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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1711.01581
Rufu & Canup (2017)
Triton's Evolution with a Primordial Neptunian Satellite System
(初期海王星衛星系のもとでのトリトンの進化)

概要

海王星の衛星系は特異な特徴を持っている.木星・土星・天王星が持つ主要な衛星は全て,順行軌道 (惑星の自転と同じ方向に公転している) にあり,かつ軌道傾斜角は小さい.一方で海王星は他のガス惑星と比べると衛星数が最も少なく,衛星系の質量の大部分は,不規則衛星であるトリトンが占めている.

トリトンは海王星によって捕獲され,初期に海王星が持っていたであろう規則衛星系を破壊した可能性が高い.ここでは,新しく捕獲したトリトンと,それ以前に存在した海王星の衛星系の間の相互作用について調べた.


その結果,海王星と衛星系の質量比が天王星系に近いか,あるいは天王星系の値よりも小さい衛星系が初期に存在した場合,現在の海王星の衛星系を再現する可能性が高いと考えられる.しかし,初期により重い衛星系を持っていた場合は,現在の配置に至る可能性が低いことも発見した.

さらに,初期に存在した衛星系とトリトンとの相互作用は,トリトンの初期の大きな軌道長半径を,小型の不規則衛星 (ネレイド的な衛星) を保存するのに十分な速さで減少させる機構となり得る.もし捕獲後のトリトンの円軌道化が潮汐相互作用のみで起きた場合,円軌道化に必要な時間が長くなり,ネレイドのような不規則衛星は失われてしまう可能性がある.

背景

ガス惑星の衛星系

土星や木星の衛星系で見られるように,主要な衛星は周惑星円盤の中で形成され,典型的には順行軌道を持つ規則衛星が形成される.

天王星の衛星の起源はあまりよく分かっていない,
天王星の限定的なガス降着の結果として,木星や土星の衛星系と似た機構で形成されるか (Pollack et al. 1991など),あるいは惑星への巨大衝突の結果形成されるか (Slattery et al. 1992など),もしくはこれらの組み合わせで形成されると考えられているが (Morbidelli et al. 2012),結論は出ていない.

一方で,海王星は木星・土星・天王星と比べると衛星数が少ない.重い衛星トリトンは大きく傾いた軌道を持っているため,カイパーベルト天体が海王星に捕獲された事がこの衛星の起源だと考えられる (Agnor & Hamilton 2006).

トリトンの捕獲と進化

もし海王星が,Canup & Ward (2006) から示唆されるような,惑星に対する質量比が 10-4 程度の初期の衛星系を持っていた場合,トリトンの質量は逆行軌道の天体が元々の衛星系を破壊してしまうのに必要な最小質量に近い値となる.そのため海王星にトリトンが存在することは,海王星が持っていたであろう初期の衛星系の総質量への上限値を与える鍵となる.

捕獲直後のトリトンの軌道の軌道離心率は大きかったと考えられるが,その後 109 年未満の間に,潮汐散逸によって減衰したと考えられる (Goldreich et al. 1989など).しかし離心軌道にあるトリトンが他の衛星に与える擾乱は,小さい不規則衛星 (ネレイドなど) を 105 年のタイムスケールで不安定化させる (Nogueira et al. 2011),

さらに,Cuk & Gladman (2005) では,Kozai 機構がトリトンの平均近点を増加させることによって,円軌道化に必要なタイムスケールが太陽系の年齢を超えるという問題点を指摘している.その研究では,元々存在した順行軌道の衛星に対してトリトンが与える摂動が,衛星同士の相互破壊的な衝突を引き起こすというモデルを提案している.その衝突の結果として生成したデブリ円盤がトリトンと相互作用し,トリトンの軌道から角運動量を奪い,円軌道化のタイムスケールを 105 年にまで短くする.

しかしトリトン自身が破壊的な衝突を経験する前に,そのような衛星間の相互衝突を引き起こすことが出来るかは不明である.トリトンは逆行軌道にあるため,トリトンと順行衛星は一般に大きな相対速度を持ってしまう.

ここでは,海王星の初期に存在したであろう衛星系とトリトンの運動について,SyMBA コードを用いて N 体シミュレーションを行った.

議論

シミュレーション中に記録された衝突の大部分は,トリトンに対する衝突も,初期に存在した衛星同士の場合も,破壊的なものではなかった.そのため,初期に持っていた衛星の物質で構成されるデブリ円盤の形成は,現在考えている初期条件では発生しないと結論付けた.

さらに,破壊によってデブリ円盤が海王星のロッシュ限界の外に形成された場合,デブリの再集積のタイムスケールは ~ 102 年であり,デブリ円盤によるトリトンの軌道減衰タイムスケールの 104 - 105 年より短い.そのため,トリトンの軌道離心率を減衰させるより前に,デブリ同士が再集積してしまう.


初期の衛星系質量が天王星の衛星系の質量の 0.3 倍より大きい場合,衝突と近接遭遇を介して,トリトンの軌道をネレイドの軌道より内側に減少させされることが分かった.初期の衛星系とトリトンの相互作用がトリトンの円軌道化を促進し,ネレイドのような小さい不規則衛星は失われずに生き残る.

さらに初期の衛星系質量が天王星の衛星系質量の 0.3 - 1 倍の場合,トリトンは初期の大きな軌道傾斜角を維持しながら生き残る可能性が高い事が分かった.

さらに質量が重い系の場合は,現在の海王星の衛星系を再現する確率が低くなる (< 10%).

そのため,初期の質量比が現在の天王星と同程度であった場合,現在の海王星の衛星系と整合的になり,また元々存在したネレイド的な不規則衛星が生き残る可能性があると結論付けた.

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