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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.06149
Liu & Ormel (2018)
Catching drifting pebbles I. Enhanced pebble accretion efficiencies for eccentric planets
(流れるペブルの捕獲 I.離心惑星のペブル降着効率の増加)

概要

ダストの凝固理論は,ミクロンサイズのダスト粒子が,ミリメートル〜センチメートルのサイズに到達した段階で,原始惑星系円盤の内側へ移動するペブル (pebble,小石サイズの固体粒子) に成長することを予測する.

円盤を内側へ移動するペブルが惑星の軌道を横切るとき,ペブルの一部は惑星へと降着する.ペブル降着機構では,惑星の重力的な引力とガス抵抗の組み合わせにより,惑星への降着率は大幅に増加する.

ここでは,ペブル降着効率 (ペブルが惑星に降着する確率) を,二次元の極限で計算した.二次元の極限は,ペブルが原始惑星系円盤の中心平面に存在しているという状態である.特に,ペブル降着効率の惑星の離心率への依存性と,その時の惑星形成モデルへの影響について調査を行った.

N 体シミュレーションを用いて,局所的な計算と大局的な計算双方でペブル降着効率を計算した.大局的な計算では,惑星が離心率を持った軌道にある時の惑星へのペブル降着効率を計算した.

その結果,局所的な計算と大局的な計算は,一般に整合的な結果を与えることが判明した.しかし大局的な手法は,惑星が数地球質量より重くなるか,ペブルの空気力学的サイズ (ストークス数) が 1 より大きくなった際に,より精密な結果を与える.

ペブルと惑星の間の相対速度が惑星の離心速度によって決まるような状況になると,惑星へのペブル降着効率は惑星の離心率に伴って増加する.しかしさらに大きな離心率では,相対速度はペブル降着を起こすには大きくなり過ぎる.そのような状態になるとペブル降着効率は大幅に低下し,降着は弾道レジームへと移行する.

ここでは,計算したペブル降着効率の一般的な表式を与える.得られた式を,既に形成された巨大惑星と共鳴に入っている二番目の原始惑星の形成に適用した.その結果,原始惑星はその大きな軌道離心率の影響で,急速に成長する事を見出した.

離心軌道にある惑星の最大ペブル降着効率は,円軌道にある惑星よりも数倍大きな値になる.これにより,惑星形成に head start (有利なスタート) をもたらし,その後の質量成長の促進をもたらす.

主な結論

1. 局所的な計算と大局的な計算の結果は一般に整合的である.しかし,大局的な計算はペブルと惑星の相互作用をより正確にシミュレートする.これは,大局的な計算では曲率の効果が考慮されていること,またペブルの力学を適切にモデル化していることが原因である,局所的な計算では運動方程式が線形化されているため,惑星が数地球質量より重い場合と,ペブルの空気力学的サイズが 1 より大きい際に,ペブル降着効率を過大評価してしまう.

2. 2 次元レジームでも,ペブル降着効率は惑星の軌道離心率の関数であることを見出した.離心速度が円軌道惑星から得られる相対速度よりも大きくなると,惑星は高い効率でペブルを降着する.そのため,ペブル降着効率は離心率に伴い増加する.しかし惑星の離心率が settling condition を満たせない程度に大きくなると,ペブル降着効率は急激に低下する.そのためペブル降着は弾道レジームに遷移する.惑星が中間的な離心率 (0.01 - 0.1) を持つ場合,円軌道の場合に比べて降着効率は 3 - 5 倍大きくなる.

3. ペブル降着効率を,惑星の軌道離心率,惑星と恒星の質量比,円盤ガスの向かい風の度合いを表す前因子,およびペブルの空気力学的サイズ (ストークス数) の関数として表現した.その結果は過去の研究と整合的で,ペブル降着効率は惑星-恒星質量比に伴って増加し,向かい風の速度とペブルサイズに伴って減少する.シミュレーションを元にして,この関係の解析フィット表式を導出した.

4. 2 次元極限では,共鳴に捕獲された原始惑星と離心軌道にあるものは,円軌道にある惑星よりもペブル降着によって速く成長する.そのため,最初に形成された巨大惑星と共鳴に入っている二番目の惑星形成が優先的に起きる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.02832
Kennedy et al. (2018)
Kuiper Belt Analogues in Nearby M-type Planet-host Systems
(近傍の惑星を持った M 型星系におけるカイパーベルト類似構造)

概要

ハーシェルを用いた 21 個の晩期型星のサーベイ観測の結果について報告する.今回観測した恒星は,視線速度法で系外惑星が発見されているものである.このサーベイ観測の目的は,これらの惑星系に新しい円盤を検出し,惑星の存在と円盤の特性の間の何らかの相関について調査することである.

その結果,既に発見されていた GJ 581 まわりの円盤に加え,GJ 433 と GJ 649 の周りの 2 つの新しい円盤を発見した.従って,今回のサンプルでの円盤検出率は 14% であり,98% の信頼度を有する比較参照データである DEBRIS M 型星での検出率である 1.2% よりも高い.

しかしさらなる解析では,比較対象サンプルでの円盤の検出感度は今回のサーベイでの分光光度がおよそ 2 倍ほど低く,惑星の存在と円盤の明るさの間の相関の有意性は 98% 以下に低下した.


新たに発見された円盤の具体的な構造の推定も行った,

GJ 433 まわりの円盤は,円盤半径が 1 - 30 au の範囲にあると考えられる.
GJ 649 まわりの円盤は, 6 - 30 au の範囲内であると考えられる.円盤構造はわずかであるが空間分解され,視線方向に対する円盤の傾きは,エッジオンの状態 (円盤の縁の方向を見ている状態) と整合的であるように思われる.

どちらのケースも,円盤は惑星が存在する領域 (それぞれ 0.06 au と 1.1 au) よりもずっと遠方に存在している.しかし視線速度法は遠方に存在する惑星に対しては検出感度がないため,~ 5 au 程度までの位置にある土星質量惑星や,それよりさらに遠方にあるより重い惑星がまだ発見されていないだけである可能性はある.
これらの M 型星系の構造は,太陽的な恒星と低質量の惑星を伴った円盤と類似している.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.02840
Raymond et al. (2018)
Interstellar object 'Oumuamua as an extinct fragment of an ejected cometary planetesimal
(放出された彗星状微惑星の枯渇した破片としての恒星間天体オウムアムア)

概要

’Oumuamua (オウムアムア) は,太陽系内を双曲線軌道で通過しているところを発見された.この天体の表面の色は,太陽系内の揮発性物質豊富な天体に似ているが,太陽への近接遭遇の最中にガスの放出や活動を見せないという明らかな矛盾点がある.

ここでは,その矛盾は巨大惑星による微惑星の惑星系外への放出の動力学によって説明できる可能性があることを示す.

オウムアムアは,海王星〜木星質量の巨大惑星を形成した惑星形成円盤の中で形成された,彗星状の微惑星の枯渇した破片であるという説を提案する.オウムアムアの母天体は惑星系からの放出に至るまでに,巨大惑星と近接遭遇を起こし,シューメーカー・レヴィ第9彗星が木星に接近した際と同じように潮汐破壊によって小さい破片へと破壊される.

動力学シミュレーションを用いて,惑星系からの放出に先立って 0.1 - 1% の彗星状の微惑星が惑星との破壊的な遭遇を経験することを示す.岩石微惑星は氷微惑星と比べて高密度であるため,遭遇時に破壊されづらい.

近接遭遇によって破壊された後,破片は中心星に十分に接近して表面の揮発性物質を失い,枯渇した状態になる.オウムアムアのような天体の破片は恒星間天体の集団における質量としてはわずかな割合しか占めないが,数的には多いと考えられる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.06187
McDonald & Kerins (2018)
Pre-discovery transits of the exoplanets WASP-18 b and WASP-33 b from Hipparcos
(ヒッパルコスからの系外惑星 WASP-18b と WASP-33b の発見前のトランジット)

概要

位置天文衛星ヒッパルコス (観測期間 1989 年 - 1993 年) の測光データ中から,WASP-18b と WASP-33b のトランジットを再発見した.またデータ中には,HAT-P-56b と HAT-P-2b の暫定的なトランジットの検出も見られた.

これらのデータを元に,WASP-18b と WASP-33b の新しい天体暦を導出した.

WASP-18b に対しては暫定的な (~ 1.3 σ) 軌道崩壊が測定されたが,その軌道崩壊の割合から示唆される潮汐の Q 値は 5 × 105 と小さく,惑星の生存時間が 106 年未満と短すぎる値になってしまうため,測定値は間違っているか精度が悪い可能性がある.

WASP-33b では軌道崩壊の兆候は検出されず,潮汐の Q 値として 2 × 105 という下限値を与えた.

両惑星において,公開された天体暦中の不定性は過小評価されているように思われる.WASP-18b の軌道周期の導出における不定性は,もし現在のこの惑星の天体暦がよく決定された場合,大きく減らすことが出来る.

背景

位置天文衛星ヒッパルコスは,1989 年から 1993 年まで運用され,120000 個の太陽近傍星を,数ミリ等級の精度で広帯域測光観測を行った.

HD 209458b と HD 189733b のトランジットは,ヒッパルコスの過去の測光データ中からも発見されている (Robichon & Arenou 2000,Hebrard & Lecavelier Des Etangs 2006).ここでは,その他の系外惑星のトランジットがヒッパルコスのデータ中に含まれていないか,アーカイブデータの調査を行った.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1803.02847
Sheehan & Eisner (2018)
Multiple Gaps in the Disk of the Class I Protostar GY 91
(Class I 原始星 GY 91 の円盤中の複数のギャップ)

概要

ρ Ophiuchus (へびつかい座ロー星) L1688 分子雲コンプレックス中にある class I 天体 GY 91 の,これまでで最も高い空間分解能の ALMA による観測結果について報告する.観測は,870 µm と 3 mm 波長でのダスト連続波放射の撮像を行った.

GY 91 は半径が ~ 80 AU の円盤を持っている.また円盤の傾斜角は ~ 40° である.
しかし最も面白い特徴は,この円盤の 10, 40, 70 AU の位置に暗いギャップが存在していることである.それらの特徴を円盤の表面密度分布におけるギャップだと仮定してモデル化し,それぞれのギャップの幅をそれぞれ 7, 30, 10 AU と推定した.

これらのギャップは,HL Tau 周りの円盤に見られるギャップと著しく類似している.このことは,ギャップは円盤中に隠された土星質量の惑星によって形成されている事を示唆する.

GY 91 と HL Tau の相対的な年齢に制約を与えるため,HL Tau のエンベロープと円盤についてもモデル化を行い,これら 2 つの天体は似た年齢であることが分かった,しかし GY 91 の方が若い可能性がある.
ギャップの形成に関しては,スノーラインや磁気的デッドゾーンが原因になっている可能性もある.しかし,もし惑星が実際にギャップを形成しているのであれば,ギャップを形成している土星質量の惑星は,原始惑星系円盤の寿命の最初の ~ 50 万年の間に形成されている必要がある
※注釈
GY 91 の天体名における "GY" は,Greene & Young (1992) から取られている.この論文では,ρ Ophiuchus 領域の暗黒星雲を近赤外線でサーベイ観測した結果を報告している.その観測から,481 個の天体を検出し,それらがカタログ化されている.GY 91 はその中の 91 番目の天体である.

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