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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1508.05924
Holler et al. (2015)
On the surface composition of Triton's southern latitudes
(トリトン南半分の表面組成について)

概要

NASAのInfrared Telescope Facility (IRTF)のSpeXを用いて、0.7 - 2.5 μmの近赤外領域で海王星の衛星であるトリトンを観測した。
観測期間は 2002 - 2014年で、合計 63夜の観測を行った。

トリトンはこの波長域に、窒素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素、水のスペクトル線の特徴を持つ。
また、2.405 μmの吸収線は、エタンか、13COによるものと考えられる。

揮発性の氷 (窒素、一酸化炭素、メタン)によるスペクトルは、トリトンの回転に伴う変動が見られたが、不揮発性の氷 (二酸化炭素、水)は変動が小さかった。

窒素、メタンの吸収は、観測の期間を通じて増加した。一方、不揮発性物質の吸収は観測の期間を通して一定だった。
これらのトリトンの南半球の観測結果から、トリトン表面は不揮発性の氷が主要な成分であることが分かった。
そして、太陽直下点 (sub-solar point)の北上に伴って、揮発性の氷が見え始めている状態であるということが分かった。

トリトンの観測と特徴

トリトンの表面組成

トリトンの画像は、1989年8月のボイジャー2号の接近の際に撮影された。
この時の撮影では、表面に大きく色の異なる部分があることが判明し、これは異なる組成の氷が表面に存在するためだと考えられている。

トリトンはしばしば冥王星と比較される。
2つの天体はサイズなどの点で非常に似ており、同じ起源を持つ天体であると考えられている。
トリトンも元々は冥王星と同じカイパーベルト天体であり、海王星に捕獲された結果として衛星になったと考えられる。

しかし表面の様子は異なり、トリトンの表面の氷はより多様である。
地上観測からは、窒素、一酸化炭素、メタン、二酸化炭素、水の氷が確認されている(Cruikshank et al. 1993, 2000)。
また、エタンと思われる特徴も検出されている(DeMeo et al. 2010)。

トリトンの大気

トリトンの表面温度は 38 Kである(Broadfoot et al. 1989, Tryka et al. 1993)。
この温度では、窒素、一酸化炭素、メタンは無視できない分圧を持つ。
一方、二酸化炭素、水、エタンは無視できる程度の分圧しか持たない(Fray & Schmitt 2009)。

この低い表面温度と高いアルベド (0.719, Hicks & Buratti (2004)による)にも関わらず、ボイジャー2号の観測によるとタイタン大気の圧力は 14 ± 1 μbarと測定されている(Gurrola 1995)。
しかし1997年にあったトリトンによる恒星の掩蔽の観測結果からは、トリトンの気圧は驚くほど増加している事が分かっている(Elliot et al. 1998)。
2008年にもトリトンによる恒星の掩蔽があったが、データがまだ解析されていないため、現在の大気の状態は不明である。

トリトンの大気は窒素分子が大部分を占め、微量の一酸化炭素とメタンを含む(Tyler et al. 1989, Lellouch et al. 2010)。
トリトン大気の窒素に対するメタンの混合比率は、~ 10-4である(Lellouch et al. 2010)。

トリトンの太陽直下点 (sub-solar point)は時間とともに移動する。
これは、海王星の自転軸傾斜角 (~ 30°)、トリトンの軌道傾斜角 (~ 20°、ただし逆行軌道)、トリトンの軌道の交点の歳差 (周期 ~ 637 ± 40年)によるものであり、太陽直下点はトリトンの +50°〜-50° (北緯50度から南緯50度に相当)を移動する。

トリトンの太陽直下点は 2000年に最も南に達し、-50°となった。
その後北上し、2015年中頃では -42°にある。
そのため、ボイジャー2号が撮影をした1989年は、太陽直下点は南下をしている時期である。

観測結果

南半球の長い"夏"の期間の間、揮発性物質の氷は昇華し、日射量が小さく温度が低い北半球へ運ばれている。
これによって、南半球部分の不揮発性物質で出来た基質が見えており、トリトン表面の色の違いの原因となっている。

2.405 μmでの吸収はおそらくエタンによるもので、不揮発性物質で出来た基質の中にある混入物だと考えられる。






はやく2008年の掩蔽観測の解析をしてほしい…。なぜまだ出ていないんだ。

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