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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.03735
Tamburo et al. (2018)
Confirming Variability in the Secondary Eclipse Depth of the Super-Earth 55 Cancri e
(スーパーアースかに座55番星e の二次食深さの変動の確認)
ここでは特に,Demory et al. (2016) で報告されている,二次食データ中の変動の可能性に着目した.
トランジットのデータから,この惑星の軌道要素をアップデートした.更新された惑星半径の推定値は 1.89 ± 0.05 地球半径である.
トランジットデータの解析の結果,トランジットの深さは一定であるとした場合と整合的であり,トランジットの深さは変動していないと結論付けた.
一方で 8 回の二次食観測データの解析では,二次食の深さに大きな変動を発見し,相関解析を介して Demory et al. (2016) での報告と一致することを確認した.
二次食の測定結果を惑星の輝度温度に変換し,惑星の二次食深さの時間経過に伴う進化を説明するための,いくつかの発見的モデルを生成して議論を行った.二次食の深さは,年ごとに深さが変動するとするモデルによって最もよくモデル化出来るが,より短いタイムスケールで変動している可能性も否定できない.
観測から導出された輝度温度の範囲は,非効率的な熱の再分配を伴う暗い表面を持つ惑星が,反射性の粒子によって昼側半球の大部分を断続的に覆われている状態で再現することが出来る.おそらくは,火山活動もしくは雲の変動性に起因する可能性がある.
かに座55番星e の二次食深さの時間変動は,現在計画中の宇宙空間からの観測ミッション (ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡) や,現在提案されているミッション (ARIEL など) で観測可能である.
この二次食深さの増加は,惑星の輝度温度が 2012 - 2013 年の間に大きくなっていることを意味しており,Demory et al. (2016) では輝度温度が 1600 K から 2600 K に上昇していると報告している.
輝度温度の変化の要因として,火山活動によるものという仮説が提案されている.火山プルームは,原理的には 4.5 µm での光球を,低温の大気高層に押し上げることが可能である.そのため,プルーム活動が活発な時は低温な上層を観測していることになり,熱放射が小さくなる.
今回の再解析の結果,トランジット深さについては一定とするのが整合的な結果となった.ただし 1 年程度の周期での変動が存在する可能性の否定は出来ない.今後の,高頻度もしくは長期間のトランジット観測が必要である.
この平坦モデルでフィッティングすると,二次食深さは 84 ± 14 ppm となる.
このモデルでのフィッティングでは,2012 年の二次食深さは 24 ± 20 ppm,2013 年の二次食深さは 138 ± 18 ppm となる.
このモデルでは,ベースライン時の二次食深さが 58 ± 16 ppm,2013 年の最初 2 つの二次食の深さが 173 ± 26 ppm となった.
2013 年のデータについて,二次食深さを一次関数 \(y=mx+b\) でフィッティングした.その結果 \(m=-2.36\pm1.59\) ppm/日,\(b=164.7\pm 26.0\) ppm となった.
観測データを,周波数が半日から 3 年の間で Levenberg-Marquardt フィッティングした.その結果,多数の異なるサイン波周期がデータを同様によく近似した.これは観測データに大きなエイリアシングが存在することが影響している.観測データのサンプリングレートでは,異なる多数のサイン波を区別することが出来ない.
フィッティングの結果に基づくと,2 日間で 300 ppm の二次食深さの変動を起こすモデルが “最良” のモデルであることが分かるが,そのような速い変化は非物理的であるように思われる.周期が 20 日より長いものを選んだ場合,ベストフィットは \(A=76.46\pm 18.99\) ppm,\(f=0.179057\) days-1,\(\delta=1.28\pm 0.30\),\(c=103.54\pm 14.16\) ppm となった.
BIC スコアより,フラットモデルは最もフリーパラメータ数が少ないにも関わらず,明確に排除される.その他の 5 個のモデルの BIC の値は,6 以内の範囲に収まっている.そのため確実に区別はできない.
年々変化モデルは,二次食深さが何らかの変動を起こすとするモデルの中では最もフリーパラメータ数が少ないため,惑星の二次食深さの変動を解釈するための現在のモデルの中では最も良いと結論付けられる.
サイン波モデルは BIC スコアは最も良い値になる.しかし,エイリアシングが非常に多いデータへのフィッティングの結果であることに留意する必要がある.サイン波モデルが現実的かどうかの判断には.より多くの観測が必要である.
arXiv:1804.03735
Tamburo et al. (2018)
Confirming Variability in the Secondary Eclipse Depth of the Super-Earth 55 Cancri e
(スーパーアースかに座55番星e の二次食深さの変動の確認)
概要
スピッツァー宇宙望遠鏡を用いて 2011 - 2013 年の間に観測された,超短周期スーパーアース 55 Cnc e (かに座55番星e) の 5 回のトランジットと 8 回の二次食の再解析を行った.この解析は,スピッツァー宇宙望遠鏡のデータから正確なトランジットと二次食の深さを導出することを目標としており,そのためにピクセルレベルの非相関化を使用した.また,広範囲な誤差解析を行った.ここでは特に,Demory et al. (2016) で報告されている,二次食データ中の変動の可能性に着目した.
トランジットのデータから,この惑星の軌道要素をアップデートした.更新された惑星半径の推定値は 1.89 ± 0.05 地球半径である.
トランジットデータの解析の結果,トランジットの深さは一定であるとした場合と整合的であり,トランジットの深さは変動していないと結論付けた.
一方で 8 回の二次食観測データの解析では,二次食の深さに大きな変動を発見し,相関解析を介して Demory et al. (2016) での報告と一致することを確認した.
二次食の測定結果を惑星の輝度温度に変換し,惑星の二次食深さの時間経過に伴う進化を説明するための,いくつかの発見的モデルを生成して議論を行った.二次食の深さは,年ごとに深さが変動するとするモデルによって最もよくモデル化出来るが,より短いタイムスケールで変動している可能性も否定できない.
観測から導出された輝度温度の範囲は,非効率的な熱の再分配を伴う暗い表面を持つ惑星が,反射性の粒子によって昼側半球の大部分を断続的に覆われている状態で再現することが出来る.おそらくは,火山活動もしくは雲の変動性に起因する可能性がある.
かに座55番星e の二次食深さの時間変動は,現在計画中の宇宙空間からの観測ミッション (ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡) や,現在提案されているミッション (ARIEL など) で観測可能である.
研究背景
Demory et al. (2016) による,スピッツァー宇宙望遠鏡を用いた 4.5 µm 波長でのかに座55番星e の二次食観測では,二次食の深さが 2012 年から 2013 年にかけて増加していることが発見された.この二次食深さの増加は,惑星の輝度温度が 2012 - 2013 年の間に大きくなっていることを意味しており,Demory et al. (2016) では輝度温度が 1600 K から 2600 K に上昇していると報告している.
輝度温度の変化の要因として,火山活動によるものという仮説が提案されている.火山プルームは,原理的には 4.5 µm での光球を,低温の大気高層に押し上げることが可能である.そのため,プルーム活動が活発な時は低温な上層を観測していることになり,熱放射が小さくなる.
トランジット深さの解析
トランジット深さについて,Demory et al. (2016) は 2011 年と 2013 年の間の平均値の比較を行い,25% の変動が存在すると報告している.ただし 1σ の水準であり,変動の検出は暫定的であるとも報告していた.今回の再解析の結果,トランジット深さについては一定とするのが整合的な結果となった.ただし 1 年程度の周期での変動が存在する可能性の否定は出来ない.今後の,高頻度もしくは長期間のトランジット観測が必要である.
二次食深さの解析
Demory et al. (2016) では,二次食の深さは 2012 年に 47 ± 21 ppm,2013 年には 176 ± 28 ppm へ増加したと報告されている.今回の再解析の結果,二次食深さの変動はデータ中に確かに存在し,解析手法によって引き起こされたわけではないと結論付けた.二次食変動のモデリング
二次食の変動の原因について,5 つのモデルを考慮した.平坦モデル
一つ目は,平坦な食モデルである.これは二次食深さは時間の経過に伴って変化していないとするもので,”通常の” 惑星に対して予想されるモデルである.つまり惑星からの熱フラックスは時間に対してほぼ一定と考える.この場合,モデルのフリーパラメータは重み付け平均した二次食深さのみとなる.この平坦モデルでフィッティングすると,二次食深さは 84 ± 14 ppm となる.
年々変化モデル
二つ目は Demory et al. (2016) で提案されたものと同じモデルで,2012 年と 2013 年の間で年ごとの変化をするモデルである.ここでは,2012 年と 2013 年の間に二次食深さとして別々の定数をフィットした.この年々変化モデルは 3 つのフリーパラメータを持つ.2012 年と 2013 年それぞれの二次食深さと,二次食深さが遷移する時刻である.このモデルでのフィッティングでは,2012 年の二次食深さは 24 ± 20 ppm,2013 年の二次食深さは 138 ± 18 ppm となる.
スパイクモデル
三つ目は “スパイク” モデルである.このモデルは,他より深い食を示した 2013 年の最初 2 つの二次食を除いては,トランジット深さが一定とするものである.このモデルは 4 つのフリーパラメータを持ち,ベースラインでの二次食深さ,”スパイク” になっている時の二次食深さ,スパイクの開始時刻と終了時刻である.このモデルでは,ベースライン時の二次食深さが 58 ± 16 ppm,2013 年の最初 2 つの二次食の深さが 173 ± 26 ppm となった.
スロープモデル
四つ目は “スロープ” モデルである.これは三つ目のスパイクモデルと似ているが,2013 年の観測では食深さが時間の経過に伴い線形で減少しているとするモデルである (2012 年は二次食深さは時間によらず平坦とする).このモデルもフリーパラメータは 4 つであり,2012 年の平均の二次食深さ,二次食深さが遷移する時刻,2013 年の二次食の極大と二次食深さ変化の傾きの値である.2012 年の二次食深さについては,年々モデルと同じ値を使用した.2013 年のデータについて,二次食深さを一次関数 \(y=mx+b\) でフィッティングした.その結果 \(m=-2.36\pm1.59\) ppm/日,\(b=164.7\pm 26.0\) ppm となった.
サイン波モデル
最後の五つ目は,単純なサイン波とするモデルである.つまり,二次食深さを \(A\sin\!\left(2\pi f t+\delta\right)+c\) とする.ここで \(A\) は振幅,\(f\) は周波数,\(\delta\) は位相シフトで \(c\) は 0 からの定数のずれを表す.つまり,このモデルも 4 つのフリーパラメータを持つ.観測データを,周波数が半日から 3 年の間で Levenberg-Marquardt フィッティングした.その結果,多数の異なるサイン波周期がデータを同様によく近似した.これは観測データに大きなエイリアシングが存在することが影響している.観測データのサンプリングレートでは,異なる多数のサイン波を区別することが出来ない.
フィッティングの結果に基づくと,2 日間で 300 ppm の二次食深さの変動を起こすモデルが “最良” のモデルであることが分かるが,そのような速い変化は非物理的であるように思われる.周期が 20 日より長いものを選んだ場合,ベストフィットは \(A=76.46\pm 18.99\) ppm,\(f=0.179057\) days-1,\(\delta=1.28\pm 0.30\),\(c=103.54\pm 14.16\) ppm となった.
モデルの BIC 評価
上記 5 個のモデルのベイズ情報量規準 Bayesian Information Criterion (BIC) を評価した.フラットモデル,年々変化モデル,スパイクモデル,スロープモデル,サイン波モデルのそれぞれの BIC は, 40.58, 13.02, 16.48, 12.89, 10.58 となった.この数値は小さいほうが好ましい.BIC スコアより,フラットモデルは最もフリーパラメータ数が少ないにも関わらず,明確に排除される.その他の 5 個のモデルの BIC の値は,6 以内の範囲に収まっている.そのため確実に区別はできない.
年々変化モデルは,二次食深さが何らかの変動を起こすとするモデルの中では最もフリーパラメータ数が少ないため,惑星の二次食深さの変動を解釈するための現在のモデルの中では最も良いと結論付けられる.
サイン波モデルは BIC スコアは最も良い値になる.しかし,エイリアシングが非常に多いデータへのフィッティングの結果であることに留意する必要がある.サイン波モデルが現実的かどうかの判断には.より多くの観測が必要である.
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天文・宇宙物理関連メモ vol.236 Demory et al. (2016) スーパーアースかに座55番星eの輝度マップ