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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.01209
Malhotra et al. (2018)
Neptune's 5:2 Resonance in the Kuiper Belt
(カイパーベルト中の海王星の 5:2 共鳴)
これらの疑問点を明らかにするため,この共鳴付近の位相空間についての研究を行った.円軌道の同一平面制限三体モデルの Poincar ́e section (ポアンカレセクション,ポアンカレ断面図) を使用した.
その結果,軌道離心率の増加に伴って,位相空間構造に幾つかの転移が存在することを見出した.これを海王星軌道に対する共鳴軌道の特性で説明する.
非常に小さい離心率では共鳴幅は狭いが,離心率が 0.2 程度より大きいと急激に共鳴幅は大きくなり,離心率 0.4 付近で最大になる.このときの共鳴幅は,2:1 共鳴と 3:2 共鳴の最大幅と同程度となる.
これらの結果を N 体数値シミュレーションで確認した.このシミュレーションには 4 つの全ての巨大惑星の効果と,カイパーベルト天体の軌道傾斜角の効果を含む.
その結果,この共鳴に入っているカイパーベルト天体の長期的な安定性は,軌道傾斜角に強く依存はしないことが分かった.また安定共鳴領域の境界は,単純化された三体モデルで見られるものと非常に似ている.ただし離心率が ~ 0.55 を超えるものは不安定になる.このような離心率になると,海王星との近接遭遇からは位相が保護されるが,天王星との不安定化遭遇からは保護されない.
結論として,5:2 共鳴のカイパーベルト天体の存在は,位相空間構造およびこの共鳴における長期的な安定性の基本的な考察の観点から,自然に解釈することが出来る.
これまでに多数の共鳴が発見されている.しかし最も数が多いのは,海王星との 1:1,3:2,2:1 共鳴に入っている天体と,5:2 外部平均運動共鳴に入っている天体である.1:1,3:2 と 2:1 平均運動共鳴に入っている天体多いことは理論的な研究からも予測されていた.しかし Chiang et al. (2003) は 5:2 平均運動共鳴にいる天体の数が多いことは特に驚きであり,これまでに提案されている理論モデルではこれを説明するのが難しいことを初めて指摘した.
5:2 共鳴は 3 次の共鳴であり,軌道長半径は 55 AU になる,1 次の共鳴である 2:1 共鳴と 3:2 共鳴に比べると海王星より離れている.そのため,共鳴の影響は比較的弱いことが予想される.外部太陽系の力学的歴史についてのこれまでのモデル研究は,上記のその他の共鳴に捕獲された天体数と比べて,5:2 共鳴に捕獲される KBOs の数を遥かに少なく予想している.そのため,5:2 平均運動共鳴に入っているカイパーベルト天体が多いという観測的証拠は,驚くべきことである.
観測バイアスを補正した後で,Volk et al. (2016) による最近の解析では,5:2 共鳴にいる天体のうち絶対等級が Hr < 8.666 のもの (50 - 100 km サイズに相当) の数は,少なくとも ~ 8500 (+7500, -4700) 個であると推定されている.これは 2:1 共鳴と 3:2 共鳴に入っている天体数と類似している.Deep Ecliptic Survey (Elliot et al. 2005) の結果に基づくこれまでの 5:2 共鳴天体の個数の推定値は,2:1 共鳴に入っている天体の個数より僅かに少なく,また 3:2 共鳴の半分程度と推定されていた (Adams et al. 2014).
さらに,Chiang et al. (2003) と Volk et al. (2016) の両方で,5:2 共鳴に入っているカイパーベルト天体は軌道離心率が 0.4 付近に集中していることが指摘されている.
arXiv:1804.01209
Malhotra et al. (2018)
Neptune's 5:2 Resonance in the Kuiper Belt
(カイパーベルト中の海王星の 5:2 共鳴)
概要
海王星と 5:2 軌道共鳴に入っているカイパーベルト天体の観測結果には,2 つの未解決問題が存在する.一つ目は,この 3 次の共鳴に入っている天体が驚くほど多いという点である.1 次の共鳴である 3:2 共鳴にいる Plutino (プルーティーノ天体) と 2:1 共鳴にいる Twotino (トゥーティーノ天体) の主要な数と比べても多い.二つ目は,5:2 共鳴に入っている天体の軌道離心率が 0.4 付近に集中している点である.これらの疑問点を明らかにするため,この共鳴付近の位相空間についての研究を行った.円軌道の同一平面制限三体モデルの Poincar ́e section (ポアンカレセクション,ポアンカレ断面図) を使用した.
その結果,軌道離心率の増加に伴って,位相空間構造に幾つかの転移が存在することを見出した.これを海王星軌道に対する共鳴軌道の特性で説明する.
非常に小さい離心率では共鳴幅は狭いが,離心率が 0.2 程度より大きいと急激に共鳴幅は大きくなり,離心率 0.4 付近で最大になる.このときの共鳴幅は,2:1 共鳴と 3:2 共鳴の最大幅と同程度となる.
これらの結果を N 体数値シミュレーションで確認した.このシミュレーションには 4 つの全ての巨大惑星の効果と,カイパーベルト天体の軌道傾斜角の効果を含む.
その結果,この共鳴に入っているカイパーベルト天体の長期的な安定性は,軌道傾斜角に強く依存はしないことが分かった.また安定共鳴領域の境界は,単純化された三体モデルで見られるものと非常に似ている.ただし離心率が ~ 0.55 を超えるものは不安定になる.このような離心率になると,海王星との近接遭遇からは位相が保護されるが,天王星との不安定化遭遇からは保護されない.
結論として,5:2 共鳴のカイパーベルト天体の存在は,位相空間構造およびこの共鳴における長期的な安定性の基本的な考察の観点から,自然に解釈することが出来る.
背景
カイパーベルト天体の軌道周期の分布の特徴として,海王星の軌道周期との小さな整数比になっているものが多いというものがある.海王星との軌道共鳴に入っている天体の個数は,海王星やその他の巨大惑星の移動と関連しているため,興味深い研究対象である.これまでに多数の共鳴が発見されている.しかし最も数が多いのは,海王星との 1:1,3:2,2:1 共鳴に入っている天体と,5:2 外部平均運動共鳴に入っている天体である.1:1,3:2 と 2:1 平均運動共鳴に入っている天体多いことは理論的な研究からも予測されていた.しかし Chiang et al. (2003) は 5:2 平均運動共鳴にいる天体の数が多いことは特に驚きであり,これまでに提案されている理論モデルではこれを説明するのが難しいことを初めて指摘した.
5:2 共鳴は 3 次の共鳴であり,軌道長半径は 55 AU になる,1 次の共鳴である 2:1 共鳴と 3:2 共鳴に比べると海王星より離れている.そのため,共鳴の影響は比較的弱いことが予想される.外部太陽系の力学的歴史についてのこれまでのモデル研究は,上記のその他の共鳴に捕獲された天体数と比べて,5:2 共鳴に捕獲される KBOs の数を遥かに少なく予想している.そのため,5:2 平均運動共鳴に入っているカイパーベルト天体が多いという観測的証拠は,驚くべきことである.
観測バイアスを補正した後で,Volk et al. (2016) による最近の解析では,5:2 共鳴にいる天体のうち絶対等級が Hr < 8.666 のもの (50 - 100 km サイズに相当) の数は,少なくとも ~ 8500 (+7500, -4700) 個であると推定されている.これは 2:1 共鳴と 3:2 共鳴に入っている天体数と類似している.Deep Ecliptic Survey (Elliot et al. 2005) の結果に基づくこれまでの 5:2 共鳴天体の個数の推定値は,2:1 共鳴に入っている天体の個数より僅かに少なく,また 3:2 共鳴の半分程度と推定されていた (Adams et al. 2014).
さらに,Chiang et al. (2003) と Volk et al. (2016) の両方で,5:2 共鳴に入っているカイパーベルト天体は軌道離心率が 0.4 付近に集中していることが指摘されている.
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