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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1804.05551
Burdanov et al. (2018)
KPS-1b: the first transiting exoplanet discovered using an amateur astronomer's wide-field CCD data
(KPS-1b:アマチュア天文家の広視野 CCD データを用いて発見された初めてのトランジット系外惑星)
ここでは,この惑星の発見に用いられた機器と観測技術,SOPHIE 分光器での分光観測による特徴付け,1 m 級の望遠鏡で得られた高精度測光観測について記述する.また,KPS プロジェクトの進化を Galactic Plane eXoplanet survey (GPX) にまとめる.この惑星の発見は,系外惑星学の急成長している分野への,アマチュア天文家の貢献の大きな一歩である.
しかしこれら全てを合わせても,空の多くの部分がまだ探査されておらず,特に銀河面の方向は比較的未探査である.
また,これらの広視野サーベイや,将来の宇宙空間からのミッションである PLATO や TESS は,一般に空間分解能は悪い.そのため恒星が密集している銀河面方向では視野内への恒星の混入が発生し,トランジットのシグナルが弱められることによる検出可能性の低下や,食連星が混入することによる偽陽性確率の大きな上昇などの原因となる.
そのため,これまでの多くのサーベイでは,銀河面方向である低銀緯の領域を避けてきた.従って,その領域には多数の未検出のホットジュピターが存在している可能性がある.KPS プロジェクトは,これらの発見にアマチュア天文学が重要な役割を果たす可能性があるという仮説に基づくプロジェクトである.
ただし上記のプロジェクトは,既に存在しているデータ中からの惑星の検出や探査に焦点を当てたものであり,既に観測されている系外惑星候補や,プロの天文学者によって発見されている既知の惑星を持つ恒星が観測対象となっている.
現在は,広視野 CCD データを直接収集することによって,アマチュア天文家も系外惑星の探査に貢献することが出来る.
観測は,ロシアの Ural Federal University (ウラル連邦大学) が所有する Kourovka astronomical observatory の,MASTER-II-Ural robotic telescope を使用して,銀河面領域を探査した.2014 年以降はアメリカ・マサチューセッツ州の個人所有の Acton Sky Portal Observatory の Rowe-Ackermann Schmidt Astrograph が参加し,銀河面方向ではないが,おおぐま座の領域の探査が行われた.
ここでは,後者の領域での観測結果から新しい惑星を発見した.
有効温度:5165 K
金属量:[Fe/H] = 0.22
質量:0.892 太陽質量
半径:0.907 太陽半径
軌道長半径:0.0269 au
質量:1.090 木星質量
半径:1.03 木星半径
平均密度:木星の 0.99 倍
平衡温度:1459 K
日射量:地球の 729 倍
arXiv:1804.05551
Burdanov et al. (2018)
KPS-1b: the first transiting exoplanet discovered using an amateur astronomer's wide-field CCD data
(KPS-1b:アマチュア天文家の広視野 CCD データを用いて発見された初めてのトランジット系外惑星)
概要
トランジットするホットジュピター KPS-1b の発見について報告する.この惑星は,Kourovka Planet Search (KPS) プロジェクトのプロトタイプによって発見された.KPS プロジェクトは,容易に入手可能で比較的手頃な装置を使用して,アマチュア天文家によって集められた広視野 CCD データを使用して系外惑星の探査を行うプロジェクトである.ここでは,この惑星の発見に用いられた機器と観測技術,SOPHIE 分光器での分光観測による特徴付け,1 m 級の望遠鏡で得られた高精度測光観測について記述する.また,KPS プロジェクトの進化を Galactic Plane eXoplanet survey (GPX) にまとめる.この惑星の発見は,系外惑星学の急成長している分野への,アマチュア天文家の貢献の大きな一歩である.
背景
既存のトランジット探査プロジェクト
現在までに,トランジットするホットジュピターは 300 個程度が知られている.地上からの広視野測光サーベイ,例えば WASP, HAT, KELT, Qatar, XO, TrES が多くのホットジュピターを発見している.これらに加えて,宇宙空間からの CoRoT, ケプラー,K2 ミッションも貢献している.しかしこれら全てを合わせても,空の多くの部分がまだ探査されておらず,特に銀河面の方向は比較的未探査である.
また,これらの広視野サーベイや,将来の宇宙空間からのミッションである PLATO や TESS は,一般に空間分解能は悪い.そのため恒星が密集している銀河面方向では視野内への恒星の混入が発生し,トランジットのシグナルが弱められることによる検出可能性の低下や,食連星が混入することによる偽陽性確率の大きな上昇などの原因となる.
そのため,これまでの多くのサーベイでは,銀河面方向である低銀緯の領域を避けてきた.従って,その領域には多数の未検出のホットジュピターが存在している可能性がある.KPS プロジェクトは,これらの発見にアマチュア天文学が重要な役割を果たす可能性があるという仮説に基づくプロジェクトである.
これまでのアマチュア天文家参加プロジェクト
アマチュア天文家による系外惑星分野への貢献には,Zooniberse に基づくプロジェクトである Planet Hunters (Fischer et al. 2012) と,Exoplanet Explorers がある.また,地上からのフォローアップ観測にもアマチュア天文家が貢献しており,例えば KELT サーベイで検出された系外惑星候補の KELT-FUN 観測 (McLeod et al. 2017) や,ケプラーで検出された系外惑星候補天体 KOI-1257b の追加観測 (Santerne et al. 2014),トランジット時刻変動の調査 (Baluev et al. 2015) などがある.ただし上記のプロジェクトは,既に存在しているデータ中からの惑星の検出や探査に焦点を当てたものであり,既に観測されている系外惑星候補や,プロの天文学者によって発見されている既知の惑星を持つ恒星が観測対象となっている.
現在は,広視野 CCD データを直接収集することによって,アマチュア天文家も系外惑星の探査に貢献することが出来る.
Kourovka Planet Search (KPS) プロジェクト
2012 - 2016 年の間に,Kourovka Planet Search (KPS) プロジェクトを実行した.これは,低銀緯領域でのトランジット系外惑星の探査を主目標にしたサーベイのプロトタイプにあたるものである.観測は,ロシアの Ural Federal University (ウラル連邦大学) が所有する Kourovka astronomical observatory の,MASTER-II-Ural robotic telescope を使用して,銀河面領域を探査した.2014 年以降はアメリカ・マサチューセッツ州の個人所有の Acton Sky Portal Observatory の Rowe-Ackermann Schmidt Astrograph が参加し,銀河面方向ではないが,おおぐま座の領域の探査が行われた.
ここでは,後者の領域での観測結果から新しい惑星を発見した.
パラメータ
KPS-1
等級:V = 13.033有効温度:5165 K
金属量:[Fe/H] = 0.22
質量:0.892 太陽質量
半径:0.907 太陽半径
KPS-1b
軌道周期:1.706291 日軌道長半径:0.0269 au
質量:1.090 木星質量
半径:1.03 木星半径
平均密度:木星の 0.99 倍
平衡温度:1459 K
日射量:地球の 729 倍
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