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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1805.07726
Yang et al. (2018)
High-contrast Polarimetry Observation of T Tau Circumstellar Environment
(おうし座T星の星周環境の高コントラスト偏光観測)
おうし座T星系全体は星雲状のエンベロープに取り囲まれており,いくつかのアウトフローに伴った構造がこれらのエンベロープ内に検出された.この若い三重星系の各要素付近の構造の詳細な偏光パターンの解析を行い,星周円盤とアウトフロー構造への制約を行った.
おうし座T星N 周りのほぼ face-on (円盤を正面から見ている状態) の星周円盤は,中心星から北西方向では,0”.8 (117 AU) 以遠には存在していない.これは,この方向にあるホールの存在に基づいている.また南方向では,0”.27 (40 AU) よりは大きく広がっていない.
新しい構造 “N5” が,恒星の南西方向の 0”.42 (59 AU) まで広がっており,これは円盤の一部と考えられる.
おうし座T星S は,大きく傾いた周連星円盤に囲まれていることが示唆される.この円盤は半径が 0”.3 (44 AU) で,位置角は 30° である.この角度はおうし座T星S の連星軌道とはずれている.
アウトフローに伴っている構造の位置と偏光ベクトルパターンの解析から,良く知られている E-W アウトフローを引き起こしたのはおうし座T星S であることが示唆される,また,南西方向の旋回するアウトフロー “coil” と,南方向に存在が主張されているアウトフローとも関係している可能性が示唆される.
おうし座T星は三重星系であり,北方向にある単一の恒星おうし座T星N と,南方向にある連星おうし座T星Sa・おうし座T星Sb からなっている.
おうし座T星N は 1.95 太陽質量であり (K ̈ohler et al. 2016),class II の若い恒星状天体 (young stellar object, YSO) である.
おうし座T星Sa/Sb ペアは おうし座T星N から 0”.7 の位置にあり,Dyck et al. (1982) によって発見された.こちらは class I の YSO である (Furlan et al. 2006,Luhman et al. 2010).
Koresko (2000) によって,おうし座T星S が実際には連星であることが判明した.おうし座T星Sa/Sb の間隔はおよそ 0”.1 であり,質量は おうし座T星Sa が 2.12 太陽質量,おうし座T星Sb が 0.53 太陽質量である (K ̈ohler et al. 2016).おうし座T星Sa/Sb ペアの軌道は,軌道長半径が 12.5 AU,軌道離心率は 0.56 である.
おうし座T星N-S 系の軌道はよく分かっていない.ただし,おそらくは軌道長半径 430 AU,軌道離心率は 0.7 であろうと考えられている.
Akeson et al. (1998) によるおうし座T星N の 3 mm 波長での連続波観測では,ほぼ face-on の円盤が中心星から 41 AU の範囲まで広がっていると推定された.しかし,この観測のビームサイズは円盤の詳細を明らかにするには不十分であった.
その他の研究は非常に異なる結果を示している.
例えば Gustafsson et al. (2008) は,円盤の外縁半径は 85 - 100 AU と推定した,これはスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) に基づく推定である.
一方で Podio et al. (2014) は,CN 5-4 線の観測で,円盤のサイズは 100 AU 程度と推定している.
おうし座T星S 連星の減光は AV = 15 である (Duchˆene et al. 2005),この減光度合いは,おうし座T星N の AV = 1.95 よりもずっと大きい (Kenyon & Hartmann 1995).これは,おうし座T星S のまわりにコンパクトな edge-on の周連星円盤が存在するか,あるいはおうし座T星N のまわりの星周円盤によって光が阻害されているかだと考えられている (Hogerheijde et al. 1997,Beck et al. 2001).
これらの天体周りの円盤構造は,これまでには分かっていない.
過去の観測では,いくつかのアウトフロー構造が検出されている.
B ̈ohm & Solf (1994) では,Calar Alto Observatory の 2.2 m 望遠鏡を用いた観測で,東西方向のアウトフロー (E-W outflow) が検出されている.また southeast-northwest アウトフローも検出されている.
しかし,どちらの恒星がアウトフローを駆動したのかは不明である.おうし座T星N が E-W アウトフロー を,おうし座T星S が southeast-northwest アウトフローをそれぞれ駆動しているとする研究もあるが (B ̈ohm & Solf 1994,Gustafsson et al. 2010),Ratzka et al. (2009) は おうし座T星S が E-W アウトフローを駆動したと主張している.
さらに Gustafsson et al. (2010) は,別の southeast アウトフローが おうし座T星Sb から出ている事を示唆した.
また,Kasper et al. (2016) はこの系から南西方向に広がっているコイルのような構造を検出した.これは歳差するアウトフローである可能性があるが,おうし座T星N・おうし座T星S のどちらが起源かは不明である.
arXiv:1805.07726
Yang et al. (2018)
High-contrast Polarimetry Observation of T Tau Circumstellar Environment
(おうし座T星の星周環境の高コントラスト偏光観測)
概要
すばる望遠鏡の HiCIAO 装置を用いて,H バンドで T Tau (おうし座T星) の高コントラスト偏光観測を行った.その結果,この系にある T Tau N (おうし座T星N) と T Tau S (おうし座T星S) の 2 つの天体から 0”.1 程度の範囲の構造が明らかになった.おうし座T星系全体は星雲状のエンベロープに取り囲まれており,いくつかのアウトフローに伴った構造がこれらのエンベロープ内に検出された.この若い三重星系の各要素付近の構造の詳細な偏光パターンの解析を行い,星周円盤とアウトフロー構造への制約を行った.
おうし座T星N 周りのほぼ face-on (円盤を正面から見ている状態) の星周円盤は,中心星から北西方向では,0”.8 (117 AU) 以遠には存在していない.これは,この方向にあるホールの存在に基づいている.また南方向では,0”.27 (40 AU) よりは大きく広がっていない.
新しい構造 “N5” が,恒星の南西方向の 0”.42 (59 AU) まで広がっており,これは円盤の一部と考えられる.
おうし座T星S は,大きく傾いた周連星円盤に囲まれていることが示唆される.この円盤は半径が 0”.3 (44 AU) で,位置角は 30° である.この角度はおうし座T星S の連星軌道とはずれている.
アウトフローに伴っている構造の位置と偏光ベクトルパターンの解析から,良く知られている E-W アウトフローを引き起こしたのはおうし座T星S であることが示唆される,また,南西方向の旋回するアウトフロー “coil” と,南方向に存在が主張されているアウトフローとも関係している可能性が示唆される.
おうし座T星について
おうし座T星の概要
おうし座T星は,前主系列星の一種である T Tauri star (おうし座T型星) のプロトタイプであり,おうし座T型星の名称の由来である.太陽系から 146.7 pc の距離にあり (Loinard et al. 2007).年齢は 100 - 200 万歳である (Kenyon & Hartmann 1995).おうし座T星は三重星系であり,北方向にある単一の恒星おうし座T星N と,南方向にある連星おうし座T星Sa・おうし座T星Sb からなっている.
おうし座T星N は 1.95 太陽質量であり (K ̈ohler et al. 2016),class II の若い恒星状天体 (young stellar object, YSO) である.
おうし座T星Sa/Sb ペアは おうし座T星N から 0”.7 の位置にあり,Dyck et al. (1982) によって発見された.こちらは class I の YSO である (Furlan et al. 2006,Luhman et al. 2010).
Koresko (2000) によって,おうし座T星S が実際には連星であることが判明した.おうし座T星Sa/Sb の間隔はおよそ 0”.1 であり,質量は おうし座T星Sa が 2.12 太陽質量,おうし座T星Sb が 0.53 太陽質量である (K ̈ohler et al. 2016).おうし座T星Sa/Sb ペアの軌道は,軌道長半径が 12.5 AU,軌道離心率は 0.56 である.
おうし座T星N-S 系の軌道はよく分かっていない.ただし,おそらくは軌道長半径 430 AU,軌道離心率は 0.7 であろうと考えられている.
おうし座T星の未解決点
おうし座T星系は広範に探査されている天体だが,よく分かっていないことが多い.星周円盤の構造
一つ目は星周円盤の構造である.Akeson et al. (1998) によるおうし座T星N の 3 mm 波長での連続波観測では,ほぼ face-on の円盤が中心星から 41 AU の範囲まで広がっていると推定された.しかし,この観測のビームサイズは円盤の詳細を明らかにするには不十分であった.
その他の研究は非常に異なる結果を示している.
例えば Gustafsson et al. (2008) は,円盤の外縁半径は 85 - 100 AU と推定した,これはスペクトルエネルギー分布 (spectral energy distribution, SED) に基づく推定である.
一方で Podio et al. (2014) は,CN 5-4 線の観測で,円盤のサイズは 100 AU 程度と推定している.
おうし座T星S 連星の減光は AV = 15 である (Duchˆene et al. 2005),この減光度合いは,おうし座T星N の AV = 1.95 よりもずっと大きい (Kenyon & Hartmann 1995).これは,おうし座T星S のまわりにコンパクトな edge-on の周連星円盤が存在するか,あるいはおうし座T星N のまわりの星周円盤によって光が阻害されているかだと考えられている (Hogerheijde et al. 1997,Beck et al. 2001).
これらの天体周りの円盤構造は,これまでには分かっていない.
アウトフローの駆動源
二つ目の問題はアウトフローの源である.過去の観測では,いくつかのアウトフロー構造が検出されている.
B ̈ohm & Solf (1994) では,Calar Alto Observatory の 2.2 m 望遠鏡を用いた観測で,東西方向のアウトフロー (E-W outflow) が検出されている.また southeast-northwest アウトフローも検出されている.
しかし,どちらの恒星がアウトフローを駆動したのかは不明である.おうし座T星N が E-W アウトフロー を,おうし座T星S が southeast-northwest アウトフローをそれぞれ駆動しているとする研究もあるが (B ̈ohm & Solf 1994,Gustafsson et al. 2010),Ratzka et al. (2009) は おうし座T星S が E-W アウトフローを駆動したと主張している.
さらに Gustafsson et al. (2010) は,別の southeast アウトフローが おうし座T星Sb から出ている事を示唆した.
また,Kasper et al. (2016) はこの系から南西方向に広がっているコイルのような構造を検出した.これは歳差するアウトフローである可能性があるが,おうし座T星N・おうし座T星S のどちらが起源かは不明である.
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