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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1807.04877
Cunha et al. (2018)
Gravitational Waves From Ultra Short Period Exoplanets
(超短周期系外惑星からの重力波)

概要

過去 20 年の間に,様々な観測技術によって数千個の系外惑星が発見されている.この発見数は,現在進行中の,そして近い将来に計画されているミッションと装置によってさらに増加する.

また将来的には,近傍の系外惑星とその主星からの重力波も,新世代の検出器で検出することが出来ると期待されている.この新世代の検出器には,宇宙空間で重力波を検出するプロジェクトである Laser Interferometer Space Antenna (LISA) を含む.

ここでは例として,極端に短い軌道周期 (80 分未満) を持つ系外惑星について議論する.これらの惑星は,重力波光度 1030 erg/s,strain (空間のひずみ) 10-22,周波数 > 10-4 Hz を持つと期待される.これは,LISA の一般的な感度曲線の中にある

従ってここでの解析は,放射される重力波のパターンは,超短周期系外惑星を発見するための効率的な手段となり得ることを示唆している.

超短周期惑星系からの重力波

基礎方程式

2 つの天体がケプラー軌道を運動しており,その有効軌道長半径を \(a\),離心率を \(e\) とすると,楕円運動の一周期の間に放出される重力波放射の合計の平均値は,
\[
L_{\rm GW}=\frac{32}{5}\frac{G^{4}}{c^{5}}\frac{m_{1}^{2}m_{2}^{2}\left(m_{1}+m_{2}\right)}{a^{5}\left(1-e^{2}\right)^{7/2}}\left(1+\frac{73}{24}e^{2}+\frac{37}{96}e^{4}\right)
\]
となる.地球から観測できる見かけの光度は \(l=L_{\rm GW}/4\pi d^{2}\) となる.

天体が離心軌道である場合は,放射されるエネルギーは単色的ではなくなる.
連星系がゼロではない軌道離心率を持っているか,重力波の放射が強いかに関わらず,軌道運動は急速に円軌道に縮退していく.ここで注目するのは超短周期惑星からの重力波放射である.そのためここでは \(e=0\) とする.

放出される重力波の周波数は軌道周波数の 2 倍であり,
\[
f_{\rm GW}=\frac{1}{\pi}\sqrt{\frac{G\left(m_{1}+m_{2}\right)}{a^{3}}}
\]
となる.

ひずみ (strain) の大きさは “chirp mass” で特徴付けられる.
\[
h=\left(\frac{32}{5}\right)^{1/2}\frac{G^{5/3}}{c^{4}}\frac{M_{*}^{5/3}}{d}\left(\pi f_{\rm GW}\right)^{2/3}\sqrt{\cos^{4}i+6\cos^{2}i+1}
\]
ここで,
\[
M_{*}\equiv\mu^{3/5}m^{2/5}
\]
が chirp mass であり,換算質量 \(\mu=m_{1}m_{2}/\left(m_{1}+m_{2}\right)\),合計質量 \(m=m_{1}+m_{2}\) である.また \(i\) は連星系の傾斜角で,連星の軌道平面と地球からの視線方向との角度を意味している.一般に傾斜角の影響は小さいが,常にひずみを増加させる効果がある.

その他に,累積の周期変動も連星からの重力波において重要な物理量である.
\[
\frac{\dot{P}}{P}=-\frac{96}{5}\frac{G^{5/3}\mu m^{2/3}}{c^{5}}\left(\frac{P}{2\pi}\right)^{-8/3}
\]

具体例

これらを具体的な超短周期惑星系に適用すると,GP Com b (かみのけ座GP星b) では,1.45 × 1030 erg/s,ひずみは 1.98 × 10-22,\(\dot{P}/P\) = -3.44 × 10^-17 /s となる.
同様に,V396 Hya b (うみへび座V396星b) では,それぞれ 0.17 × 1030 erg/s,0.98 × 10-22,\(\dot{P}/P\) = -0.83 × 10^-17 /s,J1433 b では 2.69 × 1030 erg/s,0.89 × 10-22,\(\dot{P}/P\) = -2.78 × 10^-17 /s となる.
これらは LISA で検出可能な範囲内である




※追記
後に Wong et al. (2018) によって,この検出可能性について疑義を呈するコメントが発表されている.

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