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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1509.04147
Zhou et al. (2015)
Secondary eclipse observations for seven hot-Jupiters from the Anglo-Australian Telescope
(アングロ・オーストラリア望遠鏡での7つのホットジュピターの二次食観測)

概要

アングロ・オーストラリア望遠鏡のIRIS2赤外線カメラを用い、近赤外線のKsバンドで7つのホットジュピターの二次食 (secondary eclipse)を観測した。
アングロ・オーストラリア望遠鏡は、オーストラリアのサイディング・スプリング天文台 (Siding-Spring Observatoryにある望遠鏡である。)

今回観測したのは、WASP-2b, WASP-4b, WASP-5b, WASP-18b, WASP-36b, WASP-46b, WASP-76bである。
このうち、WASP-18bとWASP-36bのKsバンドでの二次食の観測は初めてである。
また、WASP-4b, WASP-5b, WASP-46bの二次食の観測をし、WASP-2b, WASP-76bに対しては二次食の深さの上限を与えた。
特にWASP-46bは2回の完全な二次食の観測に成功した。

これまでに多くの二次食が、Ksバンドとスピッツァー宇宙望遠鏡のIRACの4バンドで観測されている。
これらの結果について、広帯域での色や惑星の輝度温度という観点からの議論も行った。

特に、最も強く日射を受けている惑星と穏やかな日射を受けている惑星の間の温度の二分性について再検討を行った。
その結果これまで指摘されていた、惑星の輝度温度と平衡温度の分布において2つのグループが存在するという証拠は、どの波長帯においても得られなかった。
従ってこれらの惑星では、熱の再放射と循環の特性は連続的に分布していることが示唆される。

研究の背景

惑星が恒星の背後にまわり、惑星からの光(反射光+惑星からの熱放射)が隠される現象を、二次食 (secondary eclipse)と呼ぶ。
二次食の観測は、特にホットジュピターのアルベドや熱の再分配の効率を制限することに関して重要である。

二次食の観測は、スピッツァー宇宙望遠鏡のIRACバンドで多く行われている。
これまでに48の惑星の二次食が、IRACの 4.5 μmで観測されている。
しかし地上からのKsバンドでの観測は 26個に留まる。
地上からの赤外線観測では、スピッツァー宇宙望遠鏡では得られない短い波長での観測が可能である。
これにより、惑星大気のより深い領域を探ることができ、また大気循環の異なるレジームを探ることも可能となる。

観測結果

WASP-4b, WASP-5b, WASP-18b, WASP-36b, WASP-46bでは、> 3σで二次食を検出した。
またWASP-2b, WASP-76bでは、3σの制限を与えた。

WASP-2b

1回の二次食観測から、3σで二次食の深さに対して < 0.07%という上限値を与えた

スピッツァー宇宙望遠鏡では、3.6, 4.5, 5.9, 8.0 μmで二次食が検出されている(Wheatley et al. 2010)。
スピッツァー宇宙望遠鏡に比べると低いフラックス比と、3.6 μmでの 0.083%という浅い二次食深さを考えると、今回得られた二次食の深さの上限値は過去の観測と整合的である。

WASP-4b

2回の部分的な二次食観測より、二次食深さは 0.16 ± 0.04%という値が得られた。

この惑星のKsバンドでの二次食観測は過去に例がある(Caceres et al. 2011)。
これはVLTのISAACによる観測であり、この時の二次食深さは 0.185% (+0.014, -0.013)であり、1σで整合的である。

スピッツァー宇宙望遠鏡での 3.6, 4.5 μmでの観測例もある(Beerer et al. 2011)。
二次食の位相も過去の観測と整合的である。

WASP-5b

この惑星の二次食深さは 0.20 ± 0.02%であった

過去のKsバンドでの観測では 0.269 ± 0.062%という値が得られている(Chen et al. 2014)。これはMPGのGROND (2.2 m望遠鏡使用)で行われた観測である。
Chen et al. (2014)ではJバンドでの二次食観測も行っている。
さらに、スピッツァー宇宙望遠鏡での 3.6, 4.5 μmでの観測も行われている(Baskin et al. 2013)。

WASP-5bは短周期の惑星であるため、軌道が円軌道化されるまでのタイムスケールも短い。
Dobbs-Dixon et al. (2004)での表式に従えば、潮汐のQ値が Q = 105の場合、円軌道化のタイムスケールは ~ 1 Myrである。
しかしこの惑星の軌道離心率はノンゼロであるため、系の説明のためには例えばより大きなQ値が必要であるかもしれない。

WASP-18b

この惑星の二次食深さは 0.14 ± 0.03%であった

スピッツァー宇宙望遠鏡での先行観測があり、 3.6, 4.5 μm (Nymeyer et al. 2011, Maxted et al. 2013)、5.9, 8.0 μm (Nymeyer et al. 2011)がある。

WASP-36b

この惑星の二次食の検出は初めてである。
二次食深さは 0.13 ± 0.04%であった

また軌道離心率は e = 0.004 (+0.006, -0.005)であり、円軌道という結果と整合的である。

この惑星は、どの波長帯においても二次食観測の先行例は存在しない。

WASP-46b

この惑星に関しては2回の完全な二次食の光度曲線を観測し、二次食深さは 0.26% (+0.05, -0.03)であった

Ksバンドでは過去にChen et al. (2014)での観測例があり、0.253% (+0.063, 0.060)である。
1σより良い範囲で整合的な結果である。

Chen et al. (2014)ではJ, Hバンドでの検出も行われている。
二次食の位相も、過去の円軌道を仮定した場合のものと整合的である。

WASP-76b

この惑星では、二次食深さに対して 3σで 0.3%の上限値を与えた

Marginal detection (2.3σ)としては、0.13 ± 0.06%という値を与えた。
この惑星については、過去の二次食の観測は行われていない。

議論

ホットジュピターの大気循環モデル

ホットジュピター大気の3Dモデルによると、強い日射を受けているホットジュピターは大きな昼夜間の温度差があると予測されている。
そのうち、最も強く日射を受けている惑星は、強力で、自転周期よりも速い赤道ジェット (equatrial jets)と、大きな経度方向の温度勾配を持つ(Showman & Guillot 2002, Dobbs-Dixon & Lin 2008など)。
これらの特徴は、恒星直下点 (sub-stellar point)からズレた場所にピークを持つ、赤外線での位相曲線の観測からも明らかにされつつある(Knutson et al. 2007)。
(※恒星直下点よりもずれた位置に最も強い赤外線の放射があり、その部分が最も高温であることを示唆している)

Showman et al. (2015)によると、この昼夜間の温度差の度合いは、惑星が受けている日射のレベルと、惑星の自転周期に依存する。
比較的穏やかな日射を受けている場合か、自転が速い場合 (あるいはその両方)、ホットジュピターの大気は緯度方向の変化が大きく、経度方向の変化は小さいと予想される。

輝度温度と平衡温度

比較的穏やかな輻射を受け、熱的によく混合されている惑星と、強い日射を受けている惑星の境目は存在するのだろうか?

Cowan & Agol (2011)とSchwarz & Cowan (2015)では、多バンドの二次食観測から、惑星の昼側での有効温度を推定し、その惑星に対して期待される平衡温度との比較を行った。
その結果、暫定的にはホットジュピターは2つのグループに別れる事を示した。
最も強い日射を受けている部類の惑星は、比較的穏やかな日射を受けている惑星と比べると、低い熱の再循環効率と高い有効温度を持つ、というものである。

ここでは、観測結果を合わせてその説を再検証する。
惑星の平衡温度を、アルベドをゼロ、熱の再分配が行われないと仮定して計算した。
また、Ksバンドとスピッツァー宇宙望遠鏡での4バンドのデータから、惑星の輝度温度と平衡温度の関係を分析した。

輝度温度と平衡温度をプロットして解析した結果、プロットは単一成分 (single component)とするモデルが、全てのバンドにおいて最もよく合うという結果が得られた。
先行研究で示されていたような、2成分に分けられるという可能性は、Ksバンド, 4.5, 5.8, 8.0 μmにおいては > 90%で排除できる
また 3.6 μmでは > 60%で排除できる。

そのため、2つのグループに明確には分かれていないと結論付けることが出来る。
ホットジュピター大気の循環の特徴は連続的に変化しており、「緯度方向の循環が支配的な比較的温かいジュピター」と、「経度方向の循環が支配的なホットジュピター」の間には明確な差は存在しないという事を示唆した。

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