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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1508.01365
Izidoro et al. (2015)
Terrestrial Planet Formation Constrained by Mars and the Structure of the Asteroid Belt
(火星と小惑星帯の構造による地球型惑星形成への制限)

概要

太陽系において、地球と火星の質量比は大きい値となっている。
この大きな質量比を実現するためには、原始惑星系内の 1 - 3 AUの範囲で固体物質が大量に失われる必要がある。そうでない場合は、火星が大きく成長しすぎるために地球と火星の質量比が小さくなってしまう。
Grand Tackモデルでは、巨大ガス惑星の移動によって 1 AU以遠の物質を取り除き、小惑星帯 (asteroid belt)の天体を力学的に励起する。

ここでは、地球型惑星の形成と小惑星帯の進化の計算をN体計算で行った。
初期条件は、微惑星と原始惑星の円盤の動径方向の密度分布を複数仮定し、木星と土星の軌道はほぼ円軌道で同一平面上に置いた。

密度分布が緩やかな円盤を初期条件に置いた場合は、重力自己励起によって小惑星帯は力学的に励起される。
しかしこの場合は火星が大きくなりすぎるという問題がある。

密度分布が半径の - 5.5乗に比例する場合は、地球と火星の質量比は現在のものと近くなる。
しかし今度は、小惑星帯が現在より"冷たすぎる"という結果になる。

結果として、どのような円盤の構造を置いても、地球型惑星の形成と小惑星帯の構造を同時に再現することは出来なかった。
そのため、Grand Tackモデルのような、その他の固体成分の散逸と小惑星帯の励起メカニズムが必要である。





太陽系形成において「火星が大きくなりすぎる問題」ってのがあって、微惑星の分布を普通に考えると火星が大きくなりすぎてしまいます。
だから、何らかの機構で地球以遠の固体物質を減らしてやって、火星の材料を減らすことで火星が大きく成長しすぎるのを防ぐという考えがあります。
例えばここでは、微惑星と原始惑星の密度分布を急にしてやると、火星周辺での固体成分の密度が小さくなることになるから火星が大きくなり過ぎないという結果になっています。

ただその条件だと、火星の質量はOKでも、小惑星帯(メインベルト)の力学的状態が現在と合わず"冷たすぎる"という問題が発生します。
初期のこの辺りでの微惑星や原始惑星の密度を多くする、つまり密度分布を緩やかにすると小惑星帯の力学的状態が合うようになりますが、今度は材料が多いせいでやはり火星が大きくなりすぎる、とのこと。

だから、あちらを立てればこちらが立たずという感じで、単に密度分布のべきを変えるだけでは、火星の質量と小惑星帯の軌道分布を同時に説明することは出来ないという結果になったということです。

Grand Tackモデルでは、ガス惑星が円盤中を内側まで移動してきて、地球より外側あたりの微惑星を散乱させて減らすということが提唱されています。
ここでは、「密度分布のべきをいじるだけでは双方の説明は出来ないから、Grand Tackモデルみたいな機構が必要だ」という結論を出しています。

まぁ、著者がGrand Tackモデルの提唱者グループなので当然かもしれませんが。

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