシター効果) による,トランジット中のスペクトル線形状の擾乱を分光学的に分解するという方法である.
HAT-P-41b の 5 回のトランジットの一部に得られたスペクトルの時間分布を解析し,この系の恒星自転軸と惑星公転軸の角度 (spin-orbit angle) を -22.1°と測定した.
Addison et al. (2013) で得られていた WASP-79b の視線速度 RM データを,ドップラートモグラフィーの手法を用いて再解析した.その結果 spin-orbit angle は -99.1°となった.これは Addison et al. (2013) の測定結果と整合的だが,より精密な測定である.
ケプラー448b に関しては,ケプラーの光度曲線とドップラートモグラフィーデータを合わせて解析した.また Lillo-Box et al. (2015) の視線速度のデータセットも使用した.
その結果,恒星自転軸と惑星自転軸はほぼ揃っており,spin-orbit angle は -7.1° であった.これは Bourrier et al. (2015) による結果とはやや不一致であった.
ケプラーの光度曲線の解析から,中心星ケプラー448 の自転周期は 1.27 日と測定された.これと合わせて議論し,3 次元での spin-orbit misalignment は小さく,ほぼ 0°と推定した.
これまでに,多くの系外惑星で spin-orbit misalignment が測定されている.多くはホットジュピター (Winn et al. 2005など) での測定である.
過去の観測から,λ の分布は様々なパラメータの関数として,いくつかのパターンがあることが分かってきた.
Winn et al. (2010) では,主星の有効温度が 6250 K を超えるものの周りでは,両者は不一致な傾向にあり (λ が大きい),一方で低温な恒星まわりでは揃っている傾向 (ラムダが小さい) にあることが指摘されている.
Albrecht et al. (2012) では,軸が揃っていない系は,長い潮汐減衰タイムスケールを持つ傾向にあることを発見した.また Hebrard et al. (2010) は,逆行軌道 (90° < |λ| < 180°) にある 3 木星質量より重い惑星は存在せず,これは軌道傾斜角の潮汐散逸による効果でもあることを指摘した.Dawson (2014) は,これらの傾向は潮汐相互作用と,Kraft break (Kraft 1967) の両サイドにおける中心星の自転の magnetic braking で説明できることを示した.
しかしこのシナリオにも,潮汐に関する理論的な理解と,より長周期の惑星にずれが見られるかどうかという点で,まだ課題がある (Li & Winn 2016).
恒星の自転軸と惑星の公転軸のずれはホットジュピターを中心星の付近まで運んだプロセスと関係があるとするモデルと,無関係であるとするモデルの,大きく 2 つのモデルがある.
前者は,ホットジュピターは高離心率軌道を介した惑星移動で形成されたとするものである.このタイプには,惑星-惑星散乱 (Rasio & Ford 1996など),Kozai-Lidov 機構 (Fabrycky & Tremaine 2007など) がある.
惑星の軌道移動とはあまり関係なく不一致な軌道をもたらす機構としては,恒星とずれた軸を持つ原始惑星系円盤中での惑星移動がある.円盤の軸のずれの原因としては,全体の角運動量に時間変動を持つ物質の降着によるもの (Bate et al. 2010など),伴星天体や恒星が誕生した星団内での重力トルクによるもの (Batygin 2012など),恒星からの磁気トルクによるもの (Lai et al. 2011など) が提案されている.
WASP-79b に関しては Addison et al. (2013) のデータをドップラートモグラフィーで再解析した.その結果 λ = -99.1° (+4.1, -3.9) であった.これは Addison et al. (2013) の値 λ = -106° (+19, -13) と整合的だが,より高精度である.
ケプラー448b については,ほぼ揃った角度であり λ = -7.1° であった.これは,値自体は先行研究の λ = -12.1° (Bourrier et al. 2015) とは異なる.しかし見ている結果としては同じで,先行研究では符号の取り方の慣習が異なるために違いが生じたものと考えられる.その他のパラメータに関しては先行研究と矛盾がなかった.
arXiv:1708.01291
Johnson et al. (2017)
Spin-Orbit Misalignments of Three Jovian Planets via Doppler Tomography
(ドップラートモグラフィーを用いた 3 つの木星型惑星の恒星自転軸-公転軸のずれ)
概要
ホットジュピター HAT-P-41b と WASP-79b の spin-orbit misalignment (恒星の自転軸と惑星の公転軸のずれ) の測定について報告する.また,軸が揃っているウォームジュピター,ケプラー448b についての結果も合わせて報告する.これら 3 惑星の spin-orbit misalignment を,ドップラートモグラフィー (Doppler tomography) を用いて測定した.これは,Rossiter-McLaughlin 効果 (RM effect,ロシター効果) による,トランジット中のスペクトル線形状の擾乱を分光学的に分解するという方法である.
HAT-P-41b の 5 回のトランジットの一部に得られたスペクトルの時間分布を解析し,この系の恒星自転軸と惑星公転軸の角度 (spin-orbit angle) を -22.1°と測定した.
Addison et al. (2013) で得られていた WASP-79b の視線速度 RM データを,ドップラートモグラフィーの手法を用いて再解析した.その結果 spin-orbit angle は -99.1°となった.これは Addison et al. (2013) の測定結果と整合的だが,より精密な測定である.
ケプラー448b に関しては,ケプラーの光度曲線とドップラートモグラフィーデータを合わせて解析した.また Lillo-Box et al. (2015) の視線速度のデータセットも使用した.
その結果,恒星自転軸と惑星自転軸はほぼ揃っており,spin-orbit angle は -7.1° であった.これは Bourrier et al. (2015) による結果とはやや不一致であった.
ケプラーの光度曲線の解析から,中心星ケプラー448 の自転周期は 1.27 日と測定された.これと合わせて議論し,3 次元での spin-orbit misalignment は小さく,ほぼ 0°と推定した.
背景
Spin-orbit misalignment の測定とその傾向
Sky-projected spin-orbit misalignment λ は,惑星の軌道角運動量ベクトルと主星の自転角運動量ベクトルの成す角度 (=中心星の自転軸と惑星の公転軸の成す角度) を,天球面上に射影した角度である.これまでに,多くの系外惑星で spin-orbit misalignment が測定されている.多くはホットジュピター (Winn et al. 2005など) での測定である.
過去の観測から,λ の分布は様々なパラメータの関数として,いくつかのパターンがあることが分かってきた.
Winn et al. (2010) では,主星の有効温度が 6250 K を超えるものの周りでは,両者は不一致な傾向にあり (λ が大きい),一方で低温な恒星まわりでは揃っている傾向 (ラムダが小さい) にあることが指摘されている.
Albrecht et al. (2012) では,軸が揃っていない系は,長い潮汐減衰タイムスケールを持つ傾向にあることを発見した.また Hebrard et al. (2010) は,逆行軌道 (90° < |λ| < 180°) にある 3 木星質量より重い惑星は存在せず,これは軌道傾斜角の潮汐散逸による効果でもあることを指摘した.Dawson (2014) は,これらの傾向は潮汐相互作用と,Kraft break (Kraft 1967) の両サイドにおける中心星の自転の magnetic braking で説明できることを示した.
Misalignment の原因
全体のシナリオとしては,ホットジュピターのいくらかの割合は初期に大きく傾いた軌道にあり,低速で自転する恒星まわりの惑星の軌道傾斜角は,潮汐によって急速に減衰される.一方で高速自転星の周りではそうならない (ただし最も重い部類の惑星を除いては).しかしこのシナリオにも,潮汐に関する理論的な理解と,より長周期の惑星にずれが見られるかどうかという点で,まだ課題がある (Li & Winn 2016).
恒星の自転軸と惑星の公転軸のずれはホットジュピターを中心星の付近まで運んだプロセスと関係があるとするモデルと,無関係であるとするモデルの,大きく 2 つのモデルがある.
前者は,ホットジュピターは高離心率軌道を介した惑星移動で形成されたとするものである.このタイプには,惑星-惑星散乱 (Rasio & Ford 1996など),Kozai-Lidov 機構 (Fabrycky & Tremaine 2007など) がある.
惑星の軌道移動とはあまり関係なく不一致な軌道をもたらす機構としては,恒星とずれた軸を持つ原始惑星系円盤中での惑星移動がある.円盤の軸のずれの原因としては,全体の角運動量に時間変動を持つ物質の降着によるもの (Bate et al. 2010など),伴星天体や恒星が誕生した星団内での重力トルクによるもの (Batygin 2012など),恒星からの磁気トルクによるもの (Lai et al. 2011など) が提案されている.
観測・解析結果
HAT-P-41b は λ = -22.1°といくらかずれているが,順行軌道である.これは Kraft break を超えている恒星の周りのホットジュピターに典型的な傾向である.WASP-79b に関しては Addison et al. (2013) のデータをドップラートモグラフィーで再解析した.その結果 λ = -99.1° (+4.1, -3.9) であった.これは Addison et al. (2013) の値 λ = -106° (+19, -13) と整合的だが,より高精度である.
ケプラー448b については,ほぼ揃った角度であり λ = -7.1° であった.これは,値自体は先行研究の λ = -12.1° (Bourrier et al. 2015) とは異なる.しかし見ている結果としては同じで,先行研究では符号の取り方の慣習が異なるために違いが生じたものと考えられる.その他のパラメータに関しては先行研究と矛盾がなかった.
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