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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1508.07878
Desch & Turner (2015)
High-Temperature Ionization in Protoplanetary Disks
(原始惑星系円盤中における高温でのイオン化)

概要

高温(500 K以上)でダストが存在する原始惑星系円盤中での、電子とイオンの存在度を計算した。
この計算では、ダスト粒子からの熱電子放射 (thermionic emission)とイオン放射 (ion emission)の効果を初めて取り扱った

これまでの原始惑星系円盤中の高温領域におけるイオン化のモデリングでは、シンプルにガス相にあるカリウム等のアルカリ金属原子があり、サハの式に従った衝突電離を仮定していた。
ここでは、ダスト粒子からの熱電子放射とイオン放射の効果を取り入れた結果、サハの式はしばしば成り立たなくなる事を示す。

この理由は、自由電荷が熱電子放射とイオン放射によって生成され、またダスト表面に衝突した際に自由電荷が失われるからである。
従って、電離状態はアルカリ金属原子の第一イオン化エネルギーだけではなく、ダスト粒子表面の仕事関数 (work function)にも依存するという事を示した。

荷電粒子の存在度は、典型的には800 Kあたりを境に急激に増加し、定性的には仕事関数、ガス密度、ダスト・ガス比への依存は弱い。

この結果を原始惑星系円盤の計算に適用した結果、デッドゾーン (高い磁気拡散率が磁気回転不安定性による乱流を抑制する領域)の内縁は、温度が閾値である ~ 1000 Kを超える所に存在する。
この温度の閾値は、もっとも密度が高い領域以外の場所では双極性拡散 (ambipolar diffusion)で決まり、密度が高い領域ではオーム散逸によって決まる。
また円盤のガスは、似た閾値を下回る温度で恒星の磁気圏に落下することも分かった。

さらに、電流シートの "short-circuit" 不安定性が原始惑星系円盤内で起きるかどうかを調べた結果、発生しない、もしくは非常に発生する条件が狭いという事が分かった。
そのためこの不安定性は、コンドリュールの生成機構ではないだろうということが示唆された。

また、熱電子放射はホットジュピター内部でのオーム散逸加熱率を決めるのに重要な要素であることが示唆される。
ホットジュピター大気中には酸化チタンのダストが存在すると考えられる。
ある閾値の温度以上では、酸化チタン粒子の熱電子放射とイオン放射が、ガスの電離状態をコントロールし得る。

シンプルに考えると、熱電子放射はガス中の電子の割合を増加させるため、オーム散逸率はサハの電離式を元に導いた場合よりも低くなると考えられる。
しかし原始惑星系円盤中と系外惑星の大気中では想定するコンディションが異なるため、別の詳細な物理が重要になる可能性もある。






原始惑星系円盤内部での電離度の計算には、主にサハの電離式が用いられています。
衝突による電離と再結合を考慮した式なので、電離度はガスの密度と温度に依存します。
大雑把には、温度が高ければ電離する原子が増えるため電離度は上昇し、密度が高いと衝突再結合するものが多いため電離度は下がります。

しかしそこにダストが存在する場合は、ダストが電荷(電子、イオン)の供給源になったり、逆に電荷を吸着する効果があるため、電離度に影響を与えます。
この論文では、ダストが電離状態に与える影響も考慮して原始惑星系円盤での電離度の計算を行い、結果がサハの電離式で計算したものからズレるということを示しています。

グラフを見ると分かりますが、サハの電離式から計算した場合は温度の上昇にともなって徐々に電離度が上昇していきますが、ダストの効果を入れた場合は低温 (800 K未満)では温度を上げてもほとんど上昇せず、800 Kあたりを境に急激に電離度が上昇し、その後は温度の上昇にともなって緩やかに上昇する、という推移となっています。


ホットジュピターのオーム加熱へのアプリケーションについても言及されていますが、こちらは本当に言及しただけ、という感じでした。

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