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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1801.07959
Soto et al. (2018)
EPIC229426032 b and EPIC246067459 b: discovery of a highly inflated and a 'regular' pair of transiting hot Jupiters from K2
(EPIC229426032b と EPIC246067459b:K2 からの大きく膨張したものと '通常' のトランジットホットジュピターのペアの発見)
惑星の検出は,ケプラー K2 ミッションの Campaign 11 と 12 における測光データを元にしている.また,これらの恒星の視線速度データを,HARPS, FEROS, CORALIE 分光器で取得して特徴付けを行った.
EPIC 229426032b と EPIC 246067459b はそれぞれ,1.36,0.86 木星質量,1.63, 1.30 木星半径,軌道周期 2.18, 3.2 日である.
EPIC 229426032b は,大きく膨張した半径を持つ.一方で EPIC 246067459b は,この惑星が受けている強い輻射を考えると,理論モデルと整合的な半径を持っている.
これらの惑星の発見は,惑星大気の物理や惑星膨張を引き起こしている要因だけでなく,惑星形成と進化を研究するための良い対象である.特に EPIC 229426032b は,非常に膨張しているだけでなく中心星が明るい (V = 11.6) ため,フォローアップ研究に向いている.
スペクトル型:F6V
質量:1.28 太陽質量
半径:1.43 太陽半径
有効温度:6257 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
年齢:25.5 億歳
自転周期:5.11 日
質量:1.36 木星質量
半径:1.63 木星半径
平均密度:0.38 g cm-3
軌道長半径:0.036 AU
平衡温度:1915 K
日射量:3.05 × 109 erg s-1 cm-2
スペクトル型:G2V
質量:1.19 太陽質量
半径:1.59 太陽半径
有効温度:5630 K
金属量:[Fe/H] = 0.34
年齢:56.3 億歳
質量:0.86 木星質量
半径:1.30 木星半径
平均密度:0.56 g cm-3
軌道長半径:0.046 AU
平衡温度:1587 K
日射量:1.44 × 109 erg s-1 cm-2
その結果,EPIC 229426032b は,モデルから期待されるよりもずっと大きい半径を持っていることが分かった.
ホットジュピターの半径膨張と中心星の輻射の関連性についての先行研究が存在する (Demory & Seager 2011, Laughlin et al. 2011など).それらによると,日射量が 2 × 108 erg s-1 cm-2 の閾値よりも大きい場合は膨張半径を持つ.今回発見された惑星は,両方ともこの閾値より上の日射量を受けている.
EPIC 246067459b に関しては,水素・ヘリウム主体で固体コアを持たないと考えた場合,Fortney et al. (2007) のモデルと整合した半径を持っている.そのため,この惑星は膨張していないと考えることが出来る.
このことは,この惑星が閾値よりも大きな入射フラックスを受けているという事実を考えると珍しいことである.これに対するもっともらしい説明は,この惑星は金属量が多い (コアかエンベロープ,あるいはその両方に) というものである.しかし実際には惑星は膨張しており,純粋な水素ヘリウム主体の惑星であるという “印象” を与える (つまり,本来はもっと小さい半径を持っているはずだったが,半径膨張の効果によって一見整合的な半径になっている).
さらに,木星質量と木星より重い惑星を持つ恒星の金属量の違いも発見されている.木星質量の惑星を持つ恒星は,非常に大きな質量の惑星を持つ恒星よりもかなり金属量が豊富である.この報告は,後により高い統計的信頼性で確認されている (Santos et al. 2017).今回の系も,非常に金属量が豊富な恒星であるように思われる.
一方で EPIC 246067459b は,木星に煮た質量を持ち,半径は 1.30 木星半径である.
この惑星は惑星の半径膨張が起きるのに十分な日射量を受けているにも関わらず,半径は理論モデルと整合的である.これはこの惑星のコア質量がゼロより大きな値を持っているか,エンベロープの金属量が多いか,あるいはその両方で説明でき,これは本来の半径 (つまり膨張がなかった場合の半径) が観測されている値よりも小さい膨張した系であることを示唆している.
arXiv:1801.07959
Soto et al. (2018)
EPIC229426032 b and EPIC246067459 b: discovery of a highly inflated and a 'regular' pair of transiting hot Jupiters from K2
(EPIC229426032b と EPIC246067459b:K2 からの大きく膨張したものと '通常' のトランジットホットジュピターのペアの発見)
概要
EPIC 229426032 と EPIC 246067459 を公転する 2 つのホットジュピターの発見を報告する.惑星の検出は,ケプラー K2 ミッションの Campaign 11 と 12 における測光データを元にしている.また,これらの恒星の視線速度データを,HARPS, FEROS, CORALIE 分光器で取得して特徴付けを行った.
EPIC 229426032b と EPIC 246067459b はそれぞれ,1.36,0.86 木星質量,1.63, 1.30 木星半径,軌道周期 2.18, 3.2 日である.
EPIC 229426032b は,大きく膨張した半径を持つ.一方で EPIC 246067459b は,この惑星が受けている強い輻射を考えると,理論モデルと整合的な半径を持っている.
これらの惑星の発見は,惑星大気の物理や惑星膨張を引き起こしている要因だけでなく,惑星形成と進化を研究するための良い対象である.特に EPIC 229426032b は,非常に膨張しているだけでなく中心星が明るい (V = 11.6) ため,フォローアップ研究に向いている.
パラメータ
EPIC 229426032 系
EPIC 229426032
距離:468 pcスペクトル型:F6V
質量:1.28 太陽質量
半径:1.43 太陽半径
有効温度:6257 K
金属量:[Fe/H] = 0.14
年齢:25.5 億歳
自転周期:5.11 日
EPIC 229426032b
軌道周期:2.18057 日質量:1.36 木星質量
半径:1.63 木星半径
平均密度:0.38 g cm-3
軌道長半径:0.036 AU
平衡温度:1915 K
日射量:3.05 × 109 erg s-1 cm-2
EPIC 246067459 系
EPIC 246067459
距離:453 pcスペクトル型:G2V
質量:1.19 太陽質量
半径:1.59 太陽半径
有効温度:5630 K
金属量:[Fe/H] = 0.34
年齢:56.3 億歳
EPIC 246067459b
軌道周期:3.20466 日質量:0.86 木星質量
半径:1.30 木星半径
平均密度:0.56 g cm-3
軌道長半径:0.046 AU
平衡温度:1587 K
日射量:1.44 × 109 erg s-1 cm-2
議論
惑星半径の理論モデルとの比較
Fortney et al. (2007) による,水素・ヘリウム主体のガス惑星のモデルと質量半径を比較した.その結果,EPIC 229426032b は,モデルから期待されるよりもずっと大きい半径を持っていることが分かった.
ホットジュピターの半径膨張と中心星の輻射の関連性についての先行研究が存在する (Demory & Seager 2011, Laughlin et al. 2011など).それらによると,日射量が 2 × 108 erg s-1 cm-2 の閾値よりも大きい場合は膨張半径を持つ.今回発見された惑星は,両方ともこの閾値より上の日射量を受けている.
EPIC 246067459b に関しては,水素・ヘリウム主体で固体コアを持たないと考えた場合,Fortney et al. (2007) のモデルと整合した半径を持っている.そのため,この惑星は膨張していないと考えることが出来る.
このことは,この惑星が閾値よりも大きな入射フラックスを受けているという事実を考えると珍しいことである.これに対するもっともらしい説明は,この惑星は金属量が多い (コアかエンベロープ,あるいはその両方に) というものである.しかし実際には惑星は膨張しており,純粋な水素ヘリウム主体の惑星であるという “印象” を与える (つまり,本来はもっと小さい半径を持っているはずだったが,半径膨張の効果によって一見整合的な半径になっている).
金属量との相関
軌道周期が 100 日未満の巨大ガス惑星は,より長周期の巨大ガス惑星を持つ恒星よりも金属量が豊富な恒星の周りを公転しているという傾向がある (Jenkins et al. 2017).さらに,木星質量と木星より重い惑星を持つ恒星の金属量の違いも発見されている.木星質量の惑星を持つ恒星は,非常に大きな質量の惑星を持つ恒星よりもかなり金属量が豊富である.この報告は,後により高い統計的信頼性で確認されている (Santos et al. 2017).今回の系も,非常に金属量が豊富な恒星であるように思われる.
まとめ
EPIC 229426032b は非常に大きな半径を持つホットジュピターである,中心星 EPIC 229426032 は明るいため,さらなる大気研究を行うための良い候補である.一方で EPIC 246067459b は,木星に煮た質量を持ち,半径は 1.30 木星半径である.
この惑星は惑星の半径膨張が起きるのに十分な日射量を受けているにも関わらず,半径は理論モデルと整合的である.これはこの惑星のコア質量がゼロより大きな値を持っているか,エンベロープの金属量が多いか,あるいはその両方で説明でき,これは本来の半径 (つまり膨張がなかった場合の半径) が観測されている値よりも小さい膨張した系であることを示唆している.
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