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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1508.05715
Bonsor & Veras (2015)
A wide binary trigger for white dwarf pollution
(長周期の伴星が引き起こす白色矮星の汚染)
白色矮星の大気の重元素汚染を説明するためにこれまで提案されてきた複数の説は、重元素汚染が見られる白色矮星の数は、白色矮星の冷却期間 (cooling age)に伴って急激に減少することを予言する。
しかし観測ではこのトレンドは確認されておらず、また古い(形成後 1 - 5 Gyr、10 - 50億年)白色矮星でも重元素汚染されているものがあるという事実を説明することが難しい。
そこで、時間に依存しない重元素汚染のメカニズムを提案する。
ここで提案するのは、大きく離れた軌道で白色矮星と連星をなす、長周期の伴星によって汚染が引き起こされるというモデルである。
長周期の伴星が銀河潮汐 (galactic tide)によって軌道を乱された結果として、伴星は主星が白色矮星へと進化した数十億年の間で初めて主星に接近する軌道となる。
伴星が主星へ接近することによって、白色矮星周りの惑星系を乱し、微惑星を星をかすめる軌道 (star-grazing orbit)へと変化させる。
その結果、微惑星によって白色矮星が重元素汚染されるというメカニズムである。
この機構は年齢に依存しない。
ただし、観測のサンプル数の問題から、これまでに提案されたメカニズムとこのメカニズムのどちらが正しいかを判別することは今のところ出来ない。
白色矮星周りの長周期の伴星の存在頻度による制限が必要であり、これは将来的にはGaiaを用いた観測で実現することが出来るだろう。
DA型の白色矮星では、数日から数週間というタイムスケールで沈んでしまい、DB型の場合も104 - 106年で沈んで表面付近から失われる(Koester & Wilken 2006)。
そのため、白色矮星のスペクトル中に重元素由来の輝線が検出された場合は、最近に重元素の汚染があったことを示す証拠となる。
汚染源は複数提案されているが、星間物質による汚染は否定的な結論が得られている(Farihi et al. 2010 など)。
そのため、惑星や小天体などの惑星物質 (planetary material)の降着による汚染という説が提案されている。
HARPSの観測によると、太陽型星の少なくとも 50%は、軌道周期 100日未満の惑星を少なくとも 1つと考えられている(Mayor et al. 2011)。
またHerschel (ハーシェル宇宙望遠鏡)による観測からは、F, G, K型星の少なくとも 20%は、検出可能なデブリ円盤を持つと考えられている(Eiroa et al. 2013)。
恒星の周りの惑星のうち、近接したもの (1 - 5 AU未満の軌道長半径を持つもの)は恒星に飲み込まれる可能性があるが、全ての外側の惑星が破壊されるという証拠は存在しない。
そのため、恒星が白色矮星に進化した後でも、惑星や小惑星・彗星といった惑星物質は存在し続けると考えられる。
白色矮星が重い小惑星帯を持てば、白色矮星の重元素汚染を説明できると考えられている(Bonsor et al 2011, Debes et al 2012, Frewen & Hansen 2014)。
しかし、星をかすめるような軌道へ散乱される小惑星や彗星の数は、時間の経過とともに急激に減少すると予言されている(Bonsor et al 2011, Debes et al 2012)。
しかし、古い白色矮星には汚染されているものが少ないという観測的な証拠は存在しない(Wyatt et al. 2014, Koester et al. 2014)。
また、典型的な重元素汚染が見られる白色矮星であるヴァン・マーネン星 (van Maanen's star)は、有効温度が 6220 Kであり、これは白色矮星進化後の冷却期間が ~ 3 Gyr (30億年)と非常に古い白色矮星であることを意味している(Sion et al. 2009)。
この他にも、有効温度が 8000 K未満、冷却期間に置き換えると ~ 5 Gyr程度の、汚染されているが古い白色矮星は多数発見されている。
そのため、従来の説では白色矮星の重元素汚染をうまく説明することが出来ない。
ここで新たに提案するのは、長周期の伴星の軌道の変化によって惑星物質の軌道が乱され、惑星物質による重元素汚染が引き起こされるという説である。
伴星の軌道長半径が 1000 AU以上という非常に長周期の離れた軌道であり、そのままでは白色矮星周りの惑星系には影響を及ぼさない。しかし銀河潮汐によって伴星の軌道が変化させられる。
そのため、銀河潮汐が伴星の軌道を変化させるまでの間は、惑星系は数十億年以上もの間乱されずに存在し続ける。
1太陽質量の主星は、主系列段階を終えて巨星へ進化した後、外層を放出して最終的には 0.52太陽質量の白色矮星へと進化する(Veras et al. 2013)。
また、伴星の 0.8太陽質量というのは、主系列星の典型的な質量である(Parravano et al. 2011)。
さらに初期質量が 0.8太陽質量の恒星は、主系列段階の年齢が宇宙年齢と同程度 (~ 14 Gyr)である。
主星は、シンプルに1つの惑星と、1つの微惑星の円盤 (あるいはデブリの円盤)を持つと仮定する。
これは太陽系で言う、海王星とカイパーベルトのようなものである。
また、惑星の公転面と伴星の公転面は同一と仮定する。
惑星の初期の軌道長半径は 30 AU、微惑星の円盤は 30 - 50 AUに分布しているとする。
従って、主星が 1太陽質量から 0.52太陽質量の白色矮星へと進化した後は、惑星の軌道長半径は 60 AU程度に、微惑星の円盤は 60 - 100 AUの分布へと変化する。
(軌道の変化は断熱的であると仮定)
ここでは、円盤内の小天体に対するYORP効果や、ヤルコフスキー効果 (Yarkovsly effect)は無視している。
また、計算時間を短くするため、小天体が白色矮星の 0.1 AU以内に接近したものは近接接近する軌道に入り、破壊されて汚染源になるとみなした。
この条件で、N体計算用のMercuryというコードを用いてシミュレーションを行っている。
計算では銀河潮汐の効果は直接入れず、潮汐によって長周期の伴星の離心率が大きくなり、近点付近で惑星系への擾乱が大きくなるようなセットアップとした。
arXiv:1508.05715
Bonsor & Veras (2015)
A wide binary trigger for white dwarf pollution
(長周期の伴星が引き起こす白色矮星の汚染)
概要
白色矮星大気の重元素の汚染は、惑星系の残骸によるものであるという可能性について考察する。白色矮星の大気の重元素汚染を説明するためにこれまで提案されてきた複数の説は、重元素汚染が見られる白色矮星の数は、白色矮星の冷却期間 (cooling age)に伴って急激に減少することを予言する。
しかし観測ではこのトレンドは確認されておらず、また古い(形成後 1 - 5 Gyr、10 - 50億年)白色矮星でも重元素汚染されているものがあるという事実を説明することが難しい。
そこで、時間に依存しない重元素汚染のメカニズムを提案する。
ここで提案するのは、大きく離れた軌道で白色矮星と連星をなす、長周期の伴星によって汚染が引き起こされるというモデルである。
長周期の伴星が銀河潮汐 (galactic tide)によって軌道を乱された結果として、伴星は主星が白色矮星へと進化した数十億年の間で初めて主星に接近する軌道となる。
伴星が主星へ接近することによって、白色矮星周りの惑星系を乱し、微惑星を星をかすめる軌道 (star-grazing orbit)へと変化させる。
その結果、微惑星によって白色矮星が重元素汚染されるというメカニズムである。
この機構は年齢に依存しない。
ただし、観測のサンプル数の問題から、これまでに提案されたメカニズムとこのメカニズムのどちらが正しいかを判別することは今のところ出来ない。
白色矮星周りの長周期の伴星の存在頻度による制限が必要であり、これは将来的にはGaiaを用いた観測で実現することが出来るだろう。
白色矮星の重元素汚染について
白色矮星大気での重元素検出
白色矮星の大気中では、ヘリウムより重い元素は急速に沈んでいく。DA型の白色矮星では、数日から数週間というタイムスケールで沈んでしまい、DB型の場合も104 - 106年で沈んで表面付近から失われる(Koester & Wilken 2006)。
そのため、白色矮星のスペクトル中に重元素由来の輝線が検出された場合は、最近に重元素の汚染があったことを示す証拠となる。
汚染源は複数提案されているが、星間物質による汚染は否定的な結論が得られている(Farihi et al. 2010 など)。
そのため、惑星や小天体などの惑星物質 (planetary material)の降着による汚染という説が提案されている。
惑星物質による汚染説とその問題点
恒星が惑星系を持つことは一般的だと考えられている。HARPSの観測によると、太陽型星の少なくとも 50%は、軌道周期 100日未満の惑星を少なくとも 1つと考えられている(Mayor et al. 2011)。
またHerschel (ハーシェル宇宙望遠鏡)による観測からは、F, G, K型星の少なくとも 20%は、検出可能なデブリ円盤を持つと考えられている(Eiroa et al. 2013)。
恒星の周りの惑星のうち、近接したもの (1 - 5 AU未満の軌道長半径を持つもの)は恒星に飲み込まれる可能性があるが、全ての外側の惑星が破壊されるという証拠は存在しない。
そのため、恒星が白色矮星に進化した後でも、惑星や小惑星・彗星といった惑星物質は存在し続けると考えられる。
白色矮星が重い小惑星帯を持てば、白色矮星の重元素汚染を説明できると考えられている(Bonsor et al 2011, Debes et al 2012, Frewen & Hansen 2014)。
しかし、星をかすめるような軌道へ散乱される小惑星や彗星の数は、時間の経過とともに急激に減少すると予言されている(Bonsor et al 2011, Debes et al 2012)。
しかし、古い白色矮星には汚染されているものが少ないという観測的な証拠は存在しない(Wyatt et al. 2014, Koester et al. 2014)。
また、典型的な重元素汚染が見られる白色矮星であるヴァン・マーネン星 (van Maanen's star)は、有効温度が 6220 Kであり、これは白色矮星進化後の冷却期間が ~ 3 Gyr (30億年)と非常に古い白色矮星であることを意味している(Sion et al. 2009)。
この他にも、有効温度が 8000 K未満、冷却期間に置き換えると ~ 5 Gyr程度の、汚染されているが古い白色矮星は多数発見されている。
そのため、従来の説では白色矮星の重元素汚染をうまく説明することが出来ない。
ここで新たに提案するのは、長周期の伴星の軌道の変化によって惑星物質の軌道が乱され、惑星物質による重元素汚染が引き起こされるという説である。
伴星の軌道長半径が 1000 AU以上という非常に長周期の離れた軌道であり、そのままでは白色矮星周りの惑星系には影響を及ぼさない。しかし銀河潮汐によって伴星の軌道が変化させられる。
そのため、銀河潮汐が伴星の軌道を変化させるまでの間は、惑星系は数十億年以上もの間乱されずに存在し続ける。
モデルの設定と計算
ここでは、初期に1太陽質量を持つ主星と、0.8太陽質量の伴星が連星系を成しているという系を考える。1太陽質量の主星は、主系列段階を終えて巨星へ進化した後、外層を放出して最終的には 0.52太陽質量の白色矮星へと進化する(Veras et al. 2013)。
また、伴星の 0.8太陽質量というのは、主系列星の典型的な質量である(Parravano et al. 2011)。
さらに初期質量が 0.8太陽質量の恒星は、主系列段階の年齢が宇宙年齢と同程度 (~ 14 Gyr)である。
主星は、シンプルに1つの惑星と、1つの微惑星の円盤 (あるいはデブリの円盤)を持つと仮定する。
これは太陽系で言う、海王星とカイパーベルトのようなものである。
また、惑星の公転面と伴星の公転面は同一と仮定する。
惑星の初期の軌道長半径は 30 AU、微惑星の円盤は 30 - 50 AUに分布しているとする。
従って、主星が 1太陽質量から 0.52太陽質量の白色矮星へと進化した後は、惑星の軌道長半径は 60 AU程度に、微惑星の円盤は 60 - 100 AUの分布へと変化する。
(軌道の変化は断熱的であると仮定)
ここでは、円盤内の小天体に対するYORP効果や、ヤルコフスキー効果 (Yarkovsly effect)は無視している。
また、計算時間を短くするため、小天体が白色矮星の 0.1 AU以内に接近したものは近接接近する軌道に入り、破壊されて汚染源になるとみなした。
この条件で、N体計算用のMercuryというコードを用いてシミュレーションを行っている。
計算では銀河潮汐の効果は直接入れず、潮汐によって長周期の伴星の離心率が大きくなり、近点付近で惑星系への擾乱が大きくなるようなセットアップとした。
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