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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1808.05887
Lines et al. (2018)
Exonephology: Transmission spectra from a 3D simulated cloudy atmosphere of HD209458b
(系外雲学:HD 209458b の雲の多い大気の 3D シミュレーションからの透過スペクトル)

概要

ホットジュピター HD 209458b の,運動学的雲形成を含んだ三次元輻射流体力学シミュレーション結果から,高分散透過スペクトルを直接計算した.

高い数密度を持つサブマイクロメートルサイズの粒子からなる,鉛直方向に広がった雲層の高い不透明度によって,大気の透過スペクトルは平坦化される.その結果として,観測データ中に同定されるスペクトルの特徴が覆い隠されることが分かる.

PandExo シミュレーターを用いて,ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡で検出可能と思われるスペクトルの特徴を調査した.特に,8 - 12 µm の波長における吸収について調査を行った.

また,さらなる計算で,透過スペクトルにおける雲の不透明度,組成の異質性および人工的にスケールされた重力沈降の変化を調査し,その傾向を同定した.その結果,雲物質の rainout はホットジュピターの力学的な大気における重要な過程であることがわかり,結果として得られるスペクトルを大きく変えることが示された.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1808.03645
Hawker et al. (2018)
Evidence for multiple molecular species in the hot Jupiter HD 209458b
(ホットジュピター HD 209458b の複数の分子種の証拠)

概要

近年の近赤外線での高分散ドップラー分光観測により,いくつかのホットジュピターの大気中からの水蒸気や一酸化炭素の検出が可能になった.この手法は,軌道上の惑星の視線速度によってドップラーシフトした,惑星の熱放射のスペクトル線をモニターすることも含んでいる.

しかし水素分子主体の高温の大気中において,酸素と炭素を含む主要な化学種である一酸化炭素と水以外については,ホットジュピター大気中の分子組成についてはあまり分かっていない.いくつかの最近の研究では,このような大気中での窒素を含む化学種の重要性とその検出可能性が示唆されている.

ここでは,高分散分光観測を使用して HD 209458b の大気中からの一酸化炭素と水の検出の可能性を確認した.また大気中の HCN の探査から,シグナルノイズ比が 4.7 の相互相関ピークの検出についても報告する.

今回の結果は,Very Large telescope CRyogenichigh-resolution InfraRed Echelle Spectrograph (VLT CRIRES) を用いて,高分散位相分解分光観測によって得られたものである.地球大気によるスペクトルへの混入とその他の残差のより強固な取扱により,データの信頼性を改善し,大気中の分子の明白な検出を可能にする.

ホットジュピター大気中における HCN の存在は,このホットジュピターの C/O 比に対する制約を与え,またこの惑星の起源についても制約を与える可能性がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1808.02485
Kao et al. (2018)
The Strongest Magnetic Fields on the Coolest Brown Dwarfs
(最も低温な褐色矮星の最も強い磁場)

概要

Karl G. Jansky Very Large Array (VLA) を用いて,電波を放射していることが知られている 5 個の L, T 型矮星を観測した.これらの天体の年齢は 2 - 34 億歳である.

それぞれの観測対象を 7 時間に渡って観測した.観測は,これまでに行なわれたものよりも高周波数の範囲までをカバーしている.この観測によって,これらの褐色矮星の最大表面磁場強度に比例してより高い上限値を与えた.

今回の観測対象のうち 4 天体で,8 - 12 GHz の円偏光パルスを検出し,局所的な磁場強度が 3.2 - 4.1 kG という測定値を得た.この 4 天体の中には,原型的な大気中の雲による変動を持ち,惑星質量天体である可能性が高い T2.5 型星 SIMP J01365663+0933473 を含んでいる.

また,T6.5 矮星である 2MASS 10475385+2124234 から,15 - 16.5 GHz でのパルスを検出した,この電波放射は,この天体の局所的な磁場強度が 5.6 kG であることにに対応している.また,同じ天体に対して,暫定的に 16.5 - 18 GHz でのパルスを検出し,これは 6.2 kG の磁場強度に相当する

また 2MASS J10430758+2225236,2MASS J12373919+6526148 および SDSS J04234858-0414035 に対して,自転周期を 1.47 - 2.28 時間と測定した.

これらの結果は,
(i) 対流ダイナモで強い双極子磁場を生成するためには,天体の高速な自転が重要であるという新しい合意
(ii) 天体の高速な自転は,現在の系がオーロラ電波放射にエネルギーを供給するための重要な要素である
という主張のどちらか,あるいは両方を支持するものである.

今回の観測では,観測ターゲットの周波数依存した時系列における,自転周期よりも短いタイムスケールでの変動構造が存在する証拠を観測した.これは,褐色矮星の表面付近での大きな変動性の存在を示唆している.

観測対象

2MASS 10475385+2124234

2M1047 はスペクトル型 T6.5 の矮星である.この天体は,電波の周波数領域で検出された初めての T 型矮星である (Route & Wolszczan 2012).

今回の観測でこの天体から検出された電波は,4.75 GHz で大きく円偏光を示している (72% 程度以上).フォローアップ観測で,静穏な放射と電子サイクロトロンメーザー (electron cyclortron maser, ECM) の両方を検出した.

SIMP J01365662+0933473

SIMP0136 はスペクトル型 T2.5 の矮星であり,J, Ks バンドでの測光観測から,変動幅が 5% 以上で 2.3805 日周期の大きな変動を持つことが知られている (Artigau et al. 2009,Croll et al. 2016).

赤外線波長での振幅の大きな変動は,L/T 遷移矮星には高頻度で見られる傾向である.これは,大気中の部分的な雲に原因があると考えられている.

この天体からの Hα 放射は検出されていないが,リチウム由来のシグナルが異常に強いことが分かっている.この天体は,明確なリチウム検出が報告されている中では最も晩期型の天体である.これは,この天体の年齢が若いことを示唆している (Pineda et al. 2016).

Kao et al. (2016) では,有効温度は 1089 K,0.022 太陽質量,年齢は 6 億歳と推定している.
最近,Gagne et al. (2017) によって年齢が 2 億歳程度の Carina-Near 運動集団に属している可能性が報告されている.この天体のボロメトリック光度の経験的な測定と Saumon & Marley (2008) のモデルを用いると,半径は 1.22 木星半径,有効温度は 1098 K,質量は 12.7 木星質量と推測される.

2MASS J10430758+2225236

2M1043 は,異常に赤い L8 型の矮星であり,Hα 線での放射が暫定的に報告されている (Cruz et al. 2007).

Kao et al. (2016) では,有効温度 1390 K,0.011 太陽質量,6 億歳と推定されている.

2MASS J12373919+6526148

2M1237 は T6.5 型の矮星であり,異常に活発な Hα 放射が検出されている.有効温度は 831 K,0.028 太陽質量以上の質量を持ち,推定される年齢は 34 億歳以上である.

SDSS J04234858-0414035

SDSS0423 は L6/T2 の連星である.連星間の間隔は 0”.16 である.

強い Hα の放射と,リチウムの吸収が検出されている.有効温度は 1678 K,0.015 太陽質量,4.9 億歳と推定されている.しかしこれらの推定値は,連星の両方が混合したスペクトルに基づいているため,値は不正確である.

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arXiv:1808.01920
Macias et al. (2018)
Multiple rings in the transitional disk of GM Aurigae revealed by VLA and ALMA
(VLA と ALMA によって明らかにされたぎょしゃ座 GM 星の遷移円盤中の複数のリング)

概要

ソーラーアナログ (solar analog) であるぎょしゃ座 GM 星 (GM Aur) まわりの原始惑星系円盤の,ALMA の 0.9 mm 波長と VLA の 7 mm 波長でのダスト連続波観測を行った.

どちらの波長の画像でも,中心星から ~ 35 au の内側にある円盤の空洞を明確に分解することが出来た.さらに,ALMA による観測では ~ 250 au まで広がる暗い円盤の存在も明らかになった.

この観測結果を 2 つの方法でモデル化した.観投影された visibility への解析的フィットと,VLA,ALMA の観測結果だけではなくスペクトルエネルギー分布もフィットするような,物理的な円盤モデルの 2 つである.

デコンボリューションされた画像中では明白ではないが,VLA と ALMA の visibility は,半径 ~ 40 au と ~ 80 au の位置に存在する 2 つの明るいリング構造でのみフィットできる.物理モデルからは,この構造は大きなダスト粒子の蓄積や捕獲の結果であることが示唆される.おそらくは円盤中に 2 つの圧力極大が存在することによる.

その他のメカニズムによる可能性は否定できないものの,円盤中の複数のリングの存在は,形成中の惑星が円盤中の少なくとも 2 つのギャップを形成した可能性があることを示唆している.

最後に,今回の解析では,0.9 mm と 7 mm 波長での円盤内側の空洞は異なるサイズを示すことが示唆された.この違いは,7 mm では恒星の近傍領域で自由-自由放射が存在するか,あるいは空洞の縁において大きなダスト粒子のよりコンパクトな蓄積が存在することによって引き起こされている可能性がある.

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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1808.02011
Steinrueck et al. (2018)
The Effect of Disequilibrium Carbon Chemistry on the Atmospheric Circulation and Phase Curves of Hot Jupiter HD 189733b
(ホットジュピター HD 189733b の大気循環と位相曲線における非平衡炭素化学の影響)

概要

ホットジュピターでは,メタンと一酸化炭素という大気中の重要な吸収源の存在度は,強い水平方向及び鉛直方向の風によって化学反応が化学平衡を回復するよりも早く均一化されると考えられる.
この効果は一般的には general circulation models (GCMs) の中では無視されているが,これまでに観測されているホットジュピターの赤外線での光度曲線と GCMs の予測の間にある食い違いの原因になる可能性が指摘されている.

いくつかのホットジュピターの夜側半球において,GCMs によって予測される外向きのフラックスは観測より大きすぎることが分かっている.これはスピッツァー宇宙望遠鏡の 4.5 µm のバンドで顕著である.

ここでは SPARC/MITgcm を改良し,メタン,一酸化炭素,水蒸気の非平衡存在度を計算に考慮した.この計算の中では,メタンと一酸化炭素の比率がシミュレーションの中で整合的であることを仮定している.
このモデルを用い,ホットジュピター HD 189733b において,大気中のメタン/一酸化炭素の比率を 8 パターンに分けて計算を行った.

その結果,もっともらしいと思われる一酸化炭素主体のレジームでは,大きなパラメータ領域に渡って,化学平衡のケースと比べて温度は 50 K 程度変化した.この変化は,結果として予測される惑星の放射スペクトルに影響を与えるのには十分な大きさである.
従って,1300 K 未満の平衡温度を持つホットジュピターの GCMs 計算では考慮されるべき要素である.

また,スピッツァー宇宙望遠鏡の 3.6, 8 µm の観測バンドを含む,強いメタンの吸収がある波長領域でのスペクトルは,炭素を含む分子の非平衡存在度に強く影響を受けることを見出した.

化学クエンチングの結果として,観測結果とは全く対照的に,3.6 µm バンドでの夜側のフラックスはより大きくなることが期待される.

一方で,4.5 µm バンドでは一酸化炭素と水による不透明度の変化がお互いに相殺されるため,予測される観測値にはほとんど影響を与えない.従って非平衡炭素化学では,観測されている 4.5 µm バンドでの低い夜側フラックスは説明できないと結論付けた.

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