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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1509.00723
Santos et al. (2015)
Detecting ring systems around exoplanets using high resolution spectroscopy: the case of 51Pegb
(高分散分光観測を用いた系外惑星周りのリングシステムの検出:ペガスス座51番星bの場合)

概要

最近得られたペガスス座51番星bの反射光観測の特徴が、惑星の周りの環によって説明出来る可能性について議論する。
シンプルなモデルを用いて、環を持つ短周期の巨大惑星から期待される観測的特徴と観測結果を比較し、また環の可能な幾何学的配置について力学的に検討した。

その結果、環が惑星の軌道平面と同一平面上に存在しない場合は、観測結果と合うという結論が得られた。
しかし環の描像に関する力学的な議論からは、その描像は疑わしいということも判明した。

結果としては、惑星と環の組み合わせでは原理的には説明出来ないという事が示唆された。
しかし、短周期惑星まわりの環の存在を反射光から検出し、特徴付けることの可能性についての議論を行った。

また、系外惑星まわりの環は既にトランジットの測光観測で検出されている可能性があるが、食連星によって作られる光度曲線と似ているため、食連星だと誤って解釈されやすいことも示した。

ペガスス座51番星bの反射光観測

最近、可視光領域の高分散の観測から、系外惑星からの反射光が検出された (Mortins et al. 2015)。
この観測によって、ペガスス座51番星bの半径とアルベドの推定が可能となった。
その結果、この惑星はケプラー7bと同様に (幾何学的アルベド 0.35, Demory et al. (2013)より)、高いアルベドを持ち、膨張半径を持つホットジュピターである事が示された。

星と惑星からのフラックスの比は、惑星の幾何学的アルベドと、反射光の位相関数、惑星半径、そして惑星の軌道長半径から計算することが出来る (Seager et al. 2010など)。

Martins et al (2015)によると、半値幅 (FWHM)は 22.6 ± 3.6 km s-1、検出された惑星の相互相関関数 (cross-correlation function, CCF)の振幅は 6.0 ± 0.4 × 10-4であった。
中心星のFWHMは 7.47 km s-1、CCFは 0.48であり、これらから計算したフラックスの比は 3.8 × 10-4である。
ペガスス座51番星bが木星と同じ半径だとすると、これらか計算した惑星の幾何学的アルベドは 1を大きく超えてしまう。

Martins et al. (2015)では、広いFWHMは非ガウシアン的なノイズによるものであり、人工的なものであると推定されている。
実際、検出が 3σのレベルであるという事実もある。

しかし、仮にCCFの値が本当であったらどうだろうか?
あり得る可能性としては、大きなFWHMは惑星大気の強い風か、非常に速い自転速度に由来するというものが挙げられる。

ここで、系外惑星大気における強い風の特徴は透過スペクトルから検出されているが (Snellen et al. 2010)、これはCCFを大きくすると共に深さは減ることになる。
そのため、惑星大気の強い風に起因するという解は無いことになる。

また、直接は言及されていないものの、Brogi et al. (2013)の観測では、COのラインは太くなるといった特徴を見せていない。
風によるものであれば、波長と関係なく独立に太くなっているという特長が見られるはずである。

そこで、この観測的特長を惑星の環の存在によって説明出来ないか?という点がこの研究のモチベーションである。

リングシステムのモデル

概観

ペガスス座51番星bの視線方向に対する軌道傾斜角は ~ 80°である(Brogi et al. 2013, Martins et al. 2015)。
そのため、地球・恒星(ペガスス座51番星)・惑星(ペガスス座51番星b)はほぼ一直線とみなすことが出来る。
(ただしトランジットは起こさない惑星系である。)

環からの反射光は、環の幾何学的なアルベドと、地球-恒星-惑星の直線に対する環の平面の傾きに依存する。

環の内縁

土星の場合は、環の内縁は土星の半径に非常に近い位置にある。
ペガスス座51番星bではこれが異なるという理由は無いため、ここでは環の内縁は惑星の半径と等しいと仮定している。

環の外縁

次に、力学的な観点から環の外縁を見積もる。
ヒル半径
まずはヒル半径から環の外縁を推定する。

ペガスス座51番星bの真の質量を 0.46木星質量、中心星を 1.04太陽質量 (Santos et al. 2013)、惑星の軌道長半径を 0.052 AU (Martins et al. 2015)とすると、ヒル半径は 5.9木星半径となる。

しかしヒル球の外縁部分は不安定である(Schlichting & Chang 2011など)。
そのため、ヒル半径の3分の2のち天までが安定だとすると、~ 4木星半径が外縁となり得る。
ロッシュ半径
しかし、ロッシュ半径 (Roche radius)の外では、環の構成粒子は集まって衛星を形成してしまう。
ペガスス座51番星bの半径が 1.2木星半径だとすると、惑星の平均密度は 0.6 g cm-3であり、環を構成しているであろう岩石の密度を 3 g cm-3とすると、ロッシュ半径は ~ 1.5木星半径となる。

ロッシュ半径の2倍より外側には粒子としては存在できないと仮定すれば、環の外縁は ~3.0木星半径と推測できる。
これはヒル半径からの見積もりよりも小さいものである。

注釈として、土星はロッシュ半径外側にもリングを持つが (Eリング)、これはミクロンサイズやサブミクロンサイズの粒子から構成される。

以上の推察から、環の内縁は惑星半径、外縁は 3木星半径としてモデルを構築する。

結果

以上のモデルの環を仮定し、環の幾何学的アルベドと角度を変化させて反射光の見積もりを行った。
その結果、傾きが 40 - 90°、環の幾何学的アルベドが 0.4 - 1.0の範囲内では観測を説明するだけの反射光を得ることが出来た。
例えば傾きが 60°、幾何学的アルベド 0.7などである。

幾何学的アルベドの推定は非常に難しい。
土星の環は氷が主体であり、ここで想定している岩石成分の環に対しては先行する研究が無い。

環の粒子に対するポインティング・ロバートソン効果の影響の見積もりも重要である。
~ 45°の傾いた環の場合は、ポインティング・ロバートソン効果により粒子の寿命は 107 - 108年程度である(Schlichting & Chang 2011)。
しかし、傾きが小さい場合で密度の濃い環であれば、この寿命は延びる。

傾いた環の存在可能性

環の起源としては複数の可能性が考えられる。
惑星への衝突イベントの結果形成される場合(Tiscareno 2013など)、接近捕獲された小天体や衛星の潮汐破壊の結果(Charnoz et al. 2009など)、または惑星形成時の残骸(ただしこれは否定的(Charnoz et al. 2009))などである。

いずれの起源を持つにせよ、環はラプラス平面という特別な平面内に位置する。
安定状態に落ち着いた系の場合、全てのホットジュピターでは傾きは 0°になる。
傾きが 0°の時は、傾きが 90°の時の 2%のフラックスしか得られず、観測を説明するには小さすぎる値となってしまう

トランジットでの環の検出可能性

環を持った惑星のトランジットでの検出可能性を見積もるため、SOAP-T (Oshagh et al. 2013)を改良して光度曲線の計算を行った。
計算のチェックのため、EXORINGコード (Zuluaga et al. 2015)の公開されている結果の図と比較した結果、よく一致した。

リングを持つ惑星のトランジットのシミュレーションの結果、トランジットは環を持たない場合に比べてより深く、継続時間が長く、また光度曲線の形状はV字に近くなった。

この光度曲線の特徴は食連星による光度曲線と似ている。
そのためこれまでのトランジット観測中に存在していたとしても、偽陽性として処理されている可能性がある。

結論

ペガスス座51番星bの反射光観測の結果を、環の存在を仮定することで説明を試みた。
その結果、傾いた環を持っていた場合は観測結果を説明することが可能だという事が分かったが、力学的な議論からはそのような環の幾何学的配置は考えづらいということも分かった。
そのため、環の存在を仮定するだけでは観測結果を説明することは出来ない。






タイトルだけ見て、「ホットジュピターの周りの環が検出!?」と思いましたが、存在可能性と検出可能性について検討した結果否定的な結論を得た、という内容でした。

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