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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1811.09276
McCann et al. (2018)
Morphology of Hydrodynamic Winds: A Study of Planetary Winds in Stellar Environments
(流体力学的風の形態学:恒星環境における惑星風の研究)

概要

強力な電離放射にさらされた近接ガス惑星は,大気の流体力学的散逸を起こす.これは,大気の上層部分を惑星間空間に放出して失う現象である.トランジットする惑星から散逸するガスは紫外線で検出されており,この枠組みを裏付ける証拠である.

惑星からの流出大気は,恒星風との相互作用と惑星の軌道運動によって形作られる.これらの影響を Athena を用いて三次元輻射流体力学シミュレーションを行い,潮汐固定された惑星の水素大気が大量の電離極端紫外線フラックスを受けた場合の変化を調べた.

異なる恒星環境のもとで,低磁場の状態.惑星のアウトフローへの軌道と恒星風の影響を段階的に探ることにより,構造的に異なる 3 つの恒星風のレジームを発見した.それぞれ,弱い場合,中間的な場合,強い場合である.
さらにライマン α 線の模擬観測を行い,それぞれのレジームの独特の観測的特徴を発見した.

弱い恒星風の場合は,惑星からのアウトフローを恒星風によって形作ることができず,流出した大気は恒星の周りにトーラス状の構造を形成する.この場合の観測的特徴として,惑星がトランジットを起こす前の赤方偏移した昼側のアームと,トランジット最中のやや赤い側に傾いたスペクトルが見られることが予想される

中間的な恒星風レジームでは,惑星昼側からのアウトフローは惑星から離れたところで切り取られ,断続的なアウトフローの断絶が発生する.これは二重トランジットを模したような観測的特徴を生成する.これらの減光のうち最初に発生するものはスペクトルが青方偏移しており,可視光のトランジットに先立って発生することが予想される.

最後に,強い恒星風の場合は,アウトフローが完全に彗星の尾のような形状に変形され,アウトフローは恒星から遠ざかる向きに加速される.これは惑星トランジット後の大きく青方偏移した特徴を生成する

これらの 3 つのレジームでは,惑星のトランジットから遠く離れたところで大きなシグナルが発生することが予想され,惑星本体のトランジットの外側における紫外線観測を継続する動機付けとなる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1811.07919
Swain et al. (2018)
Two Terrestrial Planet Families With Different Origins
(異なる起源を持つ 2 つの地球型惑星族)

概要

直径が 2 地球半径以下の,惑星のエンベロープの除去における恒星放射の影響は重要である.このことは理論的にも示唆されており,さらに観測では小さい惑星の存在頻度を惑星半径の関数としてみた場合に二峰性の分布を示すことが分かっている.

ここでは,小さい惑星の三次元パラメータ空間における分布を調査した.ここで用いるパラメータは,惑星半径,日射量,惑星の密度の 3 つである.その結果,地球型の系外惑星を 2 つの異なる族に分類した.

一つのグループは地球型惑星や太陽系内での小さい惑星と類似しており,したがって地球型類似の惑星である.もう片方はサブネプチューン的なバルク密度で形成されている地球型惑星で,光蒸発によって形成された残余コアから成っていると思われるものである.

惑星密度と半径の関係に基づくと,双方の地球型惑星の族は,衝突合体を介して密度を増加させた徴候を示している.今回の結果は,惑星からの大気の光蒸発と衝突が,小型惑星の密度を決定するのに重要な役割を果たしているということを示唆するものである.

データ解析の手法

解析に用いる系外惑星は,NASA Exoplanet Archive からサンプルを抽出した.

登録されている系外惑星の中から,3.5 地球半径未満のものを選択した.そのうち,推定密度が異常に大きなもの (20 g/cm3 より大きいもの) は除去した.
また,軌道傾斜角に大きな異常が見られる惑星のペアも除去した.これは,このような特徴を示す惑星系では一般的ではない力学的な過程を経験した可能性があるためである (Rodriguez et al. 2018).

その結果,87 個の系外惑星系をサンプルとして抽出した.

解析では,サプネプチューン惑星と地球型惑星の境界は 1.75 地球半径とした (Lopez & Fortney 2014).これは存在頻度の欠乏している半径の中心とも近い (Fulton et al. 2017).

結果

解析の結果,サンプルを複数のグループに分割した.

Type 1 Terrestrials

Type 1 Terrestrials は,比較的低いレベルの日射量を受け,惑星の密度の惑星半径への依存性は中間的で,依存性の平均のスロープは 4.58 であった.これは太陽系の地球型惑星の惑星半径-密度平面でのプロット結果と近く,共通の形成機構を持っていることを示唆している.太陽系の地球型惑星は衝突を介して形成されたと考えられており,Type 1 に分類された系外惑星も同様だろう.

惑星半径が大きくなるにつれ密度が増加する正のスロープを持つということは,惑星の密度は天体が成長するに連れて重力で圧縮される過程と,衝突を介して揮発性物質が失われることの組み合わせで上昇した可能性がある.

サブネプチューン

サブネプチューンに分類される惑星は,半径が減少するに伴って密度が上昇するという特徴を示す.これは,2.0 - 3.5 地球半径で中間的な水準の光蒸発を受けたものと整合的である.

統計的には,中間的な光蒸発によってサブネプチューンのエンベロープの半分程度 (惑星総質量の 1.5 - 3% 程度) が失われたと考えられる.

Type 2 Terrestrials

Type 2 Terrestrials は強い日射を受けている惑星で,惑星の密度の惑星半径に対する依存性は強い負のスロープで -14.69 である.

最も小さい半径を持つものでは,密度は高く 10 g/cm3 程度になる.これは地球型惑星の密度としては非常に大きな値であり,この高い値を実現する何らかの説明が必要である.

高密度惑星の形成機構

高密度の惑星を形成するための一つの可能性は,大気の蒸発によって引き起こされる減圧が一瞬ではなかったというものである.しかし密度-半径関数の負の傾きは,重力的圧縮単独では高い密度の値を再現できない.

理論的な研究では,これらの惑星はエンベロープを完全に剥ぎ取られた「裸のコア」である可能性がある (Owen & Wu 2017).ただしこのシナリオの場合はスロープが急になりすぎるという問題点がある.

ここでは,エンベロープが剥ぎ取られた裸のコアが,その後一定量の微惑星爆撃を惑星形成初期段階に経験し,それによって揮発性物質が放出され,さらにそれが高い日射量によって効率的に剥ぎ取られたことによって高密度の惑星が形成されたというシナリオを提案する.

なお分布の遷移領域は 1.5 - 2.0 地球半径程度にある.これはサブネプチューンからスーパーアースへの遷移領域と思われ,双方のグループが重なって存在していることが示唆される.

結論

以上の結果から,地球型系外惑星は地球類似か,金星類似か,あるいは巨大ガス惑星・巨大氷惑星の残骸なのか?という問いに関して答えることができる.

地球類似惑星と金星類似惑星に関しては本質的に同じであるという単純化をすると,この問いに対しての今回の研究での結論は「両方」である.
地球型惑星は 2 つのメカニズムで形成されたと思われる.一つは地球型であり,太陽系内での地球型惑星形成と同様に衝突を介した形成・成長による.もう一つのメカニズムはエンベロープの光蒸発を介したものであり,こちらはエンベロープを失ったガス惑星や氷惑星の残骸である

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1811.08072
Trilling et al. (2018)
Spitzer Observations of Interstellar Object 1I/`Oumuamua
(恒星間天体オウムアムアのスピッツァー観測)

概要

オウムアムア (1I/`Oumuamua) は,太陽系内で初めて確認された恒星間天体である.ここでは2017 年 11 月 21 日 - 22 日にスピッツァー宇宙望遠鏡を用いて行われたオウムアムアの観測結果について報告する.

この観測では,4.5 µm の波長で 30.2 時間積分観測を行った.
その結果天体は検出されず,フラックスの 3 σ の上限値として 0.3 µJy を与えた.

この結果は,天体の熱的ビーミングパラメータが低い・中間的・高い,それぞれの場合を考慮すると,有効球直径が 98, 140, 440 メートル未満,アルベドは 0.2, 0.1, 0.01 以上であると推定される.これは,オウムアムアの形状の長軸と短軸の比率を 6:1 とすると,サイズは 240:40,341:57,1080:180 メートルであることに対応する.

また,オウムアムアが放出するダストの量にも上限を与えた.さらに一酸化炭素と二酸化炭素放出率への上限値を与え,これは過去の結果よりも低い値であった.その他のガス種の生成率への制約は与えられなかった.

オウムアムアの軌跡は非重力的な加速を見せており,この加速の度合いは天体のサイズと質量,および存在が想定されるガス放出に敏感であるため,天体のサイズと脱ガスへの制約を与えることは重要である.

オウムアムアは,新鮮で明るい氷のマントルを生成する,低水準の近日点通過時の揮発性物質放出を経験したかも知れないという説を提案する.このモデルは,期待される熱的ビーミングパラメータと整合的であり,この解に対しては高いアルベドが示唆される.しかし一酸化炭素と二酸化炭素の生成率への厳しい制約からは,他のガス種,おそらくは水が,観測された非重力的加速を説明するのに必要である.

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arXiv:1811.07135
Spalding et al. (2018)
An orbital window into the ancient Sun's mass
(太古の太陽の質量のための軌道の窓)

概要

太陽の長期進化のモデルは,20-40 億年前の太陽の光度は低かったことを示唆している.しかしこれは古代の地球と火星の地質記録では,両惑星は温暖で湿潤な環境であったという証拠とは整合しない.これは faint young Sun paradox (暗い太陽のパラドックス) と呼ばれているものである.パラドックスの典型的な解決策は地球と火星の大気組成の変化を考慮することであり,これは興味深い仮説であるものの,特に火星に関してはこの仮説の地質学的な検証が欠けている.

暗い太陽のパラドックスの解決に関する一つの可能性は,単に太陽は数%の質量をその寿命の間に失ったというものである.この仮説が正しければ,太陽は一定の質量であったとするモデルから期待される光度の増加を遅くするか,あるいはそれを相殺する可能性もある.しかしこの仮説は検証することが難しい.

ここでは,過去の太陽質量を観測的に推定する代替策を提案する.これは,地球と火星における堆積岩の堆積パターンから容易に測定することができるものである.

太陽系の惑星の軌道要素は準周期的振動をしており,この振動の周波数は永年モード \(g_{2}-g_{5}\) で与えられ,近似的には太陽質量と線形でスケールする.そのため,過去の堆積物の蓄積を調べることで,太陽質量がこれまで一定であったか,あるいは過去の太陽は現在より重かったかを 1% 程度の精度で区別することができる.このアプローチは,初期太陽が重かった仮説の検証,もしくは否定を行うことができる.

暗い太陽のパラドックス

地球はその一生のうちの大部分で生命を宿しており,そのため数十億年に渡って表面に液体の水を保持し続けていたことが示唆されている.さらに地質学的には, Archean era (太古代,38 - 25 億年前) には一定量の海洋が存在した証拠が得られている (Grotzinger & Kasting 1993など).

火星も同様に過去に峡谷のネットワークが形成されており,40 億年ほどまでに表面に水が存在したことが分かっている (Wordsworth 2016).また堆積物の存在からも大量の水が存在したことが示唆されている.

初期地球と火星が温暖な気候であったことは,太陽の長期進化の標準モデルとは相容れない.太陽の光度は一生の間に単調増加すると考えられており,太古代の日射量は現在の 75-85% と推定されている (Gough 1981).大気組成などの要素が現在と同じであるとすると,太陽の光度が現在の値を 10% 下回っただけで地球は凍結する (Yang et al. 2012,Hoffman et al. 2017).
また,火星の現在の気候が寒冷であることを考えると,若い太陽が暗かったにも関わらず古代に火星が温暖だったことは,さらに問題を複雑にする.この問題は The Faint Young Sun Paradox (暗い太陽のパラドックス) と呼ばれている (Sagan & Mullen 1972).

パラドックスの解決策として提案されているのは,過去の地球は高濃度の温室効果ガスを持っていたという仮説である (Feulner 2012など).過去の地球大気には高い水準の温室効果ガスが含まれていたとするモデルは,初期の温暖な地球を再現するという点ではまずまずの成功を収めている.
しかし太古代の大気組成を地質学データを用いて精密に制約するのは依然として困難である.これは火星でも同様の問題である.

太陽質量の変化の可能性

暗い太陽のパラドックスの別の解決策

ここでは,標準太陽モデルから導出された太陽の光度進化が間違っているという仮説を考慮する.

標準太陽モデルでは,太陽質量は常に一定であることを前提としている.しかし,もし若い太陽が現在よりも数%重かった場合,太古代の太陽光度は現在と同程度の水準に保たれる (Bowen and Willson 1986,Feulner 2012).

ここでは,太陽が長期間に渡って質量を失った場合,地球と火星の軌道タイムスケールに違いが生じるという仮説を提案する.地球と火星の軌道離心率の振動の周期で,\(g_{2}-g_{5}\) のミランコビッチモードから,過去の太陽質量を 1% 以下の精度で制約できる可能性がある.このようなサイクルの記録は,地球や火星の堆積物中に残されている可能性がある.

気候サイクルから探る過去の太陽質量

ミランコビッチサイクルは,天文学的な理由により生じる日射量の強制的な準周期的変動であり,地球の過去の気候変動を駆動する機構として最初に提案された (Milankovich 1941).

太陽系の 8 惑星は一般に軌道傾斜角と軌道離心率が小さく,またそれぞれの軌道周期は整数比からは遠い.このような場合,惑星間の相互重力作用は “永年的” なアプローチで近似することが可能である.すなわち,各惑星はその軌道上に分布する質量の環として表現され,太陽系内の他の惑星の環へのトルクが与えられると近似することができる.

この場合,軌道離心率と軌道傾斜角の時間進化は,擾乱を与える天体と太陽質量の質量比を用いて表すことができる.従って太陽質量が異なる場合はこの周期変動にも変化を与える.

以上の理由により,地球や火星における堆積物に記録されているであろうサイクルのタイムスケールを測定することで,過去の太陽質量を直接測定することが可能となる.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1811.07776
Barbato et al. (2018)
The GAPS Programme with HARPS-N at TNG XVIII. Two new giant planets around the metal-poor stars HD 220197 and HD 233832
(The GAPS Programme with HARPS-N at TNG XVIII:金属欠乏星 HD 220197 と HD 233832 まわりの 2 つの新しい巨大惑星)

概要

金属量が多い恒星の周りには巨大惑星は普遍的に存在するが,金属量が低い場合は比較的少ないことが統計的に分かっている.しかしこの相関は,より低質量の惑星では見られていない.金属欠乏星周りでの巨大惑星の探査と存在頻度の調査は,惑星形成モデルを構築する上で重要な要素である.

ここでは HARPS-N を用いた金属欠乏星周りでの巨大惑星の探査結果について報告する.

北半球から観測できる恒星で,金属量 [Fe/H] が -1.0 〜 -0.5 dex のものを選び,42 個の金属欠乏星まわりの系外惑星を視線速度法で探査した,惑星のシグナルを MCMC 法で単一ケプラー回転モデルでフィットした.
その結果,HD 220197 と HD 233832 の周りに新しい巨大惑星を発見した.

HD 220197b は,最小質量が 0.20 木星質量,軌道周期は 1728 日であった.HD 233832b は統計的に 2 つの解が縮退しており,軌道周期は 2058 日もしくは 4047 日,最小質量は 1.78 木星質量 もしくは 2.72 木星質量である.

今回発見された惑星とこれまでの結果を合わせると,金属欠乏星周りでの巨大惑星の存在頻度の推定値は 3.84% となる.

HARPS-N による,金属欠乏星の中では比較的金属量が多い側での今回の巨大惑星の発見と,これまでの結果を合わせて考えると,巨大惑星の存在頻度は依然として中心星の金属量の上昇関数であることが示唆される.
また特筆すべき点として,全体のサンプル中で検出された惑星は,全て長周期の巨大惑星であるということが挙げられる.

パラメータ

HD 220197 系

HD 220197
質量:0.91 太陽質量
半径:0.98 太陽半径
年齢:101.65 億歳
有効温度:5683 K
自転周期:~19 日
金属量:[Fe/H] = -0.55
HD 220197b
最小質量:0.20 木星質量
軌道周期:1728 日
軌道長半径:2.729 AU
軌道離心率:0.187

HD 233832 系

HD 233832
質量:0.71 太陽質量
半径:0.68 太陽半径
年齢:54.17 億歳
有効温度:4981 K
自転周期:~41 日
金属量:[Fe/H] = -0.66
HD 233832b
質量:1.78/2.72 木星質量
軌道周期:2058/4047 日
軌道長半径:2.827/4.438 AU
軌道離心率:0.359/0.381
(2 つの解が縮退)

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