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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1708.02051
Feng et al. (2017)
Color difference makes a difference: four planet candidates around tau Ceti
(色の違いが違いが作る:くじら座タウ星のまわりの 4 つの惑星候補)

概要

地球に類似した惑星を視線速度法を用いて検出する上で,主要な困難の一つが,シグナルからのノイズの除去である.ここでは,tau Ceti (くじら座タウ星) の視線速度データを解析し,波長依存性のあるノイズの確実な証拠を発見した.またこのノイズは,移動平均モデルと “differential radial velocities” の組み合わせでモデル化出来ることを発見した.

このノイズモデルをくじら座タウ星の視線速度データに適用した結果,20.0, 49.3, 160, 642 日の 4 つの周期的シグナルを検出した.これらは惑星起源のシグナルであると解釈される.

軌道周期 20.0 日と 49.3 日の 2 つの新しいシグナルを同定する一方,これまでに存在が疑われていた約 160 と約 600 日のシグナルを高精度で定量化した.

また,20.0 日のシグナルは KECK データでも独立に検出された.

この解析で検出された全ての惑星は,4 地球質量より小さい最小質量を持ち,長周期の惑星 2 つはそれぞれハビタブルゾーンの内縁と外縁周辺に位置している.

機器のノイズは HARPS の精度限界として 0.2 m/s を与えることを発見した.また,HARPS データと,スペクトル線形状の中心積率との間に,0.5 m/s の水準で相関があることも発見した.ただしこの中心積率は,ノイズとシグナルの両方を含んでいると思われる.今回の解析で検出されたシグナルは半振幅が 0.3 m/s 程度であり,比較的弱いシグナルを検出する視線速度技術の可能性を示すものである.

視線速度法での惑星検出技術

視線速度法による地球類似惑星の検出

視線速度観測の精度は,近年では数メートル毎秒の変化を測定できる水準にまで進化した.特に High Accuracy Radial Velocity Planet Searcher (HARPS) 分光器は,視線速度の測定精度が 1 m/s 程度になり,スーパーアースの検出も可能になった.

しかしこの精度は,近傍星のハビタブルゾーン内の地球類似惑星を検出するためには精度が足りない.このような惑星を検出するためには 10 cm/s の測定精度が必要とされる (Mayor et al. 2014).また,恒星や機器のノイズから惑星のシグナルを検出するための,統計的なツールやノイズモデルが必要である.


視線速度測定において,惑星によるケプラーシグナルは,恒星活動や恒星の自転,観測時間の非一様なサンプリングなどによって,弱められたり壊されたりする.
これらのノイズの一部は,Ca II HK emission や line bisector span やスペクトル線の幅など,様々な恒星の活動指標を用いて取り除くことが出来る.しかし活動指標とそれらに対応する視線速度の関連は非常に複雑で必ずしも決定論的ではなく,惑星候補シグナルの確定に際して論議を呼ぶことがある.

Differential RVs

波長で平均した視線速度は,適切な重み付けや補正が無いために,波長依存性のあるノイズを含むことがある.そのため,ノイズ除去のためには視線速度の波長依存性のモデリングが必要である.

スペクトル線を複数のグループに分割し,各グループで視線速度を平均して,いわゆる “aperture data sets” を生成する.そしてこれらの sperture data sets の間の差を調べる.これがいわゆる “differential RVs” である (Feng et al. 2017).

このモデルをくじら座タウ星の HAPRS での視線速度観測データに適用した.この恒星は,過去の解析で複数惑星系を持つ可能性が指摘されている (Tuomi et al. 2013).
くじら座タウ星は太陽に似た恒星だが,太陽ほど活発ではない.この恒星の HAPRS での観測は現在 9000 データセットを超えている.そのため過去の解析における,0.2 m/s 程度の半振幅のシグナルを検出できる可能性がある.Tuomi et al. (2013) では移動平均モデルを用いて相関したノイズの一部は除去したが,そのノイズモデリングは波長依存性のあるノイズは考慮していないため,おそらく不完全である.

観測・解析結果

惑星候補の 4 シグナル

検出された 20, 49, 160, 600 日のシグナルは,惑星のケプラー運動によるものであると推定される.これらの惑星の最小質量は全て 5 地球質量未満で,特に くじら座タウ星g, h は最小質量は地球と同程度である.また,くじら座タウ星h, e, f はある程度の軌道離心率を持つ.

くじら座タウ星まわりにあるデブリ円盤のベストフィットからの傾き (およそ 30°) が惑星系の傾きと同じだと仮定した場合,惑星の真の質量は最小質量の 2 倍になる (Lawler et al. 2014).

これらの惑星によるシグナルの半振幅は 0.3 m/s であり,太陽類似星まわりの地球類似惑星を検出するために必要な精度である 0.1 m/s に近い.

先行研究との比較

今回同定された惑星候補は,Tuomi et al. (2013) による結果と部分的に一致する.

20, 49 日周期の新しい惑星候補を発見したものの,過去に検出が報告されていた 14, 35 日のシグナルは確認出来なかった.

また,92 日周期のシグナルの兆候は検出されたものの,これは惑星のケプラー運動によるシグナルとは確認出来なかった.これは,全てのデータセットと解の中で整合的に同定されなかったためである.

14 日前後の周期は,観測データから 20 日周期のシグナルを差し引いた際に弱くなる.しかしその逆は真ではなく,この事は 14 日周期のシグナルはケプラー運動由来ではない事を示唆する.

とはいえ,20 日周期を差し引いた後の 14 日周期にもいくつかのケプラー運動の解は存在する.
さらにデータを 3 つの大きなグループに分けた際,14 日周期シグナルは 1 番目の集団では目立っていて,20 日周期シグナルは 2 番目と 3 番目の集団で目立っていた.Tuomi et al. (2013) では最初の 2 つのみを解析しているため,14 日の周期を選んだと考えられる.
しかし,1 番目の集団は,ゆらぎの水準が大きく,半値幅の異常な変動が見られるためデータとして問題がある.さらに,この集団は星震学の変動データを含んでいる,

これらの要素を考慮すると,14 日周期シグナルは 20 日周期シグナルのエイリアスというよりは,恒星活動に誘起されたシグナルであると考えられる.

過去の報告での 35 日周期シグナル,もしくはここで同定された 32 日シグナルは非常に弱い.さらに,35 日周期は Baliunas et al. (1996) で測定された恒星の自転周期である 34 日に近い.ただしこの自転周期は,恒星の活動指標や differential RVs では目立たなかった.

また 1000 日周期シグナルにある 600 日周期シグナルのエイリアスは,もし大きな軌道離心率が可能なのであれば 600 日のシグナルと同程度によくフィット出来ることを発見した.

ここで同定されたシグナルの半値幅は 0.4 - 0.5 m/s であった.これは過去の値である 0.58 - 0.75 m/s より小さい.

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