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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1708.07128
Shporer et al. (2017)
EPIC 211418729b and EPIC 211442297b: Two Transiting Warm Jupiters
(EPIC 211418729b と EPIC 211442297b:2 つのトランジットするウォームジュピター)

概要

ウォームジュピター (warm Jupiters) は,受け取る輻射量が 108 erg s-1 cm-2 より少ない巨大ガス惑星で,太陽型星の周りの場合は軌道周期が 10 日よりも長いものに相当する.

ここでは,ケプラーの K2 ミッションにおける測光観測でトランジット候補天体として同定された,2 つのトランジットするウォームジュピターの確認について報告する.

EPIC 211418729b は 1.85 木星質量,0.942 木星半径,軌道周期 11.4 日である.また,EPIC 211442297b は 0.84 木星質量,1.115 木星半径,軌道周期 20.3 日である.この 2 つの惑星は,質量が測定されているものの中では,最も長い周期を持つトランジットガス惑星に属する.また,比較的古い中心星の周りを公転している.

どちらの惑星も半径は膨張しておらず,理論的な予想と整合する半径を持っている.惑星半径-恒星輻射のダイアグラム上でのこれらの惑星の位置は,108 erg s-1 cm-2 未満の輻射の場合は惑星半径と輻射の相関がほとんど無くなるというモデルと整合的であった.従って,ウォームジュピターでは恒星からの輻射は惑星の半径を決めるのに重要な要素ではないことを示唆する.

また,K2 で検出された別のトランジットウォームジュピター候補シグナルの EPIC 212504617 は,偽陽性 (惑星ではない) であったことを合わせて報告する.

ウォームジュピターの重要性

このプロジェクトにおける科学的目標は,膨張した半径を持つガス惑星の謎を調べること,ホットジュピターの軌道進化の謎を研究すること,ホットジュピター以外への系外惑星大気および恒星の自転軸の研究の拡大のためのターゲットを選定することの 3 つである.

膨張半径を持つガス惑星

膨張半径を持つガス惑星の原因としての機構は,大きく分けて 3 つ存在する.
(I) 恒星の輻射が惑星大気から惑星内部へと輸送されることによる膨張 (Ginzburg & Sari 2016など).
この過程には,オーム散逸 (Batygin & Stevenson 2010),熱潮汐 (Arras & Socrates 2010),運動エネルギー輸送 (Showman & Guillot 2002),mechanical greenhouse (Youdin & Mitchell 2010),ポテンシャルエネルギーの移流 (Tremblin et al. 2017) がある.

(II) 軌道離心率の散逸にともなう潮汐加熱による膨張 (Bodenheimer et al. 2001).
惑星の軌道離心率が継続して励起され続けている場合,例えば 3 体目の天体との相互作用がある場合,この膨張機構は長期間継続することが出来る.

(III) 収縮の遅れ.
例えば,惑星大気の不透明度が高い場合は,初期に大きい半径を持つガス惑星の収縮はゆっくりになる (Burrows et al. 2007).前者 2 つとは異なり,3 つ目のカテゴリは,短周期軌道や偏心軌道にない全ての惑星において働き得る機構である.

膨張機構の謎に迫る鍵として,ガス惑星の半径と惑星が受ける輻射量には相関があるという経験則がある.輻射強度と惑星半径の間に相関がある事は,半径の膨張が恒星からの輻射によっているとする説と整合的だが,これだけではカテゴリ I のどれが主要な原因なのかまでは不明である.また,注意すべき点としては,この相関関係は必ずしも因果関係を意味しない.

既知のトランジットガス惑星は短周期で,典型的には軌道周期が 10 日未満である.輻射強度で言うと 108 erg s-1 cm-2 より大きいふく者を受けているものが大部分である,この事は,半径と輻射量の関係性の詳細な理解の妨げになっている.

ホットジュピター・ウォームジュピターの軌道進化

ホットジュピターの軌道進化に関しては,ガス惑星がどのように短周期の軌道に到達したのかを説明するための幾つかの仮説がある.

仮説のうちのいくつかは,系内の他の天体 (他の惑星や恒星の伴星) との相互作用によるとしている.この説では,ガス惑星はまず軌道離心率の大きい軌道になり,その後恒星との潮汐相互作用による円軌道化を経験すると考える.

他の説では,ガス惑星は原始惑星系円盤との相互作用によって内側に移動したとするものがある.この過程では,惑星の軌道は円軌道の状態に保たれる.

従って,上記 2 つのシナリオの間には,遠方の軌道から近接軌道へ移動する際に,軌道離心率という点で違いがある.ウォームジュピターが持つ軌道離心率は,ホットジュピターを形成するための主要な移動手段を決める鍵になる.

ホットジュピターを持つ系とウォームジュピターを持つ系それぞれが,その惑星以外に惑星を持っている頻度を比較することにより,ウォームジュピターの大部分は円軌道を持っていることが示唆されている.
ウォームジュピターを持っている系が,ウォームジュピター以外に短周期の惑星も持っている頻度が高いという観測結果は,ウォームジュピターの軌道は円軌道であることを示唆している.これは,もし円軌道から大きくずれていた場合は,惑星系を不安定にしてしまうことが予想されるからである.

パラメータ

EPIC 211418729 系

EPIC 211418729
有効温度:5027 K
金属量:[Fe/H] = 0.410
質量:0.832 太陽質量
半径:0.828 太陽半径
年齡:9.9 Gyr (99 億歳)
距離:481 oc
EPIC 211418729b
軌道周期:11.39109 日
半径:0.942 木星半径
質量:1.85 木星質量
平均密度:2.99 g cm-3
軌道長半径:0.09309 AU
平衡温度:719 K
軌道離心率: 0 (0 に固定して解析)

EPIC 211442297 系

EPIC 211442297
有効温度:5560 K
金属量:[Fe/H] = -0.220
質量:0.831 太陽質量
半径:0.831 太陽半径
年齡:10.7 Gyr (107 億歳)
距離:417 pc
EPIC 211442297b
軌道周期:20.273034 日
半径:1.115 木星半径
質量:0.84 木星質量
平均密度:0.82 g cm-3
軌道長半径:0.1367 AU
平衡温度:682 K
軌道離心率:0.137

その他

どちらも,質量が測定されているトランジットガス惑星の中では,最も長い周期をもつ部類である.実際,NASA Exoplanet Archive 中では,2017 年 6 月 1 日現在で,EPIC 211442297b はよく質量が制限されている K2 トランジット系外惑星の中では最も長い周期を持つ (ただし未確定の惑星候補中にはより長いものあり,Bayliss et al. 2017).

興味深いことに,今回確定した 2 惑星はどちらも中心星の年齡が比較的大きく,100 億歳に近い.ただし,どちらも年齢推定の不定性は大きい.


また,ウォームジュピター候補シグナルだった,EPIC 212504617 (周期 39.26 日) は,恒星の伴星による食であり,偽陽性であった.
中心星は 1.01 太陽質量,シグナルの周期は 39.26 日であり,視線速度観測の結果を合わせると,伴星の質量は 0.6 太陽質量となる.伴星の離心率を 0.95 と非常に高くしたモデルでも,伴星質量は少なくとも 45 木星質量となった.そのためこの伴星は惑星ではなく,準恒星 (褐色矮星など) である可能性も非常に低い.

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