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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1710.05866
Hanse et al. (2017)
Capture of exocomets and the erosion of the Oort cloud due to stellar encounters in the Galaxy
(銀河系内での恒星遭遇による系外彗星の獲得とオールトの雲の侵食)

概要

オールトの雲は,おそらくは 40 億年以上前に形成され,銀河系の中を太陽とともに動いている.そのため,外部からの影響,主に銀河潮汐 (galactic tide) と散在星 (field star) との近接遭遇の影響を受けている.

理論的には,他の恒星も太陽系のオールトの雲と類似した分布の系外彗星 (exocomet) を持っていることが示唆されている.ここでは,そのような散在星との近接遭遇の際に発生しうる太陽系のオールトの雲の侵食と,系外彗星の捕獲の可能性について調査を行った.

具体的には,近接遭遇を起こす両方の恒星が,オールトの雲のような彗星の雲に囲まれている場合の,フライバイの N 体シミュレーションを行う.近接遭遇に際してどれだけの系外彗星がオールトの雲へと移ったか,どれだけのオールトの雲の彗星が失われたか,またそれが他の恒星の質量や相対速度・衝突パラメータにどのように依存するかを測定した.


その結果,系外彗星がオールトの雲へ移行するのは,相対速度が比較的小さく (≲ 0.5 km/s),近接した遭遇 (最接近時の距離が ≲ 105 AU) を起こしている間だけであり,このような近接遭遇は極めて稀である.

過去に太陽系と近接遭遇を起こした恒星の全てが系外彗星の雲に囲まれていると仮定した場合,オールトの雲の中にある系外彗星の割合は,10-5 - 10-4 (0.001 - 0.01%) と推定される


また,恒星との近接遭遇と銀河潮汐の効果を考慮して,太陽の寿命の間に渡ってオールトの雲の振る舞いをシミュレーションした.その結果,オールトの雲はその初期質量を 25 - 65%失っており,主に恒星の近接遭遇がその原因であることが分かった.

さらに,オールトの雲の全質量のうち最大で 10%が太陽系外から捕獲したものであると考えられる (典型的な値はさらに小さい値になる).しかし,系外彗星はそれらが供給された近接遭遇の後,銀河潮汐の効果と,別の恒星との連続した近接遭遇によって,しばしば短期間で失われてしまう.

結果とまとめ

(i) 5 × 105 AU より近くを通過する恒星の全てのフライバイを考慮すると,オールトの雲の最大で 10-5 - 10-4 は,進化のどこかの段階で外部から獲得したものである.

(ii) オールトの雲中の太陽系外から捕獲した系外彗星の数は,それらを供給した恒星の近接遭遇イベントの後減少する.これは,元々オールトの雲に存在していた彗星と同様に,さらなる恒星遭遇と銀河潮汐によって影響を受けるためである.

(iii) 太陽の銀河系内における動径方向への移動は,過去にあったとしても系外彗星の捕獲確率には大きな影響を与えない.

(iv) 太陽系の寿命の間,オールトの雲は 25 - 65%の彗星を,散在星との近接遭遇によって失う.この損失は,少数回の最も強い遭遇によって占められる.

(v) オールトの雲へ輸送される系外彗星の数およびオールトの雲から太陽系外へ輸送される彗星の数は,\(M^{a}d^{b}v^{c}\) に比例する.なお \(M\) は遭遇した散在星の質量 (単位は太陽質量),\(d\) は近接遭遇時の距離 (AU),\(v\) は相対速度 (km/s) である.また,\(a\), \(b\), \(c\) はフリーパラメータで,失われる彗星・捕獲する系外彗星の場合でそれぞれ異なる値となる.

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