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論文関連の(ほぼ)個人用メモ。



arXiv:1809.00572
Fletcher et al. (2018)
A Hexagon in Saturn's Northern Stratosphere Surrounding the Emerging Summertime Polar Vortex
(新たに発生した夏季の極渦に囲まれた土星北半球成層圏の六角形)

概要

土星の極域の成層圏には ~ 75° の緯度から極方向に広がる,幅広く温かい渦が存在する.この渦は,夏季には最も強く,冬季には存在しないという,季節的な成長と散逸を示すことが分かっている.

土星探査機 Cassini (カッシーニ) による土星の長期的な観測から,North Polar Stratospheric Vortex (北極の成層圏中の渦,NPSV) の形成を赤外線分光観測で追うことが可能となった.この領域では,ミリバールの圧力領域で,温度の上昇と炭化水素存在度の上昇が起きていることが観測されている.

ここでは,土星の両半球の成層圏における渦の形成と散逸のタイムスケールに制約を与えた.

NPSV は,カッシーニの観測期間の終わりまで (土星北極の夏至の直後) の間,北半球における春の後期に形成された.しかし,南半球の夏季の間に明らかになった,南極領域での温度と組成のコントラストはまだ検出されなかった.

新しく形成された NPSV は,北緯 78° 付近にある,大きくなった成層圏温度勾配の中に束縛されている.出現した境界は六角形であり,土星の極領域にある長寿命の六角形構造の形成に関与しているロスビー波は,土星の雲の 300 km 上空の成層圏温度に影響を与える可能性が示唆される.
なおこの六角形構造は,かつては対流圏に閉じ込められている存在だと考えられていた.

土星の極渦について

極渦は,地球型惑星やガス惑星における,惑星スケールでの大気循環の重要な特徴である.例えば,木星の乱流的な極域環境,天王星の季節性の極冠,海王星の温暖な南極の渦などがその例である.

土星の自転軸傾斜角は 26.7° であり,季節によって,日光に照らされている側の極は地球から観測可能になる.この期間の観測は,巨大惑星の極域環境を形作る力学,化学,雲形成とオーロラ過程の相互作用の理解の一助となる.

土星の対流圏は雲層の 200 - 300 km ほど上空にあり,幅広く温かい極渦の成長と散逸が季節的に見られる.ここでの季節性とは土星の公転周期によるものであるため,30 年程度のタイムスケールを持つ.

極渦は,夏に強く,冬には弱いという特徴を示す.これらの渦は極から 15° ほど離れた緯度に広がっている.これらは強い緯度方向の温度勾配に束縛されており,対流圏にある季節依存性のないコンパクトな極域のサイクロンとは独立して存在している.

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