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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1806.00506
Citron et al. (2018)
The role of multiple giant impacts in the formation of the Earth-Moon system
(地球-月系の形成における多重巨大衝突の役割)
月形成に関する多数衝突仮説では,現在の月は複数の小さい衛星 (moonlets,小衛星) の合体によって形成されたと考える.これらの小衛星は,連続した大きな衝突によって生成されるデブリ円盤から形成される.
衝突から次の衝突が発生する百万年程度の間に,既に存在していた小衛星は,その後の衝突によって新しい小衛星が形成されるまでの間に,潮汐進化によって外側へ移動する.その段階で,両方の小衛星はお互いが合体するまで,あるいは衛星系が破壊されるまで潮汐的に進化する.
ここでは,既に存在していた小衛星が次の衝突イベントを生き残る可能性を調査した.また,百万年程度の間隔をおいて形成された 2 つの小衛星を含む,地球-小衛星系の力学を調査した.
その結果,既に存在していた小衛星は潮汐的に外側へ移動可能であり,その次の衝突の間も安定を保つことが分かった.その後,既に存在していた小衛星は新しく形成された小衛星と合体するか,あるいは地球と再衝突を起こす.
従って,いくつかの小衛星の合体による月の形成は,複数衝突を介した地球の進化の自然な副産物として起きる.
さらに,地球が過去に月を持っていたかという可能性とその場合の結果を検証し,引き続く衝突による破壊に対する小衛星の安定性は,複数の大きな衝突は月形成の時期を遅らせた可能性を示唆することを見出した.
月形成を説明するためのあらゆる衝突仮説は,なぜ地球と月は同じ酸素・タングステン・チタンの同位体比を持つのかという疑問を説明できる必要がある (Wiechert et al. 2001など).これらの同位体比は,一般にはそれぞれの planetary embryo で異なる値を示す.
しかし,単一の衝突から必ず月が形成されるのケースは稀であり,N 体シミュレーションでは形成される確率は 2 - 8% と推定されている (Brasser et al. 2013,Elser et al. 2011).この部分的な原因は,衝突の分布が等方的である場合,黄道面に対して小さな傾斜を有する地球-月系を形成できる可能性が低いことにある.
その他には,同程度のサイズの天体同士の衝突が惑星形成段階の後期に起こりづらいことや (Jaxobson & Morbidelli 2014),組成的に類似した天体同士が衝突する可能性はわずか ~ 10% であること (Mastrobuono-Battisti & Perets 2017) などの課題も指摘されている.
スタンダードな hit-and-run 衝突はより可能性があるが,このような衝突がどの程度の頻度で地球に対する最後の巨大衝突になるのかは不明瞭であり,また hit-and-run 衝突になるような,低質量で高衝突速度の天体衝突がどの程度頻繁なのかも不明である (Raymond et al. 2009).
さらに,高角運動量シナリオ (Cuk & Stewart 2012) では初期地球が高速で自転している必要があるが,月形成衝突以前の天体衝突によって角運動量が損失してしまうため,実現が難しい (Rufu et al. 2017).
それぞれの衝突はデブリ円盤を生成して,そこから小衛星が形成される,この小衛星は次の衝突が起きるより前に,潮汐的に外側へ比較的速く移動する,
引き続く衝突で新しい小衛星が形成されると (デブリ円盤からの衛星形成のタイムスケールは 1 - 100 年なので,これは実現可能 (Kokubo et al. 2000など)),古い外側の小衛星と新しい内側の小衛星からなる,2 つの小衛星系が誕生する.この系は力学的に進化し,小衛星同士が合体を起こす可能性がある.新しい小衛星同士の衝突段階とそれに引き続く合体により,最終的に単一の月が形成されると考えられる (Rufu et al. 2017).
この系は様々な進化を辿りうる.
衛星が失われるケースとしては,両方の小衛星が別々に原始地球に落下する進化,あるいは小衛星同士が合体した後に原始地球に落下するシナリオが起こりうる.レアケースとしては,片方の小衛星が系からはじき出されるという進化がある.
その他には,小衛星同士が一つに合体して安定になり,外側へ潮汐的に移動するという進化が発生しうる,また,内側の小衛星が原始地球に落下する一方で,外側の小衛星が安定に保たれるケースもある.この場合のレアケースとしては,外側の小衛星が落下して内側の小衛星が安定に保たれるという場合がある.
arXiv:1806.00506
Citron et al. (2018)
The role of multiple giant impacts in the formation of the Earth-Moon system
(地球-月系の形成における多重巨大衝突の役割)
概要
地球-月系は 1 回の巨大衝突を経て形成されたことが示唆されている.この過程では,月は衝突で生成されたデブリ円盤の降着によって形成されたと考えられている.しかし,このような巨大衝突が発生する確率は低く,またその進化の間に地球は多数の小さい衝突を経験し,共進化する可能性のある,より小さい衛星を生成する.月形成に関する多数衝突仮説では,現在の月は複数の小さい衛星 (moonlets,小衛星) の合体によって形成されたと考える.これらの小衛星は,連続した大きな衝突によって生成されるデブリ円盤から形成される.
衝突から次の衝突が発生する百万年程度の間に,既に存在していた小衛星は,その後の衝突によって新しい小衛星が形成されるまでの間に,潮汐進化によって外側へ移動する.その段階で,両方の小衛星はお互いが合体するまで,あるいは衛星系が破壊されるまで潮汐的に進化する.
ここでは,既に存在していた小衛星が次の衝突イベントを生き残る可能性を調査した.また,百万年程度の間隔をおいて形成された 2 つの小衛星を含む,地球-小衛星系の力学を調査した.
その結果,既に存在していた小衛星は潮汐的に外側へ移動可能であり,その次の衝突の間も安定を保つことが分かった.その後,既に存在していた小衛星は新しく形成された小衛星と合体するか,あるいは地球と再衝突を起こす.
従って,いくつかの小衛星の合体による月の形成は,複数衝突を介した地球の進化の自然な副産物として起きる.
さらに,地球が過去に月を持っていたかという可能性とその場合の結果を検証し,引き続く衝突による破壊に対する小衛星の安定性は,複数の大きな衝突は月形成の時期を遅らせた可能性を示唆することを見出した.
月形成シナリオについて
ジャイアントインパクト説とその問題点
月の起源を説明する仮説としては,巨大衝突説 (ジャイアントインパクト説) が最も普及したシナリオである.これは,地球-月系の角運動量と,月の鉄と揮発性元素の欠乏を説明できるからである (Canup 2004).月形成を説明するためのあらゆる衝突仮説は,なぜ地球と月は同じ酸素・タングステン・チタンの同位体比を持つのかという疑問を説明できる必要がある (Wiechert et al. 2001など).これらの同位体比は,一般にはそれぞれの planetary embryo で異なる値を示す.
しかし,単一の衝突から必ず月が形成されるのケースは稀であり,N 体シミュレーションでは形成される確率は 2 - 8% と推定されている (Brasser et al. 2013,Elser et al. 2011).この部分的な原因は,衝突の分布が等方的である場合,黄道面に対して小さな傾斜を有する地球-月系を形成できる可能性が低いことにある.
その他には,同程度のサイズの天体同士の衝突が惑星形成段階の後期に起こりづらいことや (Jaxobson & Morbidelli 2014),組成的に類似した天体同士が衝突する可能性はわずか ~ 10% であること (Mastrobuono-Battisti & Perets 2017) などの課題も指摘されている.
スタンダードな hit-and-run 衝突はより可能性があるが,このような衝突がどの程度の頻度で地球に対する最後の巨大衝突になるのかは不明瞭であり,また hit-and-run 衝突になるような,低質量で高衝突速度の天体衝突がどの程度頻繁なのかも不明である (Raymond et al. 2009).
さらに,高角運動量シナリオ (Cuk & Stewart 2012) では初期地球が高速で自転している必要があるが,月形成衝突以前の天体衝突によって角運動量が損失してしまうため,実現が難しい (Rufu et al. 2017).
多重衝突仮説
多重衝突仮説の概要
巨大衝突説には上記のような問題点があり,月形成に関する多重衝突モデルも提案されている (Ringwood 1989,Rufu et al. 2017).これは,月は原始地球への多数回の大きな衝突の自然な帰結として形成されたと考えるものである.それぞれの衝突はデブリ円盤を生成して,そこから小衛星が形成される,この小衛星は次の衝突が起きるより前に,潮汐的に外側へ比較的速く移動する,
引き続く衝突で新しい小衛星が形成されると (デブリ円盤からの衛星形成のタイムスケールは 1 - 100 年なので,これは実現可能 (Kokubo et al. 2000など)),古い外側の小衛星と新しい内側の小衛星からなる,2 つの小衛星系が誕生する.この系は力学的に進化し,小衛星同士が合体を起こす可能性がある.新しい小衛星同士の衝突段階とそれに引き続く合体により,最終的に単一の月が形成されると考えられる (Rufu et al. 2017).
複数小衛星の進化
例えば,過去の衝突や合体によって生成され外側に移動した古い小衛星と,最近の衝突によってロッシュ限界あたりで形成された内側の新しい小衛星の進化を考える.この系は様々な進化を辿りうる.
衛星が失われるケースとしては,両方の小衛星が別々に原始地球に落下する進化,あるいは小衛星同士が合体した後に原始地球に落下するシナリオが起こりうる.レアケースとしては,片方の小衛星が系からはじき出されるという進化がある.
その他には,小衛星同士が一つに合体して安定になり,外側へ潮汐的に移動するという進化が発生しうる,また,内側の小衛星が原始地球に落下する一方で,外側の小衛星が安定に保たれるケースもある.この場合のレアケースとしては,外側の小衛星が落下して内側の小衛星が安定に保たれるという場合がある.
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