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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1508.02411
Becker et al. (2015)
WASP-47: A Hot Jupiter System with Two Additional Planets Discovered by K2
(WASP-47:K2による、ホットジュピター系での2個の追加の惑星検出)

概要

ケプラー宇宙望遠鏡のK2ミッションでの観測データから、WASP-47で既に発見されていたホットジュピターに加え、外側に海王星サイズ、内側にスーパーアースの2個の惑星を発見した。
K2の光度曲線と、トランジット時刻変動 (Transit Timing Variation, TTV)から、外側惑星のパラメータを決定した。

また、数値計算を行ってこの系の安定性とTTVを理論的に予測した。
理論的な予測からのTTVと観測でのTTVは良い一致が見られた。
TTVから2つの惑星の質量を決定し、もう1つの惑星に対しては質量の上限を与えた。

ホットジュピターのトランジット深さが深いため、地上観測からのTTVの検出が可能と考えられ、また中心星の明るさは視線速度での追観測を行うのに適している。

軌道安定性

軌道の安定性を確認するために、N体計算コードであるMercury 6を用いて数値計算を行った。
惑星質量については、トランジットから得られた惑星半径から推定される質量の範囲内でパラメータを振った。また軌道離心率は 0 - 0.3の範囲の初期条件を与えた。
この状態で、合計 1000個の計算を行った。
計算時間は、計算開始から10 Myrに達するまで、あるいは途中で軌道が不安定になり、惑星が系から放り出されるか、惑星同士が衝突するか、惑星が恒星に降着するまで行った。

その結果、30%が短いタイムスケールで不安定になった。
また、90%は長いタイムスケールで不安定だった。
計算開始後 ~ 104年以降は、その段階まで不安定にならずに生き延びたものはその後ほとんど安定に存在した。

軌道離心率の依存性について、初期の軌道離心率が低いものは系が生き残りやすく、e > 0.05のものはほとんどが不安定になった。
従って3惑星の軌道離心率はどれも小さいことが示唆される。
また、不安定の起こしやすさの惑星質量への依存性は見られなかった。

軌道計算から、ホットジュピターのWASP-47bと外側の惑星であるWASP-47dの平均運動共鳴の証拠は得られなかった。

恒星と惑星のパラメータ

恒星

・WASP-47
1.04太陽質量
1.15太陽半径
[M/H] = +0.36
有効温度 5576 K
可視等級 11.9

惑星

・WASP-47b
軌道周期:4.15912282日
337地球質量
12.71地球半径
superWASPプロジェクトによって既にトランジット法で発見されていた惑星で、ホットジュピターに分類される惑星。

・WASP-47c
軌道周期:0.789593日
< 8.9地球質量
1.817地球半径
TTVより惑星質量の上限が与えられた。
スーパーアースサイズの惑星である。

・WASP-47d
軌道周期:9.03079日
8.5地球質量
3.60地球半径
こちらはTTVにより惑星質量が決定された。
サイズ・質量的には海王星に似た惑星である。

この系の特徴について

WASP-47は独特の系である。
この系は、ホットジュピターを持つ系で、追加の中心星に近接する惑星が発見された初めての例である。

Exoplanet Orbit Databaseによると、80地球質量より重く、軌道周期10日以下の惑星を持つ系は 224個発見されている。
このうち更に惑星を持っていることが分かっている系はわずか6個であり、さらにその追加の惑星の軌道周期が100日未満であるものは存在しなかった。

3つともがトランジットを起こしていることからこの惑星系はほぼ同一平面上にあり、さらに数値計算からは軌道離心率が e > 0.05の場合は不安定なので、どれもほぼ円軌道であることを示唆する。
そのため、これらの3つの惑星は円盤の中を一緒に移動してきたか、移動の最終段階で系をコンパクトにする何らかのdampingがあった可能性がある。

また、TTVがK2ミッションでの観測で検出されたレアなケースでもある。
これは、
(1) TTV周期(42.7日)がK2ミッションの観測ベースライン(69日)よりも短い
(2) 惑星が検出可能なTTVシグナルを生み出すのに十分なほどの質量を持つ
という理由による。

中心星のWASP-47はVバンド等級が 11.9と比較的明るいので、視線速度での追観測が可能である。
またK2の光度曲線からは、恒星の自転に起因する変動が見られず、活動が静穏な恒星であることも視線速度での追観測に適している理由である。

結論

1. 既に発見されていたWASP-47bに加え、トランジットでさらに2つの惑星を発見した。内側のWASP-47cは超短周期惑星、外側のWASP-47dは海王星に類似したサイズである。

2. 惑星系は力学的に安定である。1000パターンの10 Myrに渡るシミュレーションを行い、初期軌道離心率が最も低い ~ 10%のものが不安定にならず生き残った。

3. 観測されているTTVと数値計算の結果はよく一致した。WASP-47bとWASP-47dの質量を決定することができ、WASP-47bについては視線速度法での先行観測からの値とも無矛盾であった。

4. この同一平面上でほぼ円軌道のコンパクトな系は、少なくとも木星サイズのサブセットは、中心星に向かって力学的に穏やかに移動することが出来るという事を示唆している。





ホットジュピターは単独で存在していることが多いという観測的な傾向があります。
(ただし本当に単独なのか、他にも惑星は存在するが検出できていないだけなのかは不明)
また、ホットジュピター以外にも惑星がある場合は、どれも中心性から遠く離れたところを公転する惑星でした。

今回は、ホットジュピターがある系で、かなり中心星に近い惑星が発見された初めての例ということです。

ここでは、ホットジュピターとこの2つの新発見の惑星が仲良く内側にmigrationしたという事が示唆されているけど、果たしてmigrationがちゃんと止められるのか、途中で共鳴に入らずに落ちてこられるのかは議論の余地がありそう。

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