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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1710.06321
Demangeon et al. (2017)
The discovery of WASP-151b, WASP-153b, WASP-156b: Insights on giant planet migration and the upper boundary of the Neptunian desert
(WASP-151b, WASP-153b, WASP-156b の発見:巨大惑星の移動と海王星型惑星欠乏領域の上限への見識)

概要

発見されている系外惑星のポピュレーションが示す特徴の起源を探るためには,系外惑星の質量や半径を良い精度 (≲ 10%) で測定することが重要である.
ここでは 3 つの新しいトランジット系外惑星の検出を報告する.SuperWASP サーベイによってトランジット法を用いて検出し,その後 SOPHIE 分光器で追加観測を行った.その結果,質量と半径を 15%よりも良い精度で決定することが出来た.

今回発見された 3 個の惑星のうち,WASP-151b WASP-153b はホットサターンであり,それぞれ 0.31 木星質量,1.13 木星半径,1290 K と,0.39 木星質量,1.55 木星半径,1700 K であった.中心星はどちらも早期 G 型星で,等級は 13 等であった.また,軌道周期はそれぞれ 4.53 日と 3.33 日である.

WASP-156b はスーパーネプチューンで,11.6 等の K 型星を公転している.0.128 木星質量,0.51 木星半径,970 K で,軌道周期は 3.83 日である.

WASP-151b の半径はわずかに膨張している程度であるが,WASP-153b の半径は Baraffe et al. (2008) の理論モデルと比較して明確な半径異常を示す.
WASP-156b は,現在のところ数少ない,パラメータが良く求められているスーパーネプチューン惑星の一つであり,未だに議論のある海王星サイズ惑星の形成過程と,巨大ガス惑星と巨大氷惑星の境界に制約を与えるためのよい研究対象となる可能性がある.


これらの 3 つの恒星の年齢推定からは,等時線 (isochrone) から推定した年齡よりも,gyrochronology から推定した年齡 (恒星の自転周期を元にした推定) の方が明らかに若いという,これまでもいくつかの恒星で見られていた傾向が確認された.

ここでは,高軌道離心率の軌道を経由した惑星移動が,短周期惑星を持つ恒星で見られる傾向の一部を説明し得ることを提案する.


最後に,これらの 3 つの惑星は,海王星質量の惑星が欠乏している領域の上限値に近いパラメータを持つ.WASP-151b と WASP-153b は欠乏領域の上限値に近いパラメータを持ち,WASP-156b は上限値よりも下にある.

今回の結果は,系外惑星のポピュレーションに見られているこれらのタイプの惑星の欠乏に対して,中心星からの紫外線輻射が重要な影響を及ぼすことを示唆している.

パラメータ

WASP-151 系

WASP-151
スペクトル型:G1
光度:V = 12.9
質量:1.088 太陽質量
半径:1.14 太陽半径
年齢:51 億年 (isochrone),18 億年 (gyrochronology)
有効温度:5871 K
金属量:[Fe/H] = 0.10
距離:480 pc
WASP-151b
半径:1.13 木星半径
質量:0.31 木星質量
密度:0.22 木星密度
平衡温度:1291 K
軌道長半径:0.055 AU
軌道離心率:0.003 未満

WASP-153 系

WASP-153
スペクトル型:G0
光度:V = 12.8
質量:1.336 太陽質量
半径:1.73 太陽半径
年齢:40 億年 (isochrone),12.1 億年 (gyrochronology)
有効温度:5914 K
金属量:[Fe/H] = 0.34
距離:430 pc
WASP-153b
半径:1.55 木星半径
質量:0.39 木星質量
密度:0.11 木星密度
平衡温度:1701 K
軌道長半径:0.048 AU
軌道離心率:0.009 未満

WASP-156 系

WASP-156
スペクトル型:K3
等級:V = 11.6
質量:0.842 太陽質量
半径:0.76 太陽半径
年齢:64 億年 (isochrone),5.8 億年 (gyrochronology)
有効温度:4910 K
金属量:[Fe/H] = 0.24
距離:140 pc
WASP-156b
半径:0.51 木星半径
質量:0.128 木星質量
密度:1.0 木星密度
平衡温度:971 K
軌道長半径:0.0453 AU
軌道離心率:0.007 未満

各惑星系の特徴

半径異常と重元素量

WASP-151b, WASP-153b
WASP-151b と WASP-153b は,質量 - 半径ダイアグラム上で,低密度のガス惑星が存在する領域に位置している.質量はどちらも土星に近いが,特に WASP-153b の半径は著しく大きい.

等時線を元にした年齡と Baraffe et al. (2008) での等時線とを比較した相対的な位置に基づくと,推定される WASP-151b の重元素の質量割合は,2%より僅かに小さい程度となった.同様に WASP-153b は明確に 2%より小さい推定値となった.

中心星の WASP-151 の金属量は太陽の値と同程度であり,また WASP-153 は金属量が豊富な恒星 ([Fe/H = ]0.34 dex) である.太陽における重元素質量の割合は 2%に近く,これらの恒星の重元素質量割合が 2%に満たないというのは考えにくい.

その結果として,WASP-151b の半径は理論モデルが予測するよりやや大きく膨張しているように思われ,WASP-153b に至っては明確な半径異常を示す.

この解釈はもちろん,質量・半径・系の年齡の推定精度に依存している.もし恒星のパラメータを分光学的観測のみから導出した場合,両惑星のパラメータは Baraffe et al. (2008) の理論モデルの 1 σ 以内に収まる.しかしこれらの推定は,トランジットと恒星モデルから示唆される恒星の密度に基づいたものより不正確であり,精度が低い.
WASP-156b
WASP-156b は,質量 - 半径ダイアグラムでは前者 2 つの惑星とは異なる位置にある.

Baraffe et al. (2008) のモデルからは,この惑星は 90%程度という高い重元素質量の割合を持つことが示唆される,これは海王星と天王星のものと一致しており (Helled & Guillot 2017),この惑星はウォームスーパーネプチューンであると考えられる.

質量と半径が 15%より良い精度で決定されているスーパーネプチューンは現在のところ稀である.これは,現時点でこのような天体がまだ 9 個しか発見されていないからである.これまでに発見されているのは,ケプラー9c (Torres et al. 2011),ケプラー35b (Welsh et al. 2012),ケプラー101b (Bonomo et al. 2014),HATS-7b (Bakos et al. 2015),HATS-8b (Bayliss et al. 2015),WASP-107b (Anderson et al. 2017),WASP-127b (Lam et al. 2017),WASP-139b (Hellier et al. 2017) そして 今回の WASP-156b である.

年齢推定のずれと惑星形成過程

中心星の年齢について,等時線に基づいた年齡 (isochronologiacl age) と,自転に基づいた年齡 (gyrochronological age) では,前者のほうが明らかに大きい値となった.この傾向は Maxted et al. (2015) で,より大きいサンプル数を用いた解析でも報告されている,

Maxted et al. (2015) では,28 個のトランジット惑星を持つ系において,少なくとも半分で 2 つの年齡推定の間に開きがあることが報告されている.興味深いことに,Maxted et al. (2015) のサンプル中の 80%と,今回発見された 3 つの系では,惑星はどれも短周期 (< 5 日) の巨大惑星である.

さらに Maxted et al. (2015) は,惑星を持っている恒星のサンプルの半分程度で,gyrochronological age が isochronological age よりもかなり低い年齡推定になることを指摘している.Buzasi et al. (2016) でも,散在星の恒星サンプルから同じ結論に到達している.


コア集積モデルに基づいた短周期惑星の形成の場合,巨大惑星は雪線 (snow line) よりも外側で形成した後に,恒星の近傍に軌道移動を起こすことで形成されたという理論モデルがある.

軌道移動には大きく分けて2つのモデルがあり,円盤駆動の軌道移動 (Lin et al. 1996, Ward 1997など) と,高軌道離心率移動 (Rasio & Ford 1996など) である.

どちらのプロセスがより重要かを議論するための要素としては,恒星の自転軸と惑星の公転軸のずれ (spin-orbit misalignment, Naoz et al. 2012など),恒星の金属量 (Dawson & Murray-Clay 2013など),系内の別の天体の存在 (Schlaufman & Winn 2016など),ロッシュ間隔 (Nelson et al. 2017など) が挙げられる.

等時線から推定した年齢よりも gyrochronology から推定した年齡の方が著しく低いことは,高軌道離心率軌道を経由した惑星軌道が潮汐力によって円軌道化される最中の,巨大惑星から恒星への角運動量の輸送によって説明できるかもしれない.

反対に,円盤駆動の軌道移動の場合は,惑星と円盤の間の角運動量の輸送が起きることが示唆され,恒星の自転を直接的に加速させることは出来ない.さらに円盤駆動の移動とは異なり,高軌道離心率軌道を経由した場合は,軌道移動は短い原始惑星系円盤の寿命には左右されず,系のどの段階で起きる可能性もある.

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