×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1705.01836
Lecavelier des Etangs et al. (2017)
Search for rings and satellites around the exoplanet CoRoT-9b using Spitzer photometry
(スピッツァー測光観測を用いた系外惑星 CoRoT-9b まわりの環と衛星の探査)
解析の結果は検出無しであり,そこから惑星周辺環境における環や衛星の物理的特徴への上限値を与えた.CoRoT-9b の周囲では,3 σ の確度で,2.5 地球半径よりも大きい衛星の存在は排除された.
また 2 回の観測をあわせ,存在しうる環の広い範囲のサイズと傾きに対して,存在を排除した.仮に環がロッシュ限界まで広がっているとした場合,地球から見た場合の環の傾斜角は,環がシリケイトの場合は 13°より小さい必要があり,水氷の密度の物質の場合は 3°より小さい必要があるという事が分かった.
また,環は 4 つの巨大惑星,木星,土星,天王星,海王星の周りに存在している.最近では細く濃い環が,土星以遠にある小さいケンタウルス族天体であるカリクローの周囲に発見されている.
系外惑星でも,系外衛星 (exomoon) や系外環の存在が期待される.
惑星の周りに存在する衛星は,惑星への影響が特に大きい.ハビタブルな環境にある衛星の有無に加え,衛星の存在は惑星自体の生命存在可能性にも重要な役割を及ぼすためである.有名なケースは地球の衛星である月で,月は地球の自転軸傾斜角の変動を安定化させ,大規模な気候変動を起こすのを抑える効果を持っている.これは,地球での生命の進化に影響があると考えられる (Lasker et al. 1993).
例えば,トランジットする惑星周辺に存在する物質を,トランジット測光で検出するというものである.衛星や環によるトランジットは,惑星のトランジット光度曲線に明確な特徴を残す (Satoretti & Schneider 1999など).
衛星による力学的な効果としては,衛星の存在によるトランジット時刻変動 (Simon et al. 2007など),あるいはトランジット継続時間変動 (Kipping 2009など) がある.また,マイクロレンズ法を含む系外衛星の検出手法 (Han & Han 2002など),分光観測 (Simon et al. 2010など) も提案されている,さらに直接撮像 (Agol et al. 2015) なども提案されている.
環の検出に関しては,反射光と分光観測の手法が提案されている (Arnold & Schneider 2004など).
系外衛星と環の検出についてはいくつかの試みがあるが,これまでに系外衛星も環も明確に検出されていない.
ケプラーデータからの探査では,信頼できる検出は無かった (Kipping et al. 2015).
Bennett et al. (2014) ではマイクロレンズイベント MOA-2011-BLG-262Lb の検出を報告している.これは自由浮遊ガス惑星を公転する,地球より軽い程度の質量の衛星である可能性がある.しかし衛星ではないシナリオも排除されていないため未確定である.
21 の惑星 (うち大部分がホットジュピター) のトランジットを,ケプラーの測光観測データから分析した研究でも検出は無かった (Heising et al. 2015).
惑星周囲を取り囲む固体の物質の検出の示唆は,いくつかの系外惑星系で報告がある.がか座ベータ星b (β Pictoris b, Lecavelier des Etangs et al. 1995, 2016),フォーマルハウトb (Kalas et al. 2013) などがその例である.
1SWASP J140747.93-394542.6 では,不確実だが,不可視の惑星 J1407b の周囲に存在する環が,その中にある衛星の存在によって切り取られているのを示唆する観測結果が得られている (Kenworthy & Mamajek 2015).
衛星や環が安定に存在するためには,惑星の重力が恒星からの重力よりも支配的になる領域であるヒル球の十分内側に環や衛星が存在している必要がある.安定な順行軌道は,ヒル球半径の 0.4 倍以内である (Hinse et al. 2010など).
惑星のヒル球のサイズは,近星点の距離に比例する (Lecavelier des Etangs et al. 1995).CoRoT-9b 発見以前のトランジット惑星はホットジュピター型か,HD 80606b のように恒星に非常に近い近星点を持つ軌道であった.例えば HD 209458b のヒル球の半径は 0.4 × 106 km,もしくは 4 惑星半径と小さい.
それに対して CoRoT-9b はいくらか低温な惑星で,近星点は 0.33 AU より小さくはならない (Bonomo et al. 2017).ヒル球半径は 3.5 × 106 km である.この半径は,木星の衛星カリストや土星の衛星タイタンの軌道長半径よりも 2 - 3 倍大きい値である.なお,木星や土星の衛星は,小さいものも含めて全て惑星のヒル球半径の半分以内の範囲に存在している.
arXiv:1705.01836
Lecavelier des Etangs et al. (2017)
Search for rings and satellites around the exoplanet CoRoT-9b using Spitzer photometry
(スピッツァー測光観測を用いた系外惑星 CoRoT-9b まわりの環と衛星の探査)
概要
スピッツァー宇宙望遠鏡の 4.5 µm での測光観測を用いて,長周期のトランジット惑星 CoRoT-9b のまわりの環と衛星の探査を行った.合計 2 回のトランジットを 2010 年と 2011 年に観測してその解析を行った.解析の結果は検出無しであり,そこから惑星周辺環境における環や衛星の物理的特徴への上限値を与えた.CoRoT-9b の周囲では,3 σ の確度で,2.5 地球半径よりも大きい衛星の存在は排除された.
また 2 回の観測をあわせ,存在しうる環の広い範囲のサイズと傾きに対して,存在を排除した.仮に環がロッシュ限界まで広がっているとした場合,地球から見た場合の環の傾斜角は,環がシリケイトの場合は 13°より小さい必要があり,水氷の密度の物質の場合は 3°より小さい必要があるという事が分かった.
太陽系外の衛星と環の探査
太陽系内の衛星と環
太陽系内の惑星は水星と金星を除く惑星が衛星を持っており,直径が 10 km を超える衛星の個数は 80 個を超える.そのうち最も大きい 6 個の衛星の直径は 3000 - 5300 km の範囲にある.惑星だけではなくいくつかの準惑星,冥王星,エリス,ハウメアも衛星を持つまた,環は 4 つの巨大惑星,木星,土星,天王星,海王星の周りに存在している.最近では細く濃い環が,土星以遠にある小さいケンタウルス族天体であるカリクローの周囲に発見されている.
系外惑星でも,系外衛星 (exomoon) や系外環の存在が期待される.
惑星の周りに存在する衛星は,惑星への影響が特に大きい.ハビタブルな環境にある衛星の有無に加え,衛星の存在は惑星自体の生命存在可能性にも重要な役割を及ぼすためである.有名なケースは地球の衛星である月で,月は地球の自転軸傾斜角の変動を安定化させ,大規模な気候変動を起こすのを抑える効果を持っている.これは,地球での生命の進化に影響があると考えられる (Lasker et al. 1993).
系外衛星と環の探査
系外衛星や環の検出手法はいくつか提案されている.例えば,トランジットする惑星周辺に存在する物質を,トランジット測光で検出するというものである.衛星や環によるトランジットは,惑星のトランジット光度曲線に明確な特徴を残す (Satoretti & Schneider 1999など).
衛星による力学的な効果としては,衛星の存在によるトランジット時刻変動 (Simon et al. 2007など),あるいはトランジット継続時間変動 (Kipping 2009など) がある.また,マイクロレンズ法を含む系外衛星の検出手法 (Han & Han 2002など),分光観測 (Simon et al. 2010など) も提案されている,さらに直接撮像 (Agol et al. 2015) なども提案されている.
環の検出に関しては,反射光と分光観測の手法が提案されている (Arnold & Schneider 2004など).
系外衛星と環の検出についてはいくつかの試みがあるが,これまでに系外衛星も環も明確に検出されていない.
ケプラーデータからの探査では,信頼できる検出は無かった (Kipping et al. 2015).
Bennett et al. (2014) ではマイクロレンズイベント MOA-2011-BLG-262Lb の検出を報告している.これは自由浮遊ガス惑星を公転する,地球より軽い程度の質量の衛星である可能性がある.しかし衛星ではないシナリオも排除されていないため未確定である.
21 の惑星 (うち大部分がホットジュピター) のトランジットを,ケプラーの測光観測データから分析した研究でも検出は無かった (Heising et al. 2015).
惑星周囲を取り囲む固体の物質の検出の示唆は,いくつかの系外惑星系で報告がある.がか座ベータ星b (β Pictoris b, Lecavelier des Etangs et al. 1995, 2016),フォーマルハウトb (Kalas et al. 2013) などがその例である.
1SWASP J140747.93-394542.6 では,不確実だが,不可視の惑星 J1407b の周囲に存在する環が,その中にある衛星の存在によって切り取られているのを示唆する観測結果が得られている (Kenworthy & Mamajek 2015).
CoRoT-9b の探査
CoRoT-9b (Deeg et al. 2010) は,衛星や環の探査に適した系外惑星である.この惑星は 0.84 木星質量であり,中心星はスペクトル型 G3 の主系列星である.軌道長半径は 0.402 AU でほぼ円軌道で公転し,公転周期 95.3 日である.トランジットのインパクトパラメータはほぼ 0 であり,トランジット継続時間は 8 時間である.衛星や環が安定に存在するためには,惑星の重力が恒星からの重力よりも支配的になる領域であるヒル球の十分内側に環や衛星が存在している必要がある.安定な順行軌道は,ヒル球半径の 0.4 倍以内である (Hinse et al. 2010など).
惑星のヒル球のサイズは,近星点の距離に比例する (Lecavelier des Etangs et al. 1995).CoRoT-9b 発見以前のトランジット惑星はホットジュピター型か,HD 80606b のように恒星に非常に近い近星点を持つ軌道であった.例えば HD 209458b のヒル球の半径は 0.4 × 106 km,もしくは 4 惑星半径と小さい.
それに対して CoRoT-9b はいくらか低温な惑星で,近星点は 0.33 AU より小さくはならない (Bonomo et al. 2017).ヒル球半径は 3.5 × 106 km である.この半径は,木星の衛星カリストや土星の衛星タイタンの軌道長半径よりも 2 - 3 倍大きい値である.なお,木星や土星の衛星は,小さいものも含めて全て惑星のヒル球半径の半分以内の範囲に存在している.
PR
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1705.01058
Mroz et al. (2017)
OGLE-2013-BLG-0132Lb and OGLE-2013-BLG-1721Lb: Two Saturn-mass Planets Discovered around M-dwarfs
(OGLE-2013-BLG-0132Lb と OGLE-2013-BLG-1721Lb:M 型矮星の周りに発見された 2 つの土星質量惑星)
惑星による光度曲線のアノマリーは,OGLE と MOA の測光サーベイによって高頻度で観測された.光度曲線のモデリングから,惑星と恒星の質量比はそれぞれ (5.15 ± 0.28) × 10−4 と (13.18 ± 0.72) × 10−4 であった.
どちらのマイクロレンズイベントも,信頼できる視差効果とレンズ天体の質量の測定を行うには短く暗いものであった.そのため,ベイズ解析を行って質量の解析を行った.解析の結果,OGLE-2013-BLG-0132Lb は 0.29 木星質量,OGLE-2013-BLG-1721Lb は 0.64 木星質量と推定される.
相対的な固有運動が大きいため,OGLE-2013-BLG-0132 は高分解撮像観測の良い候補天体である.
今回発見されたどちらの惑星も,近年発見が増えている惑星のグループである,スノーラインを超えた位置で M 型矮星を公転している,木星より小さい質量の惑星に属する.
距離:3.9 kpc
射影した軌道長半径:3.6 AU
距離:6.3 kpc
射影した軌道長半径:2.6 AU
arXiv:1705.01058
Mroz et al. (2017)
OGLE-2013-BLG-0132Lb and OGLE-2013-BLG-1721Lb: Two Saturn-mass Planets Discovered around M-dwarfs
(OGLE-2013-BLG-0132Lb と OGLE-2013-BLG-1721Lb:M 型矮星の周りに発見された 2 つの土星質量惑星)
概要
M 型矮星を公転する土星質量惑星の惑星系を 2 つ,重力マイクロレンズイベントから発見した.惑星による光度曲線のアノマリーは,OGLE と MOA の測光サーベイによって高頻度で観測された.光度曲線のモデリングから,惑星と恒星の質量比はそれぞれ (5.15 ± 0.28) × 10−4 と (13.18 ± 0.72) × 10−4 であった.
どちらのマイクロレンズイベントも,信頼できる視差効果とレンズ天体の質量の測定を行うには短く暗いものであった.そのため,ベイズ解析を行って質量の解析を行った.解析の結果,OGLE-2013-BLG-0132Lb は 0.29 木星質量,OGLE-2013-BLG-1721Lb は 0.64 木星質量と推定される.
相対的な固有運動が大きいため,OGLE-2013-BLG-0132 は高分解撮像観測の良い候補天体である.
今回発見されたどちらの惑星も,近年発見が増えている惑星のグループである,スノーラインを超えた位置で M 型矮星を公転している,木星より小さい質量の惑星に属する.
パラメータ
OGLE-2013-BLG-0132L 系
OGLE-2013-BLG-0132L
質量:0.54 太陽質量距離:3.9 kpc
OGLE-2013-BLG-0132Lb
質量:0.29 木星質量射影した軌道長半径:3.6 AU
OGLE-2013-BLG-1721L 系
OGLE-2013-BLG-1721L
質量:0.46 太陽質量距離:6.3 kpc
OGLE-2013-BLG-1721Lb
質量:0.64 木星質量射影した軌道長半径:2.6 AU
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1704.08974
André et al. (2017)
Layered semi-convection and tides in giant planet interiors - I. Propagation of internal waves
(ガス惑星内部での層状半対流と潮汐 I.内部波の伝播)
巨大惑星の内部では,層状の半対流は密度の階段構造を形成することができる.これは,薄く安定で成層した接触面によって区切られた複数の対流層からなる.この層状の半対流は,地球においては池や北極海などで見られるものである.
ここでは,層状の半対流を起こしている領域における,内部波 (internal wave) の伝播について調べた.密度の階段構造がある領域に入射する内部波による,エネルギー輸送を予測することが主要な目的である.このモデル化により,内部波が巨大惑星系における月などの他の天体によって励起された時の,結果として起きる潮汐散逸を理解することを目指す.
ここでは局所的なデカルト解析モデルを使用する.また,どの緯度でも完全なコリオリ加速度を考慮した.これにより過去の研究を一般化している.
またここでは,まずは安定に成層化された接触面は無限に薄いとするモデルを採用した.さらに二番目のモデルでは,区分的な線形成層化を仮定する事でこの仮定を緩和した.
その結果,注入した内部波の透過は,密度の階段構造の存在に強く影響されることを発見した.これは,波が初期に純粋な慣性波であった場合でも同様である.とりわけ,全ての波長の低周波波動は,sin-1(ω/2Ω) で定義される臨界緯度付近では完全に透過した.なおここで ω は波の周波数,Ω は惑星の自転周期である.
一方で短波長の波は,それらが自由モード (界面重力波 (interfacial gravity wave) か短波長の慣性モード) と共鳴している場合のみ,効果的に透過した.その他の全てのケースで,波はその波長が全ての階段構造 (単一のステップではなく) の垂直方向の広がりよりも長い場合を除いておおむね反射される.
結果として,注入された内部波は密度の階段構造の存在によって強く影響を受ける.またこの影響の大きさは,波の周波数・緯度・波長に依存する.この結果は,地震学を用いてガス惑星の内部を探る新しい基準を導くかもしれない.また,これらは,潮汐散逸とガス惑星系の進化についての我々の理解に重要な結果をもたらす可能性がある.
arXiv:1704.08974
André et al. (2017)
Layered semi-convection and tides in giant planet interiors - I. Propagation of internal waves
(ガス惑星内部での層状半対流と潮汐 I.内部波の伝播)
概要
層状の半対流 (layered semi-convection) は,土星の光度超過やいくつかのホットジュピターの異常に大きい半径を説明する候補機構である.巨大惑星の内部では,層状の半対流は密度の階段構造を形成することができる.これは,薄く安定で成層した接触面によって区切られた複数の対流層からなる.この層状の半対流は,地球においては池や北極海などで見られるものである.
ここでは,層状の半対流を起こしている領域における,内部波 (internal wave) の伝播について調べた.密度の階段構造がある領域に入射する内部波による,エネルギー輸送を予測することが主要な目的である.このモデル化により,内部波が巨大惑星系における月などの他の天体によって励起された時の,結果として起きる潮汐散逸を理解することを目指す.
ここでは局所的なデカルト解析モデルを使用する.また,どの緯度でも完全なコリオリ加速度を考慮した.これにより過去の研究を一般化している.
またここでは,まずは安定に成層化された接触面は無限に薄いとするモデルを採用した.さらに二番目のモデルでは,区分的な線形成層化を仮定する事でこの仮定を緩和した.
その結果,注入した内部波の透過は,密度の階段構造の存在に強く影響されることを発見した.これは,波が初期に純粋な慣性波であった場合でも同様である.とりわけ,全ての波長の低周波波動は,sin-1(ω/2Ω) で定義される臨界緯度付近では完全に透過した.なおここで ω は波の周波数,Ω は惑星の自転周期である.
一方で短波長の波は,それらが自由モード (界面重力波 (interfacial gravity wave) か短波長の慣性モード) と共鳴している場合のみ,効果的に透過した.その他の全てのケースで,波はその波長が全ての階段構造 (単一のステップではなく) の垂直方向の広がりよりも長い場合を除いておおむね反射される.
結果として,注入された内部波は密度の階段構造の存在によって強く影響を受ける.またこの影響の大きさは,波の周波数・緯度・波長に依存する.この結果は,地震学を用いてガス惑星の内部を探る新しい基準を導くかもしれない.また,これらは,潮汐散逸とガス惑星系の進化についての我々の理解に重要な結果をもたらす可能性がある.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1704.08284
Fridlund et al. (2017)
EPIC 210894022b - A short period super-Earth transiting a metal poor, evolved old star
(EPIC 210894022b:金属が少ない,進化した恒星の恒星をトランジットする短周期スーパーアース)
恒星はヒアデス星団の背後に位置しており,地球からの距離は星団そのものまでの距離の少なくとも 4 倍である.EPIC 210894022 のスペクトルと空間速度からは,この恒星は銀河系の厚い円盤の中にある恒星であることが強く示唆された.
高分散スペクトルからは,この恒星は金属量に乏しく,α-rich な (※注釈:O, Mg, Si, Ca, Ti などの,ヘリウム原子核の反応が関わっている α 元素が多い状態),いくらか進化した太陽型星で,スペクトル型は G3 である.
現在参照可能な視線速度データによると,惑星はスーパーアースクラスの天体であり,質量は 8.6 地球質量で半径は 1.9 地球半径である.長周期の視線速度の変動から,120 日程度よりも長い周期を持つ 2 番目の重い天体の存在が示唆される.この 2 番目の天体が惑星か褐色矮星か恒星かは不明である.
この系の年齢は 10 Gyr (100 億年) 以上であり,この惑星は現在発見されている中で最も年老いた惑星のうちのひとつである.この惑星は我々の銀河の歴史の中の最も初期における惑星形成過程の情報を含んでいると考えられるため,この惑星系のさらなる研究が必要である.
有効温度:5730 K
金属量:[Fe/H] = -0.53
半径:1.3 太陽半径
質量:0.88 太陽質量
年齢:10.770 ± 1.450 Gyr
距離:210 ± 20 pc
半径:1.9 ± 0.2 地球半径
質量:6.6 ± 3.9 地球質量
平均密度:6.6 g cm-3
軌道長半径:0.0621 AU
平衡温度:1309 K (ボンドアルベドをゼロと仮定)
a) 恒星は金属量が低いが α-rich である.
b) 恒星は ~ 145 km s-1 と非常に大きな空間速度を持ち,銀河系の厚い円盤のメンバーである.
c) 測定された恒星のパラメータのモデリングから.中心星の 0.86 太陽質量の恒星のベストフィットによると年齢は 10.8 ± 1.5 Gyr と推定される.
これまでに発見されているスーパーアースやネプチューンクラスの惑星で,非常に古い年齢を持つと思われているものが幾つかある.
例えばケプラー10b と c である (Batalha et al. 2011など).これはケプラーミッションで初めて確認された小型の惑星で,年齢は星震学 (asteroseismology) より 11.9 ± 4.5 Gyr と推定されている.この系は銀河ハローのメンバーであると示唆されている (Batalha et al. 2011).しかしこの恒星の金属量は EPIC 210894022 よりも多く,[Fe/H] = -0.15 である.また年齢の誤差も大きい.さらに,恒星の所属を運動学的に決めるための固有運動も判明していない.
最近確認されたケプラー510 系 (Morton et al. 2016) は金属量が [Fe/H] = -0.35 と低く.また星震学的な年齢は 11.8 Gyr (Silva Aguirre et al. 2015) と推定されている.一方でこの惑星は軌道周期が 19.6 日,半径が ~ 2.2 地球半径だが,質量は測定されていない.
その他にはカプタイン星 (Kapteyn’s star) がある,カプタイン星は別名 GJ 191, LHS 29, HD 33793 を持つ M1 準矮星 (Gizis 1997) であり,[Fe/H] = -0.86 の低い金属量を持つ.この恒星は運動学的に銀河ハローの星に分類され,3.91 pc の距離にある最も近い部類の恒星である.これまでに 2 つの惑星が視線速度で発見されていて,周期はそれぞれ 48.6 日と 121.5 日である (Anglada-Escude et al. 2014),最小質量はそれぞれ 4.8 と 7.0 地球質量と推定されている.
カプタイン星の低い金属量と運動学的な考察から,この系の年齢は 10 Gyr より古いと思われる.しかし正確にどの程度古い星なのかは明らかになっていない.
なお Robertson et al. (2015) では,いくらか異なるデータセットを用いて,カプタインb のシグナルは恒星の活動シグナルに起因するものだと指摘している.Angrada-Escude et al. (2016) ではこのデータセットを再解析し,恒星の活動のシグナルは無く,カプタインb はやはり惑星であるという結論を主張している.これは機器の感度の限界における惑星検出の困難さを示すものである.
惑星が検出されていて,比較的年齢が保証されている中で最も年老いた系は,ケプラー444,ケプラー510,および今回の EPIC 210894022 系である.
arXiv:1704.08284
Fridlund et al. (2017)
EPIC 210894022b - A short period super-Earth transiting a metal poor, evolved old star
(EPIC 210894022b:金属が少ない,進化した恒星の恒星をトランジットする短周期スーパーアース)
概要
K2 ミッションによって得られた光度曲線から,EPIC 210894022b が同定された.系外惑星のトランジットのために開発されたパッケージを用いて,惑星のトランジットによる光度曲線の変動を解析して発見した.また,3 つの独立した望遠鏡と分光器の組み合わせから,分光観測と視線速度観測も行った.恒星はヒアデス星団の背後に位置しており,地球からの距離は星団そのものまでの距離の少なくとも 4 倍である.EPIC 210894022 のスペクトルと空間速度からは,この恒星は銀河系の厚い円盤の中にある恒星であることが強く示唆された.
高分散スペクトルからは,この恒星は金属量に乏しく,α-rich な (※注釈:O, Mg, Si, Ca, Ti などの,ヘリウム原子核の反応が関わっている α 元素が多い状態),いくらか進化した太陽型星で,スペクトル型は G3 である.
現在参照可能な視線速度データによると,惑星はスーパーアースクラスの天体であり,質量は 8.6 地球質量で半径は 1.9 地球半径である.長周期の視線速度の変動から,120 日程度よりも長い周期を持つ 2 番目の重い天体の存在が示唆される.この 2 番目の天体が惑星か褐色矮星か恒星かは不明である.
この系の年齢は 10 Gyr (100 億年) 以上であり,この惑星は現在発見されている中で最も年老いた惑星のうちのひとつである.この惑星は我々の銀河の歴史の中の最も初期における惑星形成過程の情報を含んでいると考えられるため,この惑星系のさらなる研究が必要である.
パラメータ
EPIC 210894022
スペクトル型:G3有効温度:5730 K
金属量:[Fe/H] = -0.53
半径:1.3 太陽半径
質量:0.88 太陽質量
年齢:10.770 ± 1.450 Gyr
距離:210 ± 20 pc
EPIC 210894022b
軌道周期:5.35117 日半径:1.9 ± 0.2 地球半径
質量:6.6 ± 3.9 地球質量
平均密度:6.6 g cm-3
軌道長半径:0.0621 AU
平衡温度:1309 K (ボンドアルベドをゼロと仮定)
EPIC 210894022 系の特徴
この系は非常に古いと考えられる.その理由は,a) 恒星は金属量が低いが α-rich である.
b) 恒星は ~ 145 km s-1 と非常に大きな空間速度を持ち,銀河系の厚い円盤のメンバーである.
c) 測定された恒星のパラメータのモデリングから.中心星の 0.86 太陽質量の恒星のベストフィットによると年齢は 10.8 ± 1.5 Gyr と推定される.
これまでに発見されているスーパーアースやネプチューンクラスの惑星で,非常に古い年齢を持つと思われているものが幾つかある.
例えばケプラー10b と c である (Batalha et al. 2011など).これはケプラーミッションで初めて確認された小型の惑星で,年齢は星震学 (asteroseismology) より 11.9 ± 4.5 Gyr と推定されている.この系は銀河ハローのメンバーであると示唆されている (Batalha et al. 2011).しかしこの恒星の金属量は EPIC 210894022 よりも多く,[Fe/H] = -0.15 である.また年齢の誤差も大きい.さらに,恒星の所属を運動学的に決めるための固有運動も判明していない.
最近確認されたケプラー510 系 (Morton et al. 2016) は金属量が [Fe/H] = -0.35 と低く.また星震学的な年齢は 11.8 Gyr (Silva Aguirre et al. 2015) と推定されている.一方でこの惑星は軌道周期が 19.6 日,半径が ~ 2.2 地球半径だが,質量は測定されていない.
その他にはカプタイン星 (Kapteyn’s star) がある,カプタイン星は別名 GJ 191, LHS 29, HD 33793 を持つ M1 準矮星 (Gizis 1997) であり,[Fe/H] = -0.86 の低い金属量を持つ.この恒星は運動学的に銀河ハローの星に分類され,3.91 pc の距離にある最も近い部類の恒星である.これまでに 2 つの惑星が視線速度で発見されていて,周期はそれぞれ 48.6 日と 121.5 日である (Anglada-Escude et al. 2014),最小質量はそれぞれ 4.8 と 7.0 地球質量と推定されている.
カプタイン星の低い金属量と運動学的な考察から,この系の年齢は 10 Gyr より古いと思われる.しかし正確にどの程度古い星なのかは明らかになっていない.
なお Robertson et al. (2015) では,いくらか異なるデータセットを用いて,カプタインb のシグナルは恒星の活動シグナルに起因するものだと指摘している.Angrada-Escude et al. (2016) ではこのデータセットを再解析し,恒星の活動のシグナルは無く,カプタインb はやはり惑星であるという結論を主張している.これは機器の感度の限界における惑星検出の困難さを示すものである.
惑星が検出されていて,比較的年齢が保証されている中で最も年老いた系は,ケプラー444,ケプラー510,および今回の EPIC 210894022 系である.
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。
arXiv:1704.07917
Ardaseva et al. (2017)
Lightning Chemistry on Earth-like Exoplanets
(地球型系外惑星での雷の化学)
このモデルを現在の地球に類似した系外惑星に適用し,NO と NO2 で観測と一致するのを予言した.
またこのモデルでは,雷撃の直後の嵐の最中における高度依存性のある混合比を予測する.それによると,高度 40 km で NO は 10-3,40 km 未満で NO2 は 10<sup-4,オゾンは痕跡程度の量で << 10-10 となった.
二酸化炭素と窒素で占められた大気を持つ地球的な系外惑星で,全休を覆う強い雷を伴う嵐が発生した場合,NO, NO2, O3, H2O, H2 の量は大きく変化する事が予測される.また,有意な量の C2N の存在も予想される.
また初期の地球においては,O2 は雷によって多くの量が生成されるが,これは光化学反応によって処理される.この事は過去の研究と整合的である.
継続的な全休的な雷を伴う嵐の効果は大きいと予想され,特に NO2 の場合,~ 3.4 µm と ~ 6.2 µm に最も大きなスペクトルの特徴を持つ.透過光スペクトルの中の特徴は 1 ppm のオーダーなので,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測では検出は難しいと考えられる.
C2N は,そのスペクトルの特徴に依存するが,未知の化学反応によって破壊されない限りは.窒素・二酸化炭素主体の大気を持つ地球型系外惑星での雷の重要なトレーサーになり得る.
arXiv:1704.07917
Ardaseva et al. (2017)
Lightning Chemistry on Earth-like Exoplanets
(地球型系外惑星での雷の化学)
概要
ここでは,任意の H/C/N/O 化学の大気に適用できる,雷のショックに誘起される化学反応のモデルを提案する.これは主に系外惑星や褐色矮星大気に適用するものである.このモデルは,流体力学と,運動学的ガス相の化学モデル STAND2015 を組み合わせたものである.このモデルを現在の地球に類似した系外惑星に適用し,NO と NO2 で観測と一致するのを予言した.
またこのモデルでは,雷撃の直後の嵐の最中における高度依存性のある混合比を予測する.それによると,高度 40 km で NO は 10-3,40 km 未満で NO2 は 10<sup-4,オゾンは痕跡程度の量で << 10-10 となった.
二酸化炭素と窒素で占められた大気を持つ地球的な系外惑星で,全休を覆う強い雷を伴う嵐が発生した場合,NO, NO2, O3, H2O, H2 の量は大きく変化する事が予測される.また,有意な量の C2N の存在も予想される.
また初期の地球においては,O2 は雷によって多くの量が生成されるが,これは光化学反応によって処理される.この事は過去の研究と整合的である.
継続的な全休的な雷を伴う嵐の効果は大きいと予想され,特に NO2 の場合,~ 3.4 µm と ~ 6.2 µm に最も大きなスペクトルの特徴を持つ.透過光スペクトルの中の特徴は 1 ppm のオーダーなので,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測では検出は難しいと考えられる.
C2N は,そのスペクトルの特徴に依存するが,未知の化学反応によって破壊されない限りは.窒素・二酸化炭素主体の大気を持つ地球型系外惑星での雷の重要なトレーサーになり得る.