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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.03221
van Terwisga et al. (2018)
V1094 Sco: a rare giant multi-ringed disk around a T Tauri star
(さそり座V1094星:おうし座 T 型星まわりの希少な巨大複数リング円盤)
ここでは,ALMA の Band 6 (234 GHz) と Band 7 (328 GHz) を用いて,0.3” の分解能で,K6 星の V1094 Sco (さそり座V1094星) を観測した.この星は Lupus III 領域内に存在している.
観測結果を元に,この星の周りにある円盤の構造を解析した.また,円盤の内側 150 AU 以内のスペクトル指数を決定した.
ALMA 連続波データは,2 つのギャップ・リングペアを持つ,非常に広がった円盤が存在していることを示している.ギャップは中心星から 100 AU と 170 AU に位置しており,明るいリング構造は 130 AU と 220 AU にそれぞれ位置している.
ダスト連続波放射は中心星から 300 AU の距離にまで広がっているのが検出された.この様子は IM Lup (おおかみ座IM星) と類似しているが,この感度と分解能で発見されているおおかみ座領域の若い天体周りの円盤の典型値よりも,ファクター 5 大きい値である.
中心星から 35 AU 以内の,円盤の明るい中心領域は,1 mmの 波長ではおそらく光学的に厚く,輝度温度はわずか 13 K である.またスペクトル指数は,内側円盤と一番目のリングの間,一番目のギャップの位置で増加する.
円盤の中心平面の温度が低いため,円盤中でのリングとギャップの形成の背後にあるメカニズムとして,スノーラインが役割を果たしているという可能性は排除できる.
この天体のような大きな円盤サイズは珍しく,おおかみ座領域で発見されている円盤のうち,中心星から 200 AU を超えて連続波成分を放射しているものはわずか 2.1 ± 1.5% である.大きな初期円盤人口,遷移円盤,系外惑星の関連性についても議論する.
Gaia で測定されたこの天体までの距離は 153 ± 1 pc である (Gaia Collaboration et al. 2018),ここでは天体までの距離として 150 pc を使用している.なお,Gaia 以前では 200 pc と推定されており,それに基づく推定光度は 1.95 太陽光度とされていた.
この天体のスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) モデリングからは,低温で重たい円盤を持っていることが示唆されており,奇妙な天体として認識されていた (Tsukagoshi et al. 2011).
ハーシェル宇宙望遠鏡による観測では,遠赤外線波長の大きな超過が検出されている (Bustamante et al. 2015).また直接撮像による伴星探査では,75 AU 以遠における ~ 10 木星質量を超える天体は存在しないと結論付けられている (Joergens et al. 2001; Uyama et al. 2017).
・2 つの明るいリング構造が中心星から 130 AU,220 AU に検出され,これらは 100 AU,170 AU の位置にあるギャップに隔てられている.
・中心星から 200 AU を超えたところまで連続波成分を持つ円盤は珍しく,類似した大きな円盤を持っている天体はおおかみ座領域では ~ 2%.
・スペクトル指数の半径方向の変動は,円盤の明るいコアでの光学的に厚い放射と整合的.スペクトル指数は一番目のギャップの位置で増加し,一番目のリングに向かって再び減少する,これはリング中での粒子の効率的な成長の結果である可能性がある.
・光学的に厚い放射の温度および独立した円盤モデルに基いて推定したリングの位置での円盤中心平面でのダスト温度は,スノーラインによってリング形成を説明するには低温すぎることが判明した.そのため,デッドゾーンのみが形成メカニズムとして期待出来ると考えられる.しかし,重力不安定やギャップ中の ~ 10 木星質量程度の惑星の存在によって形成された可能性は否定できない.
・おおかみ座領域における,100 AU 以遠まで連続波放射がある初期円盤の数は,5 - 13 木星質量の巨大惑星で 100 - 1000 AU にいる頻度よりも十分大きいと思われる.
arXiv:1805.03221
van Terwisga et al. (2018)
V1094 Sco: a rare giant multi-ringed disk around a T Tauri star
(さそり座V1094星:おうし座 T 型星まわりの希少な巨大複数リング円盤)
概要
これまでの観測で,原始惑星系円盤中の多様なリング状のダスト構造が検出されているが,その起源と存在頻度は不明である.ここでは,ALMA の Band 6 (234 GHz) と Band 7 (328 GHz) を用いて,0.3” の分解能で,K6 星の V1094 Sco (さそり座V1094星) を観測した.この星は Lupus III 領域内に存在している.
観測結果を元に,この星の周りにある円盤の構造を解析した.また,円盤の内側 150 AU 以内のスペクトル指数を決定した.
ALMA 連続波データは,2 つのギャップ・リングペアを持つ,非常に広がった円盤が存在していることを示している.ギャップは中心星から 100 AU と 170 AU に位置しており,明るいリング構造は 130 AU と 220 AU にそれぞれ位置している.
ダスト連続波放射は中心星から 300 AU の距離にまで広がっているのが検出された.この様子は IM Lup (おおかみ座IM星) と類似しているが,この感度と分解能で発見されているおおかみ座領域の若い天体周りの円盤の典型値よりも,ファクター 5 大きい値である.
中心星から 35 AU 以内の,円盤の明るい中心領域は,1 mmの 波長ではおそらく光学的に厚く,輝度温度はわずか 13 K である.またスペクトル指数は,内側円盤と一番目のリングの間,一番目のギャップの位置で増加する.
円盤の中心平面の温度が低いため,円盤中でのリングとギャップの形成の背後にあるメカニズムとして,スノーラインが役割を果たしているという可能性は排除できる.
この天体のような大きな円盤サイズは珍しく,おおかみ座領域で発見されている円盤のうち,中心星から 200 AU を超えて連続波成分を放射しているものはわずか 2.1 ± 1.5% である.大きな初期円盤人口,遷移円盤,系外惑星の関連性についても議論する.
さそり座V1094星について
この恒星はスペクトル型が K6 で,1.7 太陽光度である.Gaia で測定されたこの天体までの距離は 153 ± 1 pc である (Gaia Collaboration et al. 2018),ここでは天体までの距離として 150 pc を使用している.なお,Gaia 以前では 200 pc と推定されており,それに基づく推定光度は 1.95 太陽光度とされていた.
この天体のスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) モデリングからは,低温で重たい円盤を持っていることが示唆されており,奇妙な天体として認識されていた (Tsukagoshi et al. 2011).
ハーシェル宇宙望遠鏡による観測では,遠赤外線波長の大きな超過が検出されている (Bustamante et al. 2015).また直接撮像による伴星探査では,75 AU 以遠における ~ 10 木星質量を超える天体は存在しないと結論付けられている (Joergens et al. 2001; Uyama et al. 2017).
主な結論
・連続波成分の放射は中心星から 300 AU にまで広がっている.これは他のおおかみ座領域の円盤よりファクター 5 大きいが,サイズとしてはよく研究されているおおかみ座IM星周りの円盤と近い.・2 つの明るいリング構造が中心星から 130 AU,220 AU に検出され,これらは 100 AU,170 AU の位置にあるギャップに隔てられている.
・中心星から 200 AU を超えたところまで連続波成分を持つ円盤は珍しく,類似した大きな円盤を持っている天体はおおかみ座領域では ~ 2%.
・スペクトル指数の半径方向の変動は,円盤の明るいコアでの光学的に厚い放射と整合的.スペクトル指数は一番目のギャップの位置で増加し,一番目のリングに向かって再び減少する,これはリング中での粒子の効率的な成長の結果である可能性がある.
・光学的に厚い放射の温度および独立した円盤モデルに基いて推定したリングの位置での円盤中心平面でのダスト温度は,スノーラインによってリング形成を説明するには低温すぎることが判明した.そのため,デッドゾーンのみが形成メカニズムとして期待出来ると考えられる.しかし,重力不安定やギャップ中の ~ 10 木星質量程度の惑星の存在によって形成された可能性は否定できない.
・おおかみ座領域における,100 AU 以遠まで連続波放射がある初期円盤の数は,5 - 13 木星質量の巨大惑星で 100 - 1000 AU にいる頻度よりも十分大きいと思われる.
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