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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.01869
Almenara et al. (2018)
SOPHIE velocimetry of Kepler transit candidates XVIII. Radial velocity confirmation, absolute masses and radii, and origin of the Kepler-419 multiplanetary system
(ケプラートランジット候補の SOPHIE 速度測定 XVIII.ケプラー419 複数惑星系の視線速度確認,絶対的質量と半径,および起源)
内側にあるのは 3 木星質量の惑星ケプラー419b で,69.8 日周期でトランジットを起こしている.また,軌道離心率は大きい.また 7.5 木星質量のトランジットしない外側の惑星ケプラー419c が,ケプラー419b のトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) から検出されている.こちらは軌道周期が 675 日で,やや離心率が大きい軌道を持つ.
ここでは, SOPHIE 分光器を用いた 2 年以上に渡る測定から,新しい視線速度測定データを取得した.その結果,両惑星を共に明確に検出した.
得られた視線速度データを,ケプラーの測光データと合わせて解析した.視線速度のデータを含めることで,TTV データ単独で解析した場合に特有の,\(MR^{-3}\) の縮退を解くことが出来る.そのため,恒星・惑星の半径と,質量の絶対値の測定を行うことが可能になる.
恒星と内側惑星ケプラー419b の半径は,それぞれ 12% と 13% の不定性で決定出来た.また,恒星,ケプラー419b,ケプラー419c の質量の不定性は,それぞれ 35%,24%,35% となった.これは,単一の主星の系におけるこの技術を用いた測定としては最も精密な測定である.
トランジットする惑星の質量は,中心星の質量よりも良い精度で決定される.このことは,動力学的に相互作用をする惑星系で視線速度と光度曲線を一緒にモデル化することは,恒星に関する情報に制限されること無く,恒星と惑星の両方の物理量を特徴付け出来る事を示す結果である.
一方で,惑星の軌道周期比と離心率からは,この惑星系がパラメータ推定のためのスイートスポットにあることが分かる.もしおよそ 2 倍のトランジットが観測されていれば,トランジットする惑星の質量は,自身の TTV を用いて測定されていた可能性がある.
また,この系の起源についても議論する.この惑星系は,軌道の整列に関連した,同一平面の高軌道離心率永年固定点付近にいることを示す.これが内側の軌道の円軌道化を阻害している.その他の殆どの相対的な極点の配置をとっていた場合,ケプラー419b の軌道は軌道長半径 0.03 au の円軌道になっていたと考えられる.このことは,複数惑星系での大きな相互軌道傾斜角の必要がないホットジュピターを形成する機構を示唆している.
内側の ケプラー419b は,ケプラーによる測光観測からトランジット法で検出された (Borucki et al. 2011).軌道周期は 69.7 日,半径は 1.0 木星半径と推定されている.この惑星のサイズと軌道周期は,巨大惑星の ‘Period Valley' の中に存在している (Udry et al. 2003,Batygin et al. 2016).
また,ケプラー419b の 1 時間程度のオーダーの強い TTV が検出されている (Ford et al. 2012,Dawson et al. 2012).Dawson et al. (2012) による解析では,この惑星の TTV は,外側に軌道離心率が大きい天体が存在し,この天体によって軌道に擾乱が与えられているとすると説明することが出来る.しかしこの段階では,外側天体の軌道や質量を制約することは出来なかった,これは,トランジットの観測回数が不十分だったからである.
また Dawson et al. (2012) では,photoeccentric effect からトランジット惑星が e = 0.81 程度の大きな離心率を持つことが明らかにされた.中心星はの特性も明らかにされ,高速で自転する F7 星,自転周期は 4.6 日と測定された.
数年後の Mazeh et al. (2015) によるケプラー測光データの解析では,自転周期は 4.53 日と測定された.
Dawson et al. (2014) は,さらなるケプラーデータから TTV の解析を行った (この天体のすべてのトランジットデータを使用).その結果,外側にいる擾乱天体はトランジットを起こしていない天体であり,ケプラー419c は 7.3 ± 0.4 木星質量,軌道離心率は 0.184,軌道周期 675.47 日と測定された.
また 20 セットの視線速度データから,ケプラー419b の質量は 2.5 木星質量と測定された.
この系の注目すべき点は,ほぼ同一平面 2 つの惑星が存在し,内側の惑星が非常に大きな離心率を持っているという特徴である.高軌道離心率の惑星を説明するためには,通常は大きな軌道傾斜角を持った天体が想定される.そのためこの系は,既存の理論に対して疑問を投げかける存在である.
arXiv:1804.01869
Almenara et al. (2018)
SOPHIE velocimetry of Kepler transit candidates XVIII. Radial velocity confirmation, absolute masses and radii, and origin of the Kepler-419 multiplanetary system
(ケプラートランジット候補の SOPHIE 速度測定 XVIII.ケプラー419 複数惑星系の視線速度確認,絶対的質量と半径,および起源)
概要
ケプラー419 はケプラーによる測光観測で発見された惑星系であり,2 つの重い巨大惑星を持つ.内側にあるのは 3 木星質量の惑星ケプラー419b で,69.8 日周期でトランジットを起こしている.また,軌道離心率は大きい.また 7.5 木星質量のトランジットしない外側の惑星ケプラー419c が,ケプラー419b のトランジット時刻変動 (transit timing variation, TTV) から検出されている.こちらは軌道周期が 675 日で,やや離心率が大きい軌道を持つ.
ここでは, SOPHIE 分光器を用いた 2 年以上に渡る測定から,新しい視線速度測定データを取得した.その結果,両惑星を共に明確に検出した.
得られた視線速度データを,ケプラーの測光データと合わせて解析した.視線速度のデータを含めることで,TTV データ単独で解析した場合に特有の,\(MR^{-3}\) の縮退を解くことが出来る.そのため,恒星・惑星の半径と,質量の絶対値の測定を行うことが可能になる.
恒星と内側惑星ケプラー419b の半径は,それぞれ 12% と 13% の不定性で決定出来た.また,恒星,ケプラー419b,ケプラー419c の質量の不定性は,それぞれ 35%,24%,35% となった.これは,単一の主星の系におけるこの技術を用いた測定としては最も精密な測定である.
トランジットする惑星の質量は,中心星の質量よりも良い精度で決定される.このことは,動力学的に相互作用をする惑星系で視線速度と光度曲線を一緒にモデル化することは,恒星に関する情報に制限されること無く,恒星と惑星の両方の物理量を特徴付け出来る事を示す結果である.
一方で,惑星の軌道周期比と離心率からは,この惑星系がパラメータ推定のためのスイートスポットにあることが分かる.もしおよそ 2 倍のトランジットが観測されていれば,トランジットする惑星の質量は,自身の TTV を用いて測定されていた可能性がある.
また,この系の起源についても議論する.この惑星系は,軌道の整列に関連した,同一平面の高軌道離心率永年固定点付近にいることを示す.これが内側の軌道の円軌道化を阻害している.その他の殆どの相対的な極点の配置をとっていた場合,ケプラー419b の軌道は軌道長半径 0.03 au の円軌道になっていたと考えられる.このことは,複数惑星系での大きな相互軌道傾斜角の必要がないホットジュピターを形成する機構を示唆している.
背景
ケプラー419 (KOI-1474) 系は,2 つの惑星を持つ惑星系である.内側の ケプラー419b は,ケプラーによる測光観測からトランジット法で検出された (Borucki et al. 2011).軌道周期は 69.7 日,半径は 1.0 木星半径と推定されている.この惑星のサイズと軌道周期は,巨大惑星の ‘Period Valley' の中に存在している (Udry et al. 2003,Batygin et al. 2016).
また,ケプラー419b の 1 時間程度のオーダーの強い TTV が検出されている (Ford et al. 2012,Dawson et al. 2012).Dawson et al. (2012) による解析では,この惑星の TTV は,外側に軌道離心率が大きい天体が存在し,この天体によって軌道に擾乱が与えられているとすると説明することが出来る.しかしこの段階では,外側天体の軌道や質量を制約することは出来なかった,これは,トランジットの観測回数が不十分だったからである.
また Dawson et al. (2012) では,photoeccentric effect からトランジット惑星が e = 0.81 程度の大きな離心率を持つことが明らかにされた.中心星はの特性も明らかにされ,高速で自転する F7 星,自転周期は 4.6 日と測定された.
数年後の Mazeh et al. (2015) によるケプラー測光データの解析では,自転周期は 4.53 日と測定された.
Dawson et al. (2014) は,さらなるケプラーデータから TTV の解析を行った (この天体のすべてのトランジットデータを使用).その結果,外側にいる擾乱天体はトランジットを起こしていない天体であり,ケプラー419c は 7.3 ± 0.4 木星質量,軌道離心率は 0.184,軌道周期 675.47 日と測定された.
また 20 セットの視線速度データから,ケプラー419b の質量は 2.5 木星質量と測定された.
この系の注目すべき点は,ほぼ同一平面 2 つの惑星が存在し,内側の惑星が非常に大きな離心率を持っているという特徴である.高軌道離心率の惑星を説明するためには,通常は大きな軌道傾斜角を持った天体が想定される.そのためこの系は,既存の理論に対して疑問を投げかける存在である.
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