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Non-gravitational acceleration in the trajectory of 1I/2017 U1 (‘Oumuamua)
Micheli et al. (2018)
Non-gravitational acceleration in the trajectory of 1I/2017 U1 (‘Oumuamua)
(オウムアムアの軌跡における非重力的加速)

概要

‘Oumuamua (1I/2017 U1) (オウムアムア) は,恒星間空間に起源を持ち,太陽系内に入ってきたことが知られている初めての天体であり,太陽に重力的に束縛されておらず太陽に対して双曲線軌道を描く.

この天体が太陽系に滞在している最中に,多数の物理的な観測が行われた.その結果,この天体が異様に細長い形状を持ち,タンブリング回転をしていることが明らかになった.

オウムアムア表面の物理特性は彗星核のものに類似しているが,観測からは彗星活動の存在は検出されていない.

天体の運動はほとんどは重力によって決まるが,彗星の軌跡は彗星からの脱ガスによる非重力的な力によっても影響される.しかし非重力的加速は,重力による加速よりも少なくとも 3 - 4 桁小さいので,純粋に重力のみの影響を受けた時の軌道からのずれを検出するためには,長期間に渡る高品質の位置天文学観測を要する.
結果として,非重力効果は限られた小天体のみにおいて測定されている (Królikowska 2004).


ここでは,オウムアムアの運動における非重力的加速が 30 σ の信頼度で検出されたことを報告する

地上と宇宙空間からの集中的な観測によって得られた撮像データを解析した.解析からは,観測機器によるバイアスを排除した,
その結果,オウムアムアの全ての位置天文学データは,太陽中心の動径方向の加速度として \(r^{-2}\) か \(r^{-1}\) に比例する力を非重力的成分としてモデルに含んだ場合によく記述できることが分かった.

オウムアムアに非重力的な力を与えている原因としては複数考えられるが,太陽輻射圧,引力的な力,摩擦的な力,大きく磁化した天体の太陽風との相互作用,天体がいくつかの空間的に分割された天体から構成されていたり,見かけの中心と質量中心の間に明らかなずれを持つことによる幾何学的な効果の影響に関しては否定される.
物理的に可能性のある説明としては,彗星的な脱ガスによるものである可能性がある.つまり,オウムアムアは実際には彗星に似た熱的特性を持っていると考えられる.

脱ガスによる非重力的な加速度項

オウムアムアのアストロメトリ観測の結果,この天体の軌跡を説明するためには,(4.92 ± 0.16) × 10-6 m s-2 の余分な加速度項が必要であることが判明した.これは,30σ の信頼度で非重力的な加速の存在を検出したことに対応する.

この加速度が天体からの脱ガス由来だとすると,水の生成率は 1.4 AU 付近で 1.5 kg s-1,一酸化炭素は 2.1 kg s-1 が必要である.この値は検出限界よりも十分低いため,OH の脱ガスが分光観測から検出されていないこととは矛盾しない.

しかし上記で示唆された水の生成率を元にすると,CN が検出されていないこと,および太陽系における CN と OH の存在比を考慮すると,オウムアムアでは CN が大きく欠乏した組成になっている必要があると考えられる.

また,モデルではオウムアムアでのダスト生成率は 0.4 kg s-1 であるとも予測される.これはオウムアムアの撮像観測で検出出来ているはずの生成率である.
しかし,もし生成されるダスト粒子が数百マイクロメートルからミリメートルよりも大きいもので占められている場合は,可視光の波長では検出されないだろう.例えば太陽系内天体では,2P/Encke (エンケ彗星) が近日点付近で小さいダストが欠乏していることが知られている.

その他の非重力的な影響に関する考察

オウムアムアに非重力的な影響を及ぼしうる候補としては,(1) 太陽輻射圧,(2) ヤルコフスキー効果,(3) 速度ベクトルに沿った摩擦状の効果,(4) 速度の衝撃的変化,(5) 連星あるいは分裂した天体,(6) 光学的な中心のずれ,(7) 磁化した天体 が挙げられる.

しかし後述するように,これらの効果は物理的に非現実的であるか,あるいはオウムアムアの観測を説明するには不十分である.

(1) 太陽輻射圧

動径方向に働く加速度で \(r^{-2}\) に比例し,また太陽の方向とは反対方向に働く力として最もシンプルなものは,太陽輻射による圧力 (放射圧,輻射圧) である.この効果は,いくつかの小さい小惑星では検出されている.

しかしオウムアムアの場合,観測された非重力的な加速度を太陽輻射圧で実現するためには,オウムアムアの密度が不当に低くなければならない.具体的には,同程度のサイズを持つ太陽系小惑星の典型的な密度よりも 3 - 4 桁低い密度でないと,観測を説明することが出来ない.

(2) ヤルコフスキー効果

宇宙空間で自転する天体は,熱的光子の非等方放射による小さい力を受ける.これがいわゆる Yarkovsly effect (ヤルコフスキー効果) である.

これも太陽輻射圧の場合と同様に,観測を説明するには,オウムアムアが極めて低密度である必要がある.

またこの効果は主に軌道に沿った方向の動きに影響を与えるが,これは観測データとは合わない.

(3) 速度ベクトルに沿った摩擦状の効果

摩擦や引力に似た現象のようないくつかの力学的効果は,天体の運動方向に沿っている傾向があり,太陽中心の動径ベクトルの方向には沿わない傾向がある.

しかしこれらの効果は観測を説明するのには不十分なばかりではなく,引力的な現象は負である必要があると考えられるにもかかわらず,正の値を持つ.従ってオウムアムアの軌跡を説明することが出来ない.

(4) 速度の衝撃的変化

これは,単一の衝撃的な速度の加速現象が発生したと考えるモデルである.例えば何らかの衝突による加速が発生した場合などである.

しかし衝突を含んだオウムアムアの軌跡のモデルは,動径方向の加速のみのモデルよりも観測データとは合わない.

更に重要なことに,観測期間の離れたデータ中においても,オウムアムアに働く非重力的な力の兆候は検出されている.そのため,短時間での衝突によるような加速ではなく,連続的な加速によると考えた方がもっともらしい.

(5) 連星あるいは分裂した天体

連星や分裂した形状の天体の場合は,それらの重心が純粋な重力的な軌道に従うことになる.

この状況で,連星の片方や分裂した天体の主要な部分のみを観測していた場合,重心からずれた場所を観測している影響によって,天体に非重力的な加速度が働いているかのように見える可能性がある.

しかし,そのような二次的天体や破片は,オウムアムアより数等級暗いものまでこれまでの観測データ中には見られていない.また観測からは,オウムアムアの 100 分の 1 サイズの天体が付随している可能性は否定できないが,そのような非常に小さい天体では,観測されているほどの軌跡への影響を引き起こすことが出来ない.

(6) 光学的な中心のずれ

オウムアムアは,位置天文で測定される位置中心と,天体の質量中心の間に大きなズレを生じさせるような表面特性を持っている可能性もある.つまり,光学的に観測したときの天体のみかけの中心と,天体の重心が大きくずれているという状況である.

しかし,オウムアムアに対して考えうる最も長い天体の広がりの 800 m (アルベドが 0.04 と低い値) を仮定した場合でも,2 つの参照点の最大間隔は,地球に最近接した場合でも 0.005” に過ぎない.これは,重力のみを考慮した時の軌跡と,観測された位置のずれを説明するには数桁小さい値である.

(7) 磁化した天体

もしオウムアムアが強い磁場を持っていた場合,太陽風との相互作用がオウムアムアの運動に影響を及ぼす.

オウムアムアが双極磁場を持つと仮定し,さらにプラズマ流体モデル,典型的な太陽風速度と陽子数密度を仮定した.その場合,磁化していることによって受ける加速度は 2 × 10-11 m s-2 であり,これは観測を説明できる値よりも 105 小さい.
この状況は,小惑星 (9969) Braille で測定されている強い磁化と密度を採用した場合でも同じである.

脱ガスによる加速

上記までで挙げられていないもののうち,オウムアムアに非重力的な加速度を生じさせている可能性があるのが,天体からの脱ガスによるものである.これは,オウムアムアがミニチュア版の彗星として振る舞っていることが前提となっている.

オウムアムアのスペクトル,および目立った彗星活動は見られないという観測事実からは,この天体は断熱的な薄いマントルを持った彗星天体であるという仮説が提唱されている (スペクトル的には彗星核に近い特性を持っている).オウムアムアが脱ガスによる加速度を受けているという説は,この仮説と整合的である.
また,脱ガスによる非重力的な加速度は,その他の太陽系の彗星でも観測されている.

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