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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1803.00777
Pascucci et al. (2018)
A Universal Break in the Planet-to-Star Mass-Ratio Function of Kepler MKG stars
(ケプラー MKG 星の惑星-恒星質量比関数における普遍的なブレーク)
解析の結果,規格化因子を除いて,惑星の存在頻度と質量比 q は同じ broken power law (折れ曲がったべき乗則) で記述できる事を見出した.質量比 q ~ 3 × 10-5 でべき乗則のブレーク (折れ曲がり) があり,中心星の質量が 1 太陽質量未満の場合は,恒星のスペクトル型に関係なく同じ 1 でブレークを示す.
今回の発見は,惑星-恒星質量比 q は,惑星形成過程において惑星質量よりもより基本的な量であることを示唆している.
この結果と,重力マイクロレンズ惑星での結果とを比較した.重力マイクロレンズで発見されている惑星は,大部分が中心星が 1 太陽質量未満という条件を満たしている.またマイクロレンズ惑星は,大部分がその系のスノーラインよりも外側を公転している.
マイクロレンズ惑星における q のブレークは,ケプラー惑星の結果より 3 - 10 倍程度高い値となった.従って,スノーラインよりも内側において最も普遍的に存在する惑星は,スノーラインより外側において最も普遍的に存在する惑星よりも 3 - 10 倍小さいことが示唆される.
太陽系では,ガス惑星の内側に岩石惑星があるという構造になっており,これはケプラーと重力マイクロレンズから示唆される質量比関数を複合した結果に大まかに従っている.しかし,系外惑星の集団は,太陽系の惑星質量の分布よりも極端ではない.
スノーラインを超える位置にある惑星の質量比関数が同様に中心星のスペクトル型に依存しないかどうかを決定することは,惑星形成の包括的な理論を構築する上で不可欠である.
最近,Suzuki et al. (2016) は,重力マイクロレンズで発見された系外惑星の存在頻度と q は,q ~ 10-4 の所にブレークを持つ broken power law でよく記述できることを発見した.この q の値は,中心星質量の中央値 ~ 0.6 太陽質量に対して ~ 20 地球質量に対応する質量比である.
Udalski et al. (2018) は新しい手法を用いて q が 10-4 未満のマイクロレンズ惑星系の再解析を行い,存在頻度関数のべき法則の指数を更新した.またその値は,より大きな q の範囲とは異なることを確認した.
ここでは,惑星の存在頻度を惑星-恒星質量比 q の関数として分析するマイクロレンズ法の視点を,ケプラーで発見された系外惑星に適用し,惑星の存在頻度と q の関係を調べた.
その結果,中心星質量が 1 太陽質量未満の場合は,中心星のスペクトル型に関わらず q ~ 3 × 10-5 でべき乗則のブレークが存在することを発見した.そのため,これは普遍的な質量比関数である可能性があることを指摘する.
惑星の存在個数を,質量比 q の関数として以下のように表現する.
\[
\frac{dN}{d\log q}=A\left(\frac{q}{q_{\rm br}}\right)^{n}
\]
ここで \(A\) は規格化因子であり,\(q_{\rm br}\sim2.8\times 10^{-5}\) とする.これはブレークが起きる q の値に対応している.\(q<q_{\rm br}\) の時は \(n\sim 1\),\(q>q_{\rm br}\) のときは \(n\sim -2.9\) である.
中心星が M,K,G,F 型星の場合,\(q_{\rm br}\) はそれぞれ 2.9,2.8,2.8,1.9 となる.そのため,中心星の質量が 1 太陽質量以下 (ここでは F 型星以外) の場合は,規格化因子 \(A\) を除いて,他のパラメータは恒星のスペクトル型によらず同一の値となる事が分かった.このことは,普遍的な質量比関数が存在することを示唆している.
今回の結果は,スノーライン内側での最も一般的な惑星の「中心星に対する質量比」は一定であるが,「質量」は固定されておらず,恒星質量に伴って線形に増加することを示唆している.例えば M 型矮星まわりでは ~ 3.5 - 4.5 地球質量の惑星が最も一般的で,G 型星まわりでは ~ 8 - 9 地球質量が最も一般的であることが予想される (「最も多い惑星-恒星の質量比」が一定値であるため).
関数のべき乗則のブレークが起きるのは \(q\sim3\times10^{-5}\) であり,これは重力マイクロレンズで発見されている惑星の場合のブレークよりも ~ 3 - 10 倍小さい値である.
arXiv:1803.00777
Pascucci et al. (2018)
A Universal Break in the Planet-to-Star Mass-Ratio Function of Kepler MKG stars
(ケプラー MKG 星の惑星-恒星質量比関数における普遍的なブレーク)
概要
重力マイクロレンズ法で発見された惑星に対して行われている分析アプローチに倣い,ケプラーで発見された系外惑星の存在頻度を,惑星半径や質量の関数としてではなく,惑星と恒星の質量比 q の関数として定量化を行った.ここで解析に用いたのは,ケプラーで発見されている惑星のうち,半径が 1 - 6 地球半径,軌道周期 100 日未満のものである.解析の結果,規格化因子を除いて,惑星の存在頻度と質量比 q は同じ broken power law (折れ曲がったべき乗則) で記述できる事を見出した.質量比 q ~ 3 × 10-5 でべき乗則のブレーク (折れ曲がり) があり,中心星の質量が 1 太陽質量未満の場合は,恒星のスペクトル型に関係なく同じ 1 でブレークを示す.
今回の発見は,惑星-恒星質量比 q は,惑星形成過程において惑星質量よりもより基本的な量であることを示唆している.
この結果と,重力マイクロレンズ惑星での結果とを比較した.重力マイクロレンズで発見されている惑星は,大部分が中心星が 1 太陽質量未満という条件を満たしている.またマイクロレンズ惑星は,大部分がその系のスノーラインよりも外側を公転している.
マイクロレンズ惑星における q のブレークは,ケプラー惑星の結果より 3 - 10 倍程度高い値となった.従って,スノーラインよりも内側において最も普遍的に存在する惑星は,スノーラインより外側において最も普遍的に存在する惑星よりも 3 - 10 倍小さいことが示唆される.
太陽系では,ガス惑星の内側に岩石惑星があるという構造になっており,これはケプラーと重力マイクロレンズから示唆される質量比関数を複合した結果に大まかに従っている.しかし,系外惑星の集団は,太陽系の惑星質量の分布よりも極端ではない.
スノーラインを超える位置にある惑星の質量比関数が同様に中心星のスペクトル型に依存しないかどうかを決定することは,惑星形成の包括的な理論を構築する上で不可欠である.
重力マイクロレンズ惑星における質量比のブレーク
重力マイクロレンズ法は,恒星まわりのスノーライン付近やそれより遠方を公転する,海王星質量未満の質量範囲の惑星に対して,現在のところ最も感度の高い検出手法である.惑星-恒星質量比 q は重力マイクロレンズ観測から良く決定することが出来る量であるが,恒星質量は不明の場合が多い.最近,Suzuki et al. (2016) は,重力マイクロレンズで発見された系外惑星の存在頻度と q は,q ~ 10-4 の所にブレークを持つ broken power law でよく記述できることを発見した.この q の値は,中心星質量の中央値 ~ 0.6 太陽質量に対して ~ 20 地球質量に対応する質量比である.
Udalski et al. (2018) は新しい手法を用いて q が 10-4 未満のマイクロレンズ惑星系の再解析を行い,存在頻度関数のべき法則の指数を更新した.またその値は,より大きな q の範囲とは異なることを確認した.
ここでは,惑星の存在頻度を惑星-恒星質量比 q の関数として分析するマイクロレンズ法の視点を,ケプラーで発見された系外惑星に適用し,惑星の存在頻度と q の関係を調べた.
その結果,中心星質量が 1 太陽質量未満の場合は,中心星のスペクトル型に関わらず q ~ 3 × 10-5 でべき乗則のブレークが存在することを発見した.そのため,これは普遍的な質量比関数である可能性があることを指摘する.
ケプラー惑星の質量比関数
ここでは,1 - 6 地球半径,軌道周期 100 日未満のケプラー惑星に対して解析を行った.惑星の存在個数を,質量比 q の関数として以下のように表現する.
\[
\frac{dN}{d\log q}=A\left(\frac{q}{q_{\rm br}}\right)^{n}
\]
ここで \(A\) は規格化因子であり,\(q_{\rm br}\sim2.8\times 10^{-5}\) とする.これはブレークが起きる q の値に対応している.\(q<q_{\rm br}\) の時は \(n\sim 1\),\(q>q_{\rm br}\) のときは \(n\sim -2.9\) である.
中心星が M,K,G,F 型星の場合,\(q_{\rm br}\) はそれぞれ 2.9,2.8,2.8,1.9 となる.そのため,中心星の質量が 1 太陽質量以下 (ここでは F 型星以外) の場合は,規格化因子 \(A\) を除いて,他のパラメータは恒星のスペクトル型によらず同一の値となる事が分かった.このことは,普遍的な質量比関数が存在することを示唆している.
今回の結果は,スノーライン内側での最も一般的な惑星の「中心星に対する質量比」は一定であるが,「質量」は固定されておらず,恒星質量に伴って線形に増加することを示唆している.例えば M 型矮星まわりでは ~ 3.5 - 4.5 地球質量の惑星が最も一般的で,G 型星まわりでは ~ 8 - 9 地球質量が最も一般的であることが予想される (「最も多い惑星-恒星の質量比」が一定値であるため).
関数のべき乗則のブレークが起きるのは \(q\sim3\times10^{-5}\) であり,これは重力マイクロレンズで発見されている惑星の場合のブレークよりも ~ 3 - 10 倍小さい値である.
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