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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1508.00596
Dumusque et al. (2015)
Characterization of a spurious one-year signal in HARPS data
(HARPSデータ中の偽の1年周期シグナルの特性解析)

概要

HARPSのスペクトログラフは視線速度にして m/s精度の安定性がある。
しかしいくつかの星のデータには、本物ではない1年周期のシグナルの混入があり、その振幅は数 m/s程度である。
この1年周期のシグナルの原因について解析した。

このシグナルは、地球の太陽周りの回転とは逆の位相を持っている。
また地球が太陽を回るときの青方偏移、赤方偏移によって、恒星からのスペクトルがCCDの繋ぎ目をまたぐときに起こるとして説明可能である。
この1年周期の擾乱は、
・影響を受けているスペクトル線をデータから除いて解析する
・1年周期の正弦曲線でフィッティングする

のどちらかによって除去することが出来る。
この手法は、静的な太陽型星の周りに、長周期で視線速度の振幅の小さい惑星を発見するときには必須の技術である。

HARPSについて

High Accuracy Radial Velocity Planet Searcher (HARPS)は、ヨーロッパ南天天文台が運用している系外惑星の視線速度法による探査装置である。
HARPSでは、視線速度の精密な検出のために、0.01 mbar、0.01 Kの安定性を持つ。
トリウム・アルゴンランプを参照光にしている (現在はファブリーペロー干渉計でのキャリブレーションにアップグレードされている)。
HARPSと、そのコピー版であるHARPS-Nでは、くじら座タウ星とHD 85512での6年以上に及ぶ観測で、標準偏差 0.92 m/sと 1.05 m/sの精度を出している。

視線速度観測への混入

視線速度観測をする際は、数 m/sオーダーのいくつかのノイズの混入が起こりうる。

(1) 恒星の対流層を伝わる圧力波によって作られる恒星の振動 (Dumusque et al. 2011, Arentoft et al. 2008, Kjeldsen et al. 2005)
(2) 恒星表面での対流によってできる粒状斑 (Dumusque et al. 2011)
(3) 恒星表面に活動領域がある場合の、恒星の自転による短周期の恒星活動 (Dumusque et al. 2014, Boisse et al. 2012, Meunier et al. 2010, Saar & Donahue 1997)
(4) 恒星の磁気的活動サイクルによる長周期の恒星活動 (Meunier & Lagrange 2013, Dumusque et al. 2011)

ここでは5つ目の原因である、恒星活動には起因しない、CCD検出器の設計に起因するノイズの混入について述べる。

CCD設計の起因する視線速度のノイズ

HD 128621 (ケンタウルス座アルファ星B)、HD 1461、HD 154088、HD 31527などで1年周期の成分が検出されている。これらはあくまで一例であり、他の恒星での検出もある。
検出されたシグナルはどれも地球の公転周期である1年に等しい周期を持つため、恒星起源ではなく地球に原因があると考えるのが妥当である。

このシグナルは、地球の公転運動が引き起こすスペクトル線の青方偏移と赤方偏移が原因で、検出器のCCDブロックの繋ぎ目を超えることで発生する。これがスペクトル線の形状の変形を引き起こす要因となる。

地球の公転によるスペクトル線の視線速度の変動は、地球の公転運動の向きと恒星の位置によって変わる。最大は 30 km/sである。
もし観測している恒星に対する地球の視線速度が数 km/sの場合は、スペクトル線はCCD上で数ピクセル分しか動かないので、CCDの繋ぎ目をまたぐ事による影響は小さい。
また、視線速度を計算する際には大きな影響を及ぼさない弱いスペクトル線がCCDの繋ぎ目を行き来する場合も、全体の視線速度の計算への影響は小さい。
この2つの要因の組み合わせにより、ある恒星は1年周期の影響が強く現れ、他の恒星では小さいという理由が生じる。

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