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日々の感想などどうでもよいことを書き連ねるためだけのブログ。
論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1809.00700
Sheppard et al. (2018)
New Jupiter Satellites and Moon-Moon Collisions
(新しい木星の衛星と月-月衝突)

概要

木星の新しい 12 個の衛星の発見について報告する.今回の発見で,木星の既知の衛星数は 79 個となった

今回発見された衛星は,r バンドでの等級は 23 - 24 であり,暗いアルベドを仮定した場合,これらのサイズは 1 - 3 km と推定される.

発見された新衛星の大部分は,Blanco 4 m 望遠鏡の DECam を用いて,2017 年 3 月の観測で検出された.この観測は,Sheppard & Trujillo (2016) と Sheppard et al. (2016) に詳細が示されている,外部太陽系天体のサーベイの一環で行われたものである.また,追加観測は Magellan, Discovery Channel, Subaru, Gemini の各望遠鏡を用いて実施された.

新しく発見された衛星の特徴

逆行軌道の衛星群

発見された衛星のうち 9 個は,遠方の逆行軌道のグループに属している.
逆行軌道の衛星は,かつて存在した大きな母天体が,小惑星や彗星・その他の衛星との衝突によって破壊された残骸と思われる軌道グループに集まっている.

このうち S/2017J5S/2017 J8S/2017 J2 の 3 つは,コンパクトな Carme group (カルメ群) に属している.

S/2017 J7S/2016 J1S/2017 J3S/2017 J9 の 4 つは,より拡散した軌道群である Ananke group (アナンケ群) に属しており,これらと Euporie (エウポリエ) の軌道はいくらか離れている.

S/2017 J6S/2017 J1 の 2 つは,Pasiphae group (パシファエ群) に属している,これは最も拡散した群であり,S/2017 J6 は 0.557 と最も大きな軌道離心率を持ち,また遠点は木星のヒル半径の 0.66 倍の距離である.
Jupiter LVIII (S/2003 J15) は傾斜角と軌道長半径が小さく,この群からいくらか離れている.

順行軌道の衛星群

S/2017 J4S/2018 J1 の 2 つは,近接した Himalia prograde group (ヒマリア順行群) に属している.これらは 23 等級程度と今回発見された中では最も明るいものだが,木星の輝きの中にあるため,発見して軌道運動を追うのが難しいものであった.

ヒマリア群の衛星は大きな速度分散を持つ.これは,初期のヒマリアの破壊の後に起きた二回目の破壊イベントによって説明されるという説を提案する.これは,大部分のヒマリア族の衛星はヒマリアの軌道の近くに集まっておらず,しかし遠方の Elara (エララ) と Lysithea (リシテア) の近くに集まっていることに基づいている.

特異な軌道を持つ S/2016 J2

S/2016 J2 (Valetudo とニックネームを与えた) は,他の衛星とは異なる軌道を持つ.また軌道長半径は木星のヒル半径の 0.36 倍の位置にあり,順行軌道にある衛星としてはどの惑星の衛星よりも離れた軌道にある.

数値計算では,この衛星の軌道要素が,軌道傾斜角 34.2°,軌道離心率 0.216,軌道長半径 1.89 × 107 km の場合,108 年にわたって安定である.安定性シミュレーションからは,この衛星のような軌道は,ヒル半径の 0.41 倍 (2.18 × 107 km) の距離まで安定である.しかし,より遠方の離心軌道でも安定に存在できる逆行衛星とは異なり,さらに遠方では軌道が不安定となる.

S/2016 J2 の大きな軌道長半径は,より木星に近い位置を公転する大部分の順行衛星とは異なり,遠方の逆行衛星が存在する範囲と大きく被っている.Carpo (カルポ) の軌道も逆行衛星が存在する範囲と大きく被っているが,こちらは軌道傾斜角が 51.4° と大きな値を持っている.それに対し,S/2016 J2 の軌道傾斜角は 34.0° である.

衛星同士の衝突可能性

逆行衛星は,お互いには衝突を起こす確率は低い.
MERCURY コードと particle in a box 計算を元にすると,S/2016 J2 が大きな逆行衛星 (Pasiphae (パシファエ), Ananke (アナンケ), Carme (カルメ), Sinope (シノーペ)) と 45 億年の間に衝突する可能性は,最大で数 %と推測される.

直径が 1 km 程度と推定される S/2016 J2 は,衝突した場合も大きな逆行衛星を破壊することはない.しかし正面衝突を起こした場合は相対速度が数 km/s となり非常にエネルギーが大きいため,いくつかの大きな破片を生成するだろう.もし S/2016 J2 が過去に数倍大きかった場合は,大きな逆行衛星と衝突して破壊を起こす可能性が高くなる.

可能性が高いわけではないが,S/2016 J2 は衝突を介して逆行衛星の集団を形成する原因となる,かつては大きかった衛星のうちの最も大きい残骸であるかもしれない.

順行軌道にある Carpo (カルポ) の逆行衛星との衝突確率も同程度となる.また,ヒマリア群のメンバーとの逆行衝突を起こす可能性もある.逆行衛星と順行衛星の衝突する可能性は,個々の天体で見ると低いものの,一般的には,逆行衛星と順行衛星の衝突は,木星の遠方にある衛星では発生した可能性がある.

過去に発見された衛星の再確認およびより暗い衛星の検出

新衛星の発見の他に,2017 年と 2018 年に,全てのよく知られている木星の遠方の衛星を観測した.その結果,2003 年と 2011 年の観測で発見されていたが,その軌道がよく決定されていなかったものの多くを再発見した.

さらに,24 等級を超える,軌道を追跡して軌道要素を取得するには暗すぎる,多数の不明な衛星も検出した.これらの失われた衛星のうちの 2 つはヒマリア群に属しているように思われ,また逆行軌道にある.このことは,Sheppard & Jewitt (2003) による,木星は 1 km より大きい衛星を 100 個ほど持つという予測を確認するものである.

軌道群にある最も小さい部類の衛星は依然として個数が多く,木星に向かって分布が拡散していない.このことは,これらの衛星群を形成した衝突は,惑星が形成されていた時期よりも後に発生したことを示唆している.これは,惑星周辺に一定量のガスとダストがあった場合,ガスとダストは小さい衛星を優先的に内側へ移動させ拡散させてしまうためである.

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